最近お菓子作りにハマってるんだーと笑顔で持つその手には部員全員分の小袋に入ったクッキーが握られている。彼氏のオレに配られたそのクッキーは、周りの部員と変わりない味と模様だった。別にこだわっているわけではないが、「いやあ、何度も失敗しちゃって一週間前から練習してたんだ」と眩しい笑顔で言うマネージャーに、失敗作でもいいから食べさせてほしかった、と思い睨みつけると、マネージャーは期待を込めた眼差しで「おいしい?」と訊いてきて、オレは仕方なく素直に「美味しい」と言うしかなかったのだ。 今日オレんち誰もいないんだよなー、夕食どっかで買うかな、と零した伊月くんに言った一言に、彼の細い目はこれでもかと言うほど見開かれ、マジで…?とどこか嬉しそうな声調に胸を張ってわたしは答えた。もちろん!と。 両親、姉と妹はいとこの家に三日間泊まるらしく、部活がある伊月くんはそれを断って家に残っている、ということだった。学校は?と訊くと、伊月くんは動かしていた口を止めて、「部活がさ」と学校のことなど考えてはいないようだった。 途中のスーパーでカレーの材料を買い、昨日習得したバナナケーキを披露しようと半ば強制的に材料を買わせ伊月くんの家に上がり込んだ。なんというか、伊月くんの家と言われても納得のいく、落ち着いた家庭のにおいで、どことなくわたしの家と少し似ているな、と思った。「あー…あー、」と戸惑う伊月くんの腕を引き台所へ案内させ、スーパーの袋を広げる。 「さて、作るぞー!あ、まな板と包丁とフライパンとお鍋用意して!」 「あ…はい」 伊月くんと二人で台所に達、なんか新婚さんみたいだね、と言うと伊月くんは顔を真っ赤にしてわたしの頭を叩き、一言だけバカと言うとたまねぎの皮を剥き始めた。耳まで赤くなった伊月くんの隣にたって、皮がむかれたたまねぎを刻んでいくと、伊月くんは口を尖らせて薄く皮のついた指でわたしの鼻の下を小突く。 「あんまり可愛い事言うと襲われるよ、オレに」 わたしと伊月くんは付き合って半年が過ぎようとしていた。 そりゃあ抱きしめてもらった事もあれば抱きしめたこともある。キスをされることもあればすることだって当然あるし、セックスだってもちろん、だってわたし達は高校生だもの。もうかわいい中学生のようなお付き合いじゃないんだってこと、お互いわかっている。わかっていて、お付き合いをしているし、こうして家に上がり込んでいるのだ。 わたしの家は母子家庭で、お母さんが家にいる事はあまりなく、いつも一人で寂しいからと駄々をこねれば渋々、疲れた体をわたしの家で休めてくれる。だから、わたしが伊月くんの家に来るのは今日が初めてだった。いやらしい事も何も考えずに、ただ単純に伊月くんの家に感動し、伊月くんの部屋には更に感動した。 伊月くんらしい、その部屋にはネタ帳や雑誌が綺麗本棚に並べられていてバスケットボールや中学時代の写真などが飾られている。 「伊月くんらしいね、あ、なんか伊月くんのにおいが…」 「そう?あ、それ中学の時の試合後に撮ったやつだから皆疲れた顔してるだろ?」 「あ、これ伊月くん?かわいー!確かにみんな生気がないね?」 時間がない時はいつもカレーを多めに作っておいて、二日で食べ終えるようにしている。だから伊月くんにも大量に作っておいて、朝夕は文句言わずにカレーにしなさい、と言っておいた。そしてお昼はわたしがお弁当作ってきてあげるね、と約束して、伊月くんはわたしが言った事を復唱するように「本当に新婚さんみたいだね」と嬉しそうに笑っていた。 ベッドの上に、伊月くんの隣に座って「これ日向くん?」と訊き、今とそう変わらないよね、と今の姿、そして入学当初の姿を思い出し少しだけ笑いを零すと、伊月くんはわたしの写真を奪ってそのままキスをした。 舌を強引に入れてくる伊月くんを拒んで唇を離すと不満そうに文句を言う伊月くんが、「ベッドに座る時点でそういうことしようとしてるんだろ」と不満顔のままわたしを押し倒し丁寧にリボンを解いていく。 「うあー、もう伊月くん疲れてるんじゃない?今日すごいハードだったから」 「カントクとマネージャーが練習を少しでも軽くしてくれればね」 「あっ、もうやだぁ…」 伊月くんはわたしの乳首を摘んでこりこりと擦ることが大好きなのだ。漏れる声に伊月くんは被さるキスをして、開いている隙間から息を漏らしながらくぐもった声に伊月くんのは次第に固くなっていき、制服の上からでもわかるほどに大きくなっていった。 「伊月くんのエッチ」制服が捲られて、下着は上に託し上げられ、舌で乳首を丹念に舐められる。初めは乳首なんかで感じることはなかったのに、セックスをするたびに乳首がいじられるものだから気付けばこうして感じる程になってしまった。 「あっんっ…伊月くん、もうっ、そこはいいよぉ」 「…オレがしたいからしてるんだけど…気持ち悪い?」 「ううん、気持ちいいけど…触って、ほしくて」 「……ああ、うん、ごめん」 伊月くんは頬をほんのりと赤く締めて、スカートに手を入れ、股の間に腕を伸ばした。人差し指で秘部の割れ目をなぞられ、喘ぎ声を出すとスカートを捲った伊月くんはパンツを下ろして、股の間に顔を埋める。吃驚して伊月くんの頭を押さえると、伊月くんの舌が割れ目を刺激する。 いつもスカートを外すのに、今日は外していない、ただそれだけなのに、伊月くんの顔が見えないだけで感じ方がこうも違うことに驚いた。 クリトリスが吸われ、声を上げ、更には中に指まで入り、思わず泣き声で伊月くんの名前を呼んだ。彼が音を立てて、いやらしいものを吸っている。それだけで羞恥で頭が一杯だった。これだけは、何度されても慣れるものではないらしい。 「ああっ…!いっ伊月くんいや、だめ、だめだよお!」 「すげ…何かもうすごいエロ…」 「やだ、やだやだ、あっや、もう伊月くんだめったらぁ…!」 「はぁ…ごめん、四つん這いになって」 「う、んんっ…」 「久しぶりだからな、ちょっと頑張っていい?」 「伊月くん、はっあ…、ん、早く」 伊月くんは四つん這いになったわたしの腰を片手で支え、もう片方の手で自身のを持ち、それを中へとゆっくりといれていく。久しぶりにセックスをしたからなのか、とても気持ちが良く、頭が真っ白になりながら声を漏らしながら伊月くんの名前を呼んだ。伊月くんはぎゅっと腰を掴んで、苦しそうに声を漏らし、時折わたしの名前を呼びながら腰を振っていく。 快感に上半身から力がなくなり倒れ込み、腰と下半身だけは伊月くんが支えてくれているので倒さなくて済んだのだが、ここももう力がなくなって倒れそうだ。 「ああっ…伊月くんイっちゃう、いやぁ…!」 「ッ…」 「俊くん、俊くん、うっああっ、ああっ!」 おいしい?そう彼女が身を乗り出し目を子どものように輝かせながら訊くものだから、オレも子どもに戻って、意地悪く「これ、皆にもあげるのか?」と訊いてみた。彼女は表情をきょとん、とさせてどうして?と首をかしげるので、オレは一人で食べたいときっぱり言った。そうすれば彼女は目を細め、歯を出して笑い、 「伊月くんに全部あげる」と言った。当たり前だ、オレのお金と、オレの彼女が作ったものなんだから、他の人にあげてたまるか。 久々に下の名前で呼ばれてしまって自分でも機嫌がいいのがわかる。親がいないことをいい事に、あの後ベッドで一緒に寝てしまい起きた時にはもう午後9時になっていて、お風呂に入らせ自分もお風呂から出ると彼女はいつのまにかどこからか出したかわからない道具を広げてお菓子を作っていた。スーパーで買った材料で、バナナケーキを作る彼女の表情は頼り甲斐のあるマネージャーの表情で、そしてとても可愛かった。 オレは彼女が喜ぶ言葉を知っている。 「…ねえ、おいしい?」 「ああ、美味しいよ」 ----- アレン |