本当はね わかってたの。わかってたけどわかりたくなくてわからないふりしてたの。でもね やっぱり ダメだったよ。本当は皆が帰って誰もいなくなって教室で毎日泣いてたの。つらいけどつらいって思ったら自分が情けなくなって自分で自分を悲しませて、どうにもならなくて、だからいつもどんなことも耐えてたんだ。なんにも反応しないようにしてたんだ。でもね でも 本当は 悲しかったの。殴ってやりたかったの。やめてって叫びたかったの。でも でもできなくて 一人になったら悲しくなっちゃって どうもできなくて 今更やめてっていうのが怖くて そしたら自分に力がなくなっちゃって。わたし変な絵描くでしょ?あれね いつも現実逃避したくて描いてたの そしたらどんどん描き慣れてきちゃってああいう絵とか 非日常的なことばかり考えて、自分を誤魔化してた。そうもしないとわたし死にたくて死にたくて飛び下りちゃいそうだったから。誰も助けてくれなかった。誰も声さえかけてくれなかった。もう 本当に もう なにもやりたくない 生きたくない死にたいって思った。 日向くん 日向くん ありがとう。わたしすごく嬉しかった。本当に嬉しかった。幸せだよ。日向くん ありがとう。本当にありがとう。うれしいよ ほんとうにうれしいんだよ。 「名字さん お おれ 名字さんと友だちになりたい」 あと、それから、いつか *** あれ なんで名字さん影山と一緒にいんの?しかもおい 喋ってやがる。コンニャロ……影山め 抜け駆けは禁止だっつったろうが!なんだよあんに体密着させちゃってふざけんなよ おれだってあんなに密着させたことねえんだぞコラァ! 「へたくそ 俺に貸してみろ」 「う うん ごめん」 「絵は上手いくせに不器用なんだな。いいか?ここはこうして こうだよ 名字は石詰めろ」 「うん 葉っぱは?」 「葉っぱ?んなもん適当にぶっ刺しとけ」 「わかった ここでいい?」 「いいんじゃねーの。ったくめんどくせーな なんで動物係に全部任せんだよ しかも解説書見ながらって チッ」 「………」 「………オイ なんか言えよ」 「えっ な なんかって」 「なんだよ」 「えっ」 おれ ちょっと涙目です。 なんで二人顔真っ赤なわけ?おい どういうことだ!! 「……あの さ 訊きたいことがあるんだけどね」 「あァ?なんだよ」 「男の子って どんなメール貰ったら嬉しい? どんな時とか どんな内容とか」 「………な なんでも嬉しいんじゃねーの」 「そう なの?ほ ほんと?」 「…………名字!!」 「なに?」 「アッ アドレス教えろよ!メールの!!」 「うん いいよ びっくりした」 「今日 メ メールしろよな」 「どんな?」 「なんでもいいんだよッ!」 「……なら 影山くんが送って わたしなんて送ればいいかわかんないから」 「おう」 ううっ もう影山の事呼んで来いって言われたけど 呼ぶのやめた。あいつのことだしすぐに部活くんだろ。ふん、ふん。おれだってまだ名字さんとメールしたことないんだぞ。でもな、おれは名字さんの友だち第一号なんだぜ いいだろ いい だろ。最近ずっと一緒にいるんだ。いなくてもな、最近いじめ減ったんだ。知らないだろ影山 知らないだろ?影山。この前名字さん おれの前で笑ったんだ。 「(よしっ うん!おれ今日名字さんにメール送ることに決めたっ)」 名字さん、最近、最近さ、やめてって言えるようになったんだよ。おれすっごく嬉しかった。泣きそうだった。涙目になった名字さんが初めて言ったやめては、いじめた女子がビックリして手が止まるほどの威力だった。ゲームにしたら一撃必殺的な?みんなびっくりしてた。 「(影山に先越されたくねーし!)」 相変わらず、おれはたまに いや 毎日名字さんをオカズにしてたりする。サイテーだおれ。でも田中さんにちょびっと訊いた事がある。名字さんの名前は出さなかったけど。田中さんはそれが普通なんだって。 部活前にこういうの考えるのよくねーよなあ。わかってるんだけどさ わかってるけど わかってる!! だめだ。気持ち切り替えていこう。 今度の試合に名字さんを誘って かっこいいとこ見せてやるぞ!だから練習 死ぬ気で 影山よりもいいとこ見せるために がんばるぞ!! |