神様の決め事 | ナノ


「女を磨く10のコツ……」
「なんだ名字、お前そういうの興味あったのか。」

 やっぱり副長はわたしをバカにしている。わたしだって一応は女の子だし、下着の色だって、着物だって、流行に沿って買ってたりするんだぞ。これでも身なりは気にしている方なんだぞ。わたしはファッション雑誌の特集記事、ヨガの特集の隣にある、「女子力!女を磨く10のコツ」に目がいく。女を磨く10のコツ、というのはどういうことなのだろうか。ダイエットするとか、そんなのだろうか。

 ――油物を摂取するのを控えよう。

「油物を摂取するのは控えよう…」
「テメエには無理な話だな。」
「えー油もん好きだよ。今日の朝だってビーフジャーキー食べたよ。歯ごたえがたまんない」
「それ油物以前の食べ物だろ。お前は原始人か。裸で野を駆けまわってるのか。バカ」


 ――無理なダイエットはしない!

「ダイエット?この前二日で諦めたよもやしダイエット」
「マヨネーズダイエットってのはどうだ?」
「犬のエサダイエットはちょっと拒否るわ〜」
「よし刀抜け」


 ――下ネタ厳禁!いつも上品でいることが大切。

「うんことかそういうの?」
「この時点でお前終わってる」


 ――女子力は会話力!いつも社交的でいること。

「……わたしって会話続かないよね。」
「続かないな。」
「いつも、すぐに終わるよね会話。会話成り立たないよね。」
「バカだからな。」


 ――行事には積極的に参加!決め手はバレンタインデー!

「行事って…流しそうめん大会みたいな?この前司会進行務めさせてもらったんだけど、女子力なの?」
「どっちかっていうと、男子力」


 ――お料理できる女は家庭的な女。男子はそれを求めている者も多く、家庭的な肉じゃがを作ることから始めるのがよい。デザートよりも家庭的な夕食作りに励むべし。しかし、今は甘いものが大好きな男性も多く、デザート作りも必須条件になってきたので作れたら間違いはない。初めはケーキつくることからはじめ、順に難易度の高いデザートを作っていこう。家庭的な料理は肉じゃがはもちろんハンバーグなども作れるとよい。(139ページに続く)

「肉じゃが!わたし肉じゃが作りに励むよ!」
「やめとけやめとけ。台所が火事になるどころか跡形もなく消えるだろうから。」
「一時期雑草食べて生活してたこともあったし、やっぱ結婚するとなると『はい草』とか出せないもんね!お腹壊すといけないもん、わたしみたいに」
「般庶民は雑草なんぞくわねーぞ!」
「あああああ今バカにした?バカにしました?副長はよもぎ食べたいんですかー!どくだみ茶飲まないんですかー!」
「食べられるのと食べられないのがあんだよ。一般市民はまず知識もないのに雑草を食べようという気は」「あーはいはい」



 ――大事なのは清潔感!いつも身だしなみを整えよう。

「あ、これはちょっと自信あるかも。」
「ならいつも上着羽織れ。目立つから。風紀面で結構目立ってるからそれ」
「夏だからいいんですぅー。副長だって胸元開いてますぅーお相子ですぅー」


 ――合コンには積極的に参加!友達の輪を広げよう!

「合コンかあー。まず友達のいないわたしには合コンなんて誘われねーよ」
「ごもっともな意見だ。」
「副長誘われないの?以外にイケメンじゃん。」
「以外ってなんだコラ。興味ねえんだよそういうの。」


 ――いつも明るくフレンドリーに!自分のイメージを大切に!

「あ、これはかなり自信あるかも。」
「まあお前はいつもヘラヘラしてっから周りにイメージついてんだろ。バカって」
「副長いい加減息の根止めますよ?」


 ――自分


「ああっ!総悟!返してってば」
「なーに土方コノヤローと肩寄せ合ってんだ。…女子力?」
「わたし女子力っていうやつを磨いてるんです!総悟には一生縁のない話でしょ!」
「余計なお世話でさァ。…なになに?自分が一番綺麗になるには恋をすることです。よって沖田総悟の奴隷になりなさい…と。そういうこった、名前。今すぐに奴隷になりやがれ。」
「エエエエエエ嘘吐かないでよちょっみせっちょっ」
「ひょーいひょいひょい」
「うぜええええええ」

 総悟の身長に負けじと跳ねるが総悟もわたしと同じように跳ねて雑誌を見せないようにする。いつしか火が付き逃げる総悟を追い掛け雑誌はおろか、女磨きなど忘れていた。わたしには可愛く綺麗に見せるよりも、いつも素の自分を出していた方が好きだ。偽りの自分を見せるより、断然いい。こんな事を言ったら嫉妬だのなんだの言う人がでると思うが、わたしはわたしでいいのだ。好きなものを食べて好きなものを着て、好きな人達と一緒にいれば、求めるものはなにもない。



「…自分が一番綺麗になるには恋をすることです。恋をしなさい…ねェ。名字には縁のない話だな。」