神様の決め事 | ナノ



「よーしわたしが鬼するから神楽ちゃん達隠れてよ!いーち、にーい、さーん、」

 暖かい季節も終わり、段々とむし暑い季節へと移り変わる梅雨のことだ。朝昼晩とジョギングを楽しむ近所のおじさん、犬の散歩に来たはずなのに井戸端会議をはじめる主婦の方々、そしてかくれんぼを楽しむ近所の子供達と神楽ちゃんとこのわたし、名字名前。わたしは普段真選組という職業に就いていて、難なく仕事もこなしている女である。母は病気で死に、父は攘夷浪士に殺された。親戚であるとっつぁんに引き取ってもらうも、自分で生活していきたいという願いもあって特別武装警察真選組というチンピラ警察の職に就いた。真選組というところは男だらけの場所であり、とっつぁんもよく女のわたしをここに就かせたな、という気持ちもある。感謝している気持ちだって当然ある。
 しかし成人にも達していないわたしにとって大変な職業というのは確かだ。それに上下関係だってある。(わたしにとってあまり関係はないけれど。)こうして息抜きとして友達と遊ぶのは悪くないと、思うんだ。「おい名字。」だってずっと地べたに座って書類を書いて町を巡回ばっかりして、なにが「おい聞いてるのか名字」楽しいというのだろうか。「おおい名字!!聞こえてんだろ返事くらいしやがれテメェ刀抜け!」

「いやだなつちかたさん、ちょっと休憩挟んでるだけですよ〜」
「つちかたじゃねえひじかただ。ホント斬っていい?まじで斬っていい?」
「わたし今日の仕事はバッチリ終わらせたはずなんですけど。」
「終わらせたからといって遊んでいいわけねえだろうが。お前は副長補佐として俺の仕事を手伝ってもらう。」
「げえー!そんなのあんまりだー!神楽ちゃーんわたし鬼の副長に捕まっちゃったよー!」
「マジでか!」
「神楽ちゃんみっけ!」

 そう、わたしは鬼の副長土方十四郎の補佐を務めている。これもとっつぁんの配慮でこの位置にいるわけだが、刀を振るえないわけでもないし、昔は忍の術などを少しであるがかじっていた。父が有名な忍だったらしく、わたしが幼い頃剣術や手裏剣術を教えてくれていた。母は元々病弱な方だったので、病気で死んでいくのにも納得できたし、体も弱く、わたし達が何も成せないままに終わっていくのも仕方のないことだった。それとは正反対に父の遺伝なのか元気だけが取り柄なわたし、であった。
 副長に半場引っ張られながら神楽ちゃんに手を振り神楽ちゃんも振り返した。今日は定春いないんだ、と引っ張られながら思い、そして態勢を整えて副長の隣に並んだ。

「あーあ。休暇取ろうかなあ」
「昨日取ってたろうが。」
「失礼な。わたしはやるべきことはやってますけど。総悟と違ってきちんとやってますけど。」
「なんでィ俺の悪口たァいい度胸じゃねーかおいアマ刀抜け。」
「タイミング良すぎ。つちかたかお前は!」
「名字刀抜け。」
「なんだよ二人して目をギンギラにしちゃってさ……では退散させていただくとしよう。」


 19歳、名字名前は今日も元気に生きています。