妖怪関ヶ原 前 | ナノ


 祖母からお札をもらい二年が経った。その祖母も最期に笑ってぽっくり逝ってしまった。その時、わたしに言い放った一言は「お前は私に似ているから、悔いの無い人生を送りなさい」とのこと。一体わたしはどういうことなのかわからないが、わたしの人生だし、わたしがしたいようにしていく。

 という日記が記されているのは2か月前の5月の事である。それ以降、名前の日記は止まっている。祖母から15歳の誕生日に買ってもらった日記帳は、3年が経ち、止まってしまったのである。大事にしていないのか、と問われれば、それは否、名前はこの日記帳を大事に机の中の引き出しにしまっている。
 18歳になった名前は、志望する大学の面接練習やら、勉強やら、模試やらに追われていた。しかも小テストは毎日のようにあるし、近くなってくる期末のテスト範囲は広く、また難しい。暗記モノは名前が一番苦手としている勉強方法。しかし、歴史を覚えるのには暗記しかないのである。
「あ、名前がまた疲れて帰って来た」小さな一つ目小僧の妖怪や、可愛い狐の姿をした妖怪は、曲がり角から疲れてトボトボと歩く名前の姿を見つけて声を上げ、身を小さく隠しても声は隠れていないというのに隠れた気でいるのだ。

「ああ、またきみ達……」「名前!」「名前!」二匹の妖怪は名前の足元にひっつき、靴下を下ろした。この二匹は靴下を下ろすことが最近のブームになっている。初めのころは止めろだの触るなだのと注意をしたものだが、段々面倒になってきてそれをやめた名前は「ハァ」と溜息を漏らしてその光景を見送った。

「で、また靴下下ろしにきただけ?」
「今日は、まだ来る!」
「まだ?誰か来るの?」
「三成のアニさんだよ!」

 ミツナリ、ミツナリ、「ああ」「あの狐の妖怪の?」元服を済ませ、尾の数が3本になった妖怪の名を、石田三成、という。彼はある妖怪を束ねるかしらであり、妖気の出し引きのコントロールが妖怪一優れている。なので、こうして人間界に現れては妖気を消して、尾も、尖がった耳も歯も人間に近い形にすることができるのだ。そして、姿も現せる。
 本来妖怪は、人間界では、人間に姿を見られることはない。所謂霊感があれば妖怪が見れるのだが、その中でも妖気が優れて高い人間は、こうして妖怪に好かれる。それは、人間でありながらも限りなく妖怪に近いからなのだ。
「姿は見えないけど」「置いて行ったから」おいおい、置いて行くなよ。そう呟きながら靴下を上げた名前は、帰ってから小テストの勉強をしたい欲望を押さえて三成を待った。
「三成のアニさんは、名前のことがお気に入りなんだって。大谷様が言っていたよ」
 大谷、とはまた別の、三成に仕える妖怪のことだ。

「あ」
 ひょこりと曲がり角から顔を出したのは噂をしていた石田三成だった。耳も尾も消えていて、妖気も感じ取れない。この小さな妖怪たちは三成から妖気を感じているのだろうか。
「久しぶりだね、ミツナリ」名前が手を振ると、三成がコクリと頷いた。「ああ」名前と三成、こうして会うのは4度目だ。前回は2ヶ月前に会ったっきり、名前も三成も忙しくてなかなか会えなかったのである。………いや、語弊があった。名前も三成も忙しくて、三成は名前になかなか会えなかったのである。
「……油揚げ食べに来ます?」
 この妖怪、実は名前の祖母の代から世話になっていた。
 三成がまだ尾の数がひとつしかない頃に、三成と名前の祖母は出会った。祖母が狐だからと油揚げがあげたことから、狐の姿をした三成は毎日毎日、油揚げをもらった場所に座っていつまでも祖母の姿を待っている。一日や二日寝ない日もあり、腹を空かしてぐったりとしている所に祖母が油揚げをわんさか持ってきて、眼を輝かせて飛びあがる三成はいつしか祖母に懐くようになった。そして祖母が年を取るにつれ、三成の尾の数も段々と少しずつ増えていった。祖母には感謝ばかりである。まるで親のようだった。
 三成が大人になるにつれ、三成の抱えるものも増えて大きくなり、いつしか人間界に出られる回数も減っていき、祖母が結婚して子どもを産み、その子どもがまた子どもを産み、三成が元服を済ませる頃には祖母は年老いてしまい、二年前にはその祖母は人間界を旅立った。別れる際に、三成は祖母とひとつ約束事をした。
「お前は私に似ているから、悔いの無い人生を送りなさい」と、手と手を握り合った。

 三成23、名前18。三成は10年の間、名前にまとわりつく邪悪な妖怪を祓っている。名前には祖母が大事にしていたお札を持っているが、三成はそれを知りながらも祓い護っている。それは、祖母との約束であり、個人的な問題に過ぎない。
「ああ」頬をほんのりと赤く染めた三成は小さく頷いた。

 祖母と二人暮らしをしていた名前に、この家は少々大きい。両親共に働いていて、母親はバリバリのキャリアウーマンである。父親は旅客機のパイロットをしており、海外へ行ったり日本に帰ってきたりと忙しく、腕も良いのでここ三年間は空港の近くのマンションで生活をしている。母親は日本中あっちへ行ったりこっちへ行ったりして、家には稀にしか帰らない。ただ二人とも名前に対し愛情がないわけではないのだ。名前もそれを知っているが、やはり2年間ひとりで暮らすのは寂しく、人肌が恋しくなって土日には友人を泊めたりしていた。ただここ最近は友人も忙しかったので、お泊り会はしていない。
「じゃ、行こうか。……きみ達は?」
「アニさんの邪魔など考えただけで恐ろしい!」
「なんのこと?」


「じゃあ適当に腰かけていて」と言うと、三成は決まって縁側に座り空を見上げる。茶の用意と油揚げの用意を慣れた手つきでテキパキと済ませて、三成の横に座り、皿と手に持っていたものを差し出した。「アイスはどう?」ついこの間アイスを大量に購入して来た母親が選んだのはすべてソーダ味、これにどう飽きないと嘘を吐くのだろう。「いただこう」茶と油揚げは三成専用である。三成は春夏秋冬年中無休で熱い茶を飲んでいる。茶を飲まないと落ちつかないのだそうだ。
「!」
 冷たさに三成は口に含んだアイスを外に出した。名前はクスクスと笑ってその光景を見ている。三成は恥ずかしくなって、髪で顔を隠す様に俯いた。乱暴に油揚げを掴んで、無造作に口に入れていく。片手にはアイス、片手には油揚げ、もしいきなり誰かがこの家に入ってきたら、この三成の姿に驚くだろう。おかしな組み合わせである。
「ミツナリさんは冷たいのが苦手なんですね。お茶も熱々のが好きだし、少しあたたかい油揚げを食べる時とっても幸せそうな顔しますもん」
 ソーダ味のアイスを口に含んだ名前を見下ろした三成は左手に持っている油揚げを見つめ、「冷たい油揚げは、お前の祖母だけで十分だ」油揚げを待っていた場所とこの家から随分距離がある。
「そうですか?なら、これからあたたかいので用意しますね」
 次もある、という言い方に三成は心躍った。そしてふと、三成は妖気を感じた。これはよく知っていて、また膨大な妖気の量で、三成の敵である。
「………おい」
「はい?」
 三成は名前の腕をとって立たせ、部屋に入り障子を閉めた。それでも三成はどんどん奥の部屋に進んでは襖を閉めて印を結び、また部屋に進み襖を閉め印を結んだ。一種の呪術である。この呪術は対象の妖気や気配を消すことができる。この呪術を解くのは厄介であるし、まず高度な呪術が三成程の力のある妖怪になると、より高度になるのだ。恐らく、外にいる妖怪はこの呪術に気付かぬまま通り過ぎるだろう。
「(狸め……)」
 歯を食いしばった三成は勢い良く名前の方へ振り返る。成すがままになされていた名前は驚きながらも首を傾げた。
「今日は、帰らん」
「…………え?いいですけど、服の用意とかできませんよ」
 自分で発言したというのに、名前の返事に三成は驚いた。一応、三成も男であり、雄である。機能は十分に備わっている。
「(そういえば、古い書に、書いてあった)」
 人と繋がり、子を成した妖怪がいると。


 先程の妖気の正体は化け狸と呼ばれている、惑わす妖怪、徳川家康のものである。なぜ家康がこの辺りをうろついていたのかわからないが、一応警戒するに越したことはない。三成は家康と対立関係にあるから尚のことだ。
「(あの化け狸、何故この辺りをうろついていた)」
「ミツナリさん、お風呂入りますか?妖怪って、お風呂入るんですか?」
「いや、妖気を常に身に纏っている。汚れや埃は払いのけている」
「そうですか、じゃあ、入らないんですよね」
「そう捉えてくれて構わない」
 まだ髪の毛を乾かしていない名前は冷蔵庫からアイスを一本取り出して、机を挟み三成の向かい側に座り、好きにチャンネルを変えて大して面白くもない番組をぼうっと見つめた。
「(気に食わない。人間の女などに、俺は)」
 三成は人間である名前に恋をしていた。

 三成は名前が生まれた頃から知っている。その頃はまだ元服をしたばかりで、そのような感情を抱くなど考えもしなかった。しかし、名前が成長していくにつれ、名前への認識は少しずつ思うようにいかなくなった。その時、友人の大谷吉継に相談したところ「三成、それは恋よ」とヒックヒックと笑われたのである。信頼をしていて、自分よりも自分の事を理解している大谷の言葉を信じて疑わなかった。
 妻や妾と取っていない三成には、人間に恋をするというのは少々まずい。普通ならば、同じ狐の妖怪であるモノを妻や妾にするものである。それに愛人が出来たとしてもそれは妖怪であるべきだ。だが三成はそこを「人間」に移し替えたいのである。
 どうにかならないものか、と三成は考え、三成の友人である大谷もその事で悩んでいた。どうにかして三成の願いは叶えてやりたいが、こればかりは難しい問題である。先程の一つ目の妖怪と小さな狐は三成の世話をする小姓という立場にあった。三成は小姓という存在が嫌いだから、人間界へ脱走癖のある妖怪二匹を選んだのだ。だがこうして、役に立つとは思ってもみなかった。

 三成には、名前を大切にしたいだとか、そういう優しさを持ち合わせていなかった。彼も妖怪で、理性よりも本能が強い。三成は刻む妖怪である。時を刻むのではなく、肉を刻む。気に食わないことがあれば、その場ですぐ。
 「人間を嫁にしたい」ということだけは友人である大谷吉継にしか告げていなかった。妖怪がどれほど人間を嫌うかということを理解しているからである。三成の他にも三成の小姓らのように人間を好く妖怪もいるが、大半は人間を嫌うものが多い。大谷もその一人であるが、一人や二人、この妖怪の住む世界にやってきたとしても何一つ変わることはあまりないだろうし、その人間が害の無いと判断されれば皆の関心は無くなるだろう、と三成に答え、自分に納得させた。そういうものだろうか、と珍しく三成は眉を下げる。
「そういうものよ、三成。ぬし、人間を好いているのであろ。ならば持ってくるがいい」
 人間、名前は人形でも道具でもない、持ってくるなど、言い方が適していない。「それならば、連れてくる」と大谷へ返しても、大谷はそれ以上何も言わなかった。

 三成が名前に恋をしてからは、屋敷にいる女狐を名前に化かせ、情交をしたものだ。今もそれは変わらない。女狐は大して人間の姿に変えられているということに不満を持っていないようであるのは、屋敷の主である三成と一夜だけでなく一週間程情交が出来るので、これとないチャンスであるから、心良く承諾して化けている。三成もそうであろうと思って、名前の姿に化けた女狐の肩に触れている。
「やっぱり、シャワーくらい浴びて来てください。あの、シャワーでも、湯船に浸かるだけでもいいので……気持ち的にもちょっと違いますよ」名前が白いバスタオルを三成に渡した。

 名前に風呂場の使用方法を伝えられ、三成は体と頭を洗い終えて湯船に浸かっている。名前はお風呂の側で、三成が何かあった時のためにいつでも動けるように、スマートフォンを触りながら態勢を整えていた。「湯加減は如何ですか」「悪くない」お風呂に入る習慣はなく、彼らはいつも近くの池や湖で水を浴びているくらいのものだったので、この湯船の気持ちよさに三成はホッと溜息を吐いた。
 妖術で、大谷に名前の家にいること、「泊まる」ことを伝えると、大谷からさも面白そうに「楽しめ」と伝わって来た。三成は気に食わなくて、それに対して返事はしていない。大谷も返事がかえってくるなど思ってもいない。
 妖怪、といっても、狐は妖気が特別に強く、量も多く、質も良いので、他の妖怪と比べると高貴な存在なのだ。人間は昔から狐とは縁が深かった。
名前
「はい」
 スマートフォンの画面から目を逸らした名前は次の瞬間飛び上った。
「ひゃあああっ」
 あまりにもゲームに夢中になりすぎてしまい、三成が扉を開ける音など聞こえなかったのだ。顔を真っ赤にして一目散に脱衣所を出た名前は、そこにタオルと一応父親の服で良いならそれを着てくれと伝えて居間に駆け込んだ。
「(み、みちゃ、)」下から見上げるのだ、視界におかしなものが映り込んでしまっても仕方がない。
「見ちゃった……」思い出すだけで恥ずかしくなってくるので、あまり思い出したくないが、三成は着替えを済ませたらリビングに帰ってくるだろう。「(にしてもミツナリさん、褌だったな……)」昔の人はパンツ代わりに褌だったと聞いた事があるが、あまりにも強烈なものが見えてしまったから、名前には褌であろうがパンツではないからどうでもよいのだ。
名前、この着方を教えろ」赤い顔で振り返ると、三成は不思議そうに首を傾げた。
「ミ、ミツナリさん、着替えてくださいよッ!!」
「……だから、これの、」
 これ以上何をいっても無意味であると悟った三成は、Tシャツ広げ、下の裾を上げてその中に体を入れてみた。「こうか?」顔が赤だか青だか、忙しく顔色を変える名前はコクンコクンと頭を上下に振り視線を逸らしている。
「妖怪ってあまり恥ずかしみとかそういうのないんですか?」
「人間相手に恥ずかしみなど覚えた事も感じたこともない」
 それは確かにそうだ、と名前は腑に落ちない様子で、「そうですか」と返した。

 夕食は、名前は紅鮭に漬物にお味噌汁に白米、それとは別に三成は油揚げのみ。三成はすぐに油揚げを名前に押し付けて、文句を垂れた。なんだこれは、なぜ私だけ油揚げなんだ、と。まさか油揚げ以外にも食べれるものがあったなんて知らなかった名前は稲荷でも作ろうかと提案したが、名前の夕食を指差して同じものを作れ、と命令した。
「(図々しい妖怪だなぁ)」渋々名前は立ち上がり、紅鮭を焼き、白米と味噌汁、漬物を皿に放り込み三成へ出した。一族の頭である三成なので、食にも味にも盛りつけにも少々うるさい。人間の料理でなければ、これにも文句を入れている。緑が無い、などとでも言うだろう。しかし人間の料理であるため何も言わない。三成なりの優しさであるが、名前はそれには気付かないだろう。一族の頭であることや食生活でも、普段の生活の事でも三成の事を一切知らないのだから。
 三成の食べ方に名前は違和感を覚えた。箸の使い方慣れているな、から始まり、そこそこ祖母に仕込まれた箸の持ち方から、それこそ食べ方から、女である自分よりも妖怪である三成のほうが、綺麗な形なのだ。妖気の質がいい妖怪は、少し位などが高いのだろうか、と鮭を食べながら、三成の顔を眺めた。



「来い」
「は?」
 布団を敷き、名前が準備を済ませ自分の部屋に戻ろうとした時、客間の襖が開き、三成に腕を引かれ、三成が一人で布団に入り掛け布団を捲り、発言された。名前は目が点になり、もう一度「は?」と今の状況について疑問を抱いて三成を見下ろす。
「何をしている。早急にこちらへ来い。早くしろ」
「……早くしろって、なんで?」
「『なんで?』、何故そのような疑問を抱く?人間は情交をする際に双方の承諾を得てからでないといけないのか?」
「え、ちょ、情交……情交!?」
「性交と言ったほうがわかりやすいか?ならば性交だ」
「何言ってるんですかあなた!!意味がわからん!なんでそんなことしなくちゃいけないんですか!?」
 想い人が目の前にいるし、女狐を名前に化かせて「性交」をしたし、男女が同じ屋根の下にいるのだし、自分は一族の頭であるから、何ら問題もないと思っている三成は名前の発言が信じられなかった。女狐は心良く自ら裸になっていったのだ、それは妖怪でも人間でも同じであると思ったのだろう。しかし名前は首をぶんぶんと振って襖を思い切り閉めた。
「そういうのは、好き合って、恋人同士になってからするものです!」
 その言葉に三成の視界は暗くなった。好き合ってするのは子を成す時だけで、その他はとっかえひっかえ自分の性欲を満たすためである。好き合っていなくては「性交」をしてはいないということに三成は驚いた。そして、好き合っていないのかと残念に思った。
「妖怪って、みんなこうなんですか?」
「………人間は違うのか」三成は少し悩んだ表情をした後、「悪かった」と普段口にしない言葉を不器用に名前に伝えた。
「妖怪の、愛し合った同士がする性交は、子を成す時だけだ」
 名前は顔を濁した後、「わたしは人間なので」と言って襖を閉めた。名前の分のスペースを開けた三成は開けたスペースに体の位置を戻し、耳と尾を出して閉められた襖を見つめた。まだ名前の気配がある。名前の気配が無くなると、三成は体を倒した。

名前の妖気は妖怪を惹きつける香りがする。名前の祖母も母もそうであったが、母の妖気は名前を産んだ時に全て彼女に移っていった。そのために、自分の妖気と母の妖気が混ざり合って、祖母よりも、その体の中に妖気を隠している。ただ、質はあまりいいものではないし、名前自身コントロールがうまくいかないため、妖気が体外へ流れ出しているといっていい。そのために妖怪に狙われる対象なのである。あの人間はうまそうだ、と常に妖怪に狙われている。祖母はそれを恐れ、呪術の一種で名前を護り、三成も彼女を護っている。
 三成は頭を掻いた。どうすればよいのかわからなかったし、まず自分がどうしてこうも落ち込んでいるのかもわからなかった。
「あんたはまた悩んでいるのかい」ふと、どこからか祖母の声が聞こえた。三成は顔を上げ、声の主を探す。しかしいくら妖気を練り込んで眼に集中させてもその姿はない。「そうやって悩むのもいいがね、三成、あんたはいつもそうやって後悔してるんじゃないか」「ああ、別に無理矢理にしろとは言ってないんだよ、いいかい、悔いの無いようにやりなさい」そうして、消えた。
「………知るか 知ったような口を」
 意味がわからん。三成は瞼を閉じた。