カルピス | ナノ

「人間ってさあ…いや男ってこう、なんでエロの塊なんだと思う?」
「それが人間の本能なんだろ。セックスでしか狩れねーんだよ獲物を」
「高杉もセックスで獲物狩る?」
「んなことしてる暇あったらそろばんしてるっつの」
「嘘つけ」
「…なんで急にそんな質問するんだァ?まさか、お前あの時銀八としてたのかよ。……え、まじで?ファイナルアンサー?ヒント出さないで答えられたのか俺。やばいだろ」
「やばいのはお前の頭だバカ杉…一度精神科と外科と内科いってこい。」
「………否定しねえってことは、そうなのかよ」
「………。してないよ」
「うそつけ、お前嘘吐くと鼻がピクッて動くんぜ」
「まじでか」
「はあ…よりによって銀八かよ。手ェ出せねえじゃねーか、バーカ。どうすんだよ、お前のことだ、処女膜破られたんだろ。狩られちまったわけだ。お前は捕獲レベル2のモンスターだ。グルメモンスターだ。」
「せめて3にしてよ。」
「それじゃあレベル3だ。処女膜破られてない、綺麗な肌でウブな女ってことでレベル3だ。」
「4は?」
「4は可愛い顔して処女膜破られてない綺麗な肌を持ったウブな女指す」
「5は?」
「5はエロい顔してんのに処女膜破られてない綺麗な肌を持ったウブな女を指す」
「6は?」
「6はエロい顔してんのに天然でエロ知識が乏しい処女膜破られてない綺麗な肌を持った女を指す」
「じゃあわたしはレベル4か5だね」
「ふざけんじゃねーギリギリ3だ。」
「高杉はイケメンなのにバカだからレベルマイナス1でどうだ」
「どうもこうもマイナスじゃねーか、せめて1にしろ」
「はーあ…もう、やになっちゃうね。これだから男ってのはきもいんだって。周りに流されるタイプなんだって」
「……もう寝とけ。寝て忘れろ。食って忘れろ。お前がデブになっても俺はお前を受け止める。体重は受け止められないが心は受け止めてやる。」
「遠回しにデブって言うんじゃねーよ。高杉にはわたしの気持ちわからないだろうさ。強姦された女の気持ちなんてわからないでしょ」
「エロ漫画で見るとまじで燃える」
「燃え散れよ。灰と化せ。」
「膝貸してやっから気の済むまで寝とけ。」
「膝痛くなってわたしを投げだすだろうさ。」
「投げ出さねェ。お前を受け止めるって言ったろ」
「じゃあ、お言葉に甘えて…ちょっとだけ貸してね」
「ああ」
 屋上の風はいつものように心地が良かった。風を受け止めようとしたが、今のわたしはそのまま風に乗ってどこかへ飛んでしまうのではないかと思った。
 胡坐をかく高杉の膝にどうやって頭を乗せようと考えていたら、ここだろ、と指差したのは脹脛だった。膝枕って言わないじゃん。文句言うんじゃねェ、俺の脹脛は最高の寝心地だ。高杉に勧められるまま、わたしは高杉の脹脛に頭を乗せる。
「どうだ、いい感じじゃねェか?」
「…ふっつー」
「おい、あんま股間に頭押しつけんなよ」
「つけてねーよ」
「つけてんだよ」
「でもまあ、悪くはないかな。」
「レベル4に昇格だ。早く寝ろ。俺に襲われる前に」
「さいてー」




 高杉の脹脛は良くも悪くもなく、起きたのは一限目から昼休みを挟んで掃除の時間だった。度々起きたけど、高杉はまだ五分しか寝てねーぞといって無理矢理わたしを寝せていた。その間ずっと高杉は胡坐を掻いてわたしの頭を支えていたのだ。
 教室に戻って、「今日は一日サボりコースだったアルな〜」とぐるぐる眼鏡を光らせながら言う。
 帰りの支度をして、そのままバイト先へと行こうと筆箱と電子辞書を鞄の中に入れると、脇からコンビニの袋も鞄に入った。
「この間食ってなかったろ。買った。やる。」
 土方はわたしと目を合わさずに言う。コーヒーゼリーとヨーグルトとたまごのサンドイッチとカルピスが入っていた。こんなに買ってくれたなんて、逆に悪い気がしてならない。
「こんなにいいの?」
「元気もなかったし、食って元気付けろよ」
「でも…なんか…、お礼するよ。マヨネーズ買えばいいかな」
「マヨネーズは間に合ってるからいらねー。元気になってくれりゃ礼はそれでいい。」
「…ありがと、土方。」
「……おう」