プウコギへようこそ | ナノ


 征十郎は眉を顰め、わたしの頬を叩いた。痛みに征十郎の亀頭から唇を離してぎゅっと固く閉じ、綺麗に切りそろえられている足の爪を見つめた。征十郎の足の指が丸まっていく。ダメだった。全然上手にならない。テツヤはこれで射精をしたっていうのに、征十郎は全然、カウパーしか出てこない。一体どうすれば良いのだろうか。フェラの事など、征十郎が直に教えてくれればいいのに、と思う。
 ごめんなさい、かすれた声で征十郎に言うと、萎えてしまったペニスをわたしに向けて、視線で舐めろ、と言う。ペニスの根元を掴み、手に陰毛がチクチクと当たるが、今更そのような小さな事でたじろいだりはしない。喉の奥までペニスを入れれば征十郎は満足するのだろう。だが、生憎そのような技術も度胸もないわたしは、それさえできない、つまり、征十郎を満足させることができない。

「テツヤは二回射精したな」
「…はい」
「いくら童貞とだからって、あれは過敏に反応するところがここだっただけだ。君がもっと上手になる頃にはテツヤも少しは耐性がついて早漏じゃなくなるだろうけど…あれは早すぎだな。…早く咥えろ」

 従うまでだった。テツヤが座っていたそこに征十郎はいる。唾液とカウパーが混じり、口の端から流れ落ちる。テツヤのカウパーはもう少し、美味しかった。
 征十郎がわたしの前髪を上げて、そのまま頬、顎の下へとぬるぬると手を下ろし、頬を何度も撫でる。フェラのやり方など知らない。知らないから、こうすればいいだろう、と自己流でやるしかなかった。亀頭に唇を付け、咥え、吸う。単純に解らなかった。少し喉に亀頭を近付けるために中へ押し込んでいくが、噎せてしまってやはりペニスを口から出した。でも前より少しだけ奥へ入った気がする。

「かわいいね、お前は」

 一気に体中に熱がこもっていく。ペニスを握る力が少し強まると、先からカウパーが流れ、付け根に伝っていく。「舐めろ」という征十郎に従い、流れている液体を下から上に舌を使って舐めると、征十郎はわたしの手を持って睾丸を手のひらで包み込むように持っていく。そのまま握り、手を開き、また握る、すると征十郎からテツヤが零した熱いため息が吐かれた。揉まれるの、好きなんだ。
 ペニスの先っぽからカウパーがどんどん溢れだす。ペチン、と征十郎はまたわたしの頬を叩いたが、先程よりも小さな小さな力だった。口を窄めてカウパーを吸うと、ジュル、と卑猥な音がする。「あっ」と征十郎は零した。

「咥えてから吸ってごらん」
 口内に残るカウパーを飲み込んでからペニスを咥え、少し強い力で吸うが、征十郎は声を漏らさずわたしの頭を撫でているだけであった。失敗したのか、とペニスを離して征十郎の方も見ると、不満そうであるが、満足を含めた笑みを見せる。
「そのままじゃキスができないからうがいしてこい」裸のまま立ち上がり台所で2回程うがいをした後に征十郎の前に正座をすると、彼はわたしを抱きしめてソファーまで持ち上げ、腰に腕を回して舌を伸ばしながら顔を近付けた。わたしも征十郎と同じように舌を伸ばし、彼の舌を待つ。生温かい、生きているもの同士が触れ合う瞬間のように感じた。
 唾液を吸われる。舌をひっこめ、されるがままに、薄く目を開けて彼のまつ毛を見つめる。わたしの両腕は彼の腰にへと、上がっていく。服を掴んで、舌を出し、征十郎がそれに答えてくれる。それが、わたしにとってとても嬉しいように感じた。
 彼の手が首の後ろへ周り腰が押されて更に彼に近付くと、彼の舌の動きはより活発になっていく。苦しくなり離そうとするも彼の要求は止まらなかった。うまく受け止めきれず唾液が滴り落ちるが、征十郎は気にせず口内の唾液を吸い、自分の唾液を送り込み、舌へ絡ませていく。ぺちゃぺちゃと音が鳴り響く。ズズ、と吸う音も鳴り響く。

 次第に唇と唇が離れていった。手で口を覆い、口内に溜まる唾液を飲み込むと、征十郎はわたしをそっと抱きしめた。征十郎の肩に頭を乗せて目を閉じる。
 家族を食べた彼に抱きしめられて安心する自分が、ひどく憎い。



「あっ、ひっ、んあ、せ、せいっ、じゅ」
「今日は締りがいいな。テツヤとのフェラに興奮したか?それとも僕とのキスが気持ちよかった?」
「あ、ああっ、いやっ、んっ あっ うっ」
「気持ち良くて返事もできないかな」
「っ う、んっ」

 忙しなく腰を打ち続ける征十郎にわたしの乳首が当たる。クリトリスが擦れる。それらのおかげなのか、それともテツヤとのフェラなのか、征十郎とのキスが気持ちよかったのか、どれが理由だかわからないが、今日はいつもよりも気持ちがいい。一瞬頭は真っ白くなりそうになりながらも意識を保ち、彼を抱きしめている。

「はぁ、出そうだ」
「あっ…う はい、出して、ください…」
「『ザーメンいっぱいください』」
「ザーメン、いっぱい くだ さい」
「よく…、できました」
「…っ、うぅ、あっ…あつい…!」

 ぎゅっと征十郎を抱きしめると、征十郎もわたしの事を抱きしめてくれた。「征十郎、」と声が漏れるのを、征十郎は黙って聞いてくれた。部屋には征十郎が買ってきてくれた服がくしゃくしゃになって落ちている。
 わたし達はお互い裸になっていた。気付けば裸になっていて、気付けば服を着ている。征十郎の肌に額を付けると、征十郎は答えるようにわたしの首筋に肌を付けた。汗でねっとりとくっついているのがわかる。
 征十郎の精液が膣から流れて落ちている。腹部に力を入れると、ドロリと塊になって落ちてしまった。

「征十郎、大好きです」

 零れた心にもない台詞。肌をぶつけ合っただけのことに、零れていく嘘。いや、本音だろうか。落ちる涙に征十郎は気付いていない。


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