「これと、これ、あとこれも買ってきたから食え。」 「え?あ、あの、うん…こんなにたくさんありがとう土方。一緒に食べる?」 いつも通りの登校時間、わたしより先に来ていた土方は、わたしが席に座ったのを合図に机の脇にぶら下げていた袋から栄養ドリンク、ヨーグルト、おにぎり、パン、お菓子、つまみ類の入ったローソンのコンビニ袋を渡してきた。まさかこんなに貰うとは思わなかったが、迷惑だとは思わなかった。わたしの為を思ってしてくれたことだから逆に嬉しい。 「…い、いや、お前のために買ってきたから、苗字が食えよ」 「え、でもなんかこんなに…」 「いいから食え!それとも食えねーのかよ!」 「そそそそそんなことない!いただきます!いただきます!!」 コンビニ袋を抱いて首を左右にぶんぶん振る。それに笑う声が一つ。神楽でもなく妙でもなく近藤でもなく、栗色の髪を揺らす男子生徒。皆はそれをドS星からきた王子だと言う。 「おやまあ今日も土方さんは必死すぎて見てらんねーや。だから顔にマヨネーズ塗ってやりまさァ」 沖田は土方の鞄の中からマヨネーズを取り出して顔中に塗りたくる。マヨネーズの独特なにおいが漂ってきて思わず鼻を摘んだ。マヨネーズってこんなにくさいっけ? 理不尽な沖田に土方はベチョベチョの顔を揺らして「総悟ォォォォ」と握り拳を作る。「おーっとお!」降りかかってきた拳を避けた沖田は教室中を駆け回る。その時に蓋が開いていたマヨネーズがベチョベチョと机や壁の至る所に付着した。きっとあの掃除は土方がすることになるだろう。ご愁傷様としかいえない。 土方から貰ったポッキーを食べながら、土方の必死な姿をみて思わず吹いた。バカじゃん土方、めちゃくちゃかっこわるいじゃん。かっこいいと評判のいい男はドSによってこんなになってしまうのだ。 「おーい苗字聞いてやってくれよォ土方の奴よォ実は苗字のことがよォ」 「総悟ォォォてめえ黙ってないとマジでぶん殴るぞ!!めっ!めっ!いけません!人の嫌がることをしてはいけません!」 「そう言われるとしたくなるのがドSの性でさァ。んでなァ〜土方ってお前のことがすっ」 「ウワアアアアアアアア」 「きやきが好きだと思ってるらしいですぜェ〜今度奢ってもらえよォ〜」 「ウワアアアアアアアアアアアア総悟てめぇぇぇぇぇ」 「なんでさァ土方さん。俺は恋のキューピットだって前に言ったはずじゃねーですかィ!」 「キューピットじゃねーよお前は堕天使だ!」 前の席のぐるぐる眼鏡の神楽が、ポッキーちょうだいと言って袋から五本ポッキーを取った。今日もあいつら懲りないアルな。としみじみという神楽の言葉に頷き、わたしもポッキーを食べた。今日はいつもの時間に高杉がこないので休みなんだとわたしの中で欠席が確定し、机の中の教科書を机の上に置かせてもらい、携帯を弄り、隠すスペースを十分に取った。 沖田との決闘を終え草臥れた様子で帰ってきた土方は大きく溜め息をつきながら椅子にどかりと座った。そんな土方にコンビニの袋から栄養ドリンクを取り出し、肩を叩く。 「うおっ」 「あはは、そんな驚かないでよ。はい、栄養ドリンクあげる。」 「いやお前それ……、」 耳まで赤くした土方は震える手つきで栄養ドリンクを取って、ありがとよと礼を言ってから一気に飲み干した。 「おーしいい加減HR始めるぞおまえらー」 「土方の野郎、顔真っ赤にして良い気になってんじゃねえよ。それは苗字が優しいからだろ。ふっざけんじゃねーよ。俺だって貰ったことないのにィィィ!!テスト用紙しか貰ったことないのにィィ!栄養ドリンクほしいぃ〜苗字の栄養ドリンクほしいぃ〜苗字から分泌される栄養ドリンクがほしいぃ〜!」 「銀八、てめえ生徒になに手ェ出してやがんだ。今なら許してやる。金を出せ。」 「あ、もしかして高杉くんったら羨ましいと思ってんだ?ププッ、いいだろ〜羨ましいだろ〜。大人のセックステクニックをなめてもらっちゃ困るぜ。チッチ。あ〜あ苗字の喘ぎ声かわいかったな〜どうしようかな〜どうしてやろうかな〜」 「てめっ訴えるぞ」 「動揺してんな高杉よ、先生が様子を事細かく教えてやっからよ。な?」 「『な?』じゃねえよ!引かれてるくせによく言えるな銀八先生よぉ。俺は名前の寝顔写メを持ってるぜ。今なら五千円だ。しかもヨダレを出してるプレミアだ。」 「よだれえええええ買う」 「ハッ、変態教師に好かれる名前が可哀そうでならねえ。ちなみに昼寝をしている名前のおっぱいを揉んだことがある。服の上からじゃねえ地肌だ!わかるか銀八お前にはこの快感が!いつ起きるかもわからない女の服に手を侵入させ胸をいかに激しく揉めるかを!」 「ちいせえ、ちいせえよ高杉。俺は名前にマグナム発射したんだ。キッツキツな締め具合に痛み苦しむ苗字…、あれはもう、言葉には言い表せないものがあった。ちなみに乳首も舐めた。アワビも舐めた。」 「普通にまんこって言えばいいだろうが!なんでアワビって言葉可愛くしてんだてめえ。ノーマルなお前に俺の快感をわかるわけあるめえよ。」 「じゃあ高杉てめーは指テクで顔赤くしながら声を殺す苗字の姿を想像してみろ!それでも興奮せずにいられるのか!」 「バカ言ってんじゃねえ興奮するに決まってるじゃねえか!」 「…それより高杉、お前は授業に出ろな」 「…いいじゃねえか準備室涼しいんだからよ…」 「ちなみに俺が座ってるソファーで、やった」 「ソファー買っていいか。」 「ダメだ!俺は毎日このソファーの匂いを嗅いで授業頑張ってんだ!いや!人生頑張ってんだ!」 「坂田―皆の分のノートもってきっ……ってなに肩組んでんのあんたら」 「「やあ」」 「きめえ」 |