「言い忘れたけど、僕は第一次『鬼の子』になった。そこの冷蔵庫を開けてごらんよ。人間の腕と脚が入っているから。なかなか美味しい人間だったからテツヤもどうだい?クセになるかもしれない」 「……『鬼の子』…、赤司…くんが」 「ああ、そうだ。鬼の子だ」 「その人も、食べるんですか?」 彼がわたしを見る。怯える目で、わたしを見ている。 「彼女はまだ美味しくないから弱らせてから食べるんだ。まだ不味いニオイがするからね。なかなか味はいいんだけど、人間の美味しさの主部分はニオイなんだ」 「どうして、不味いのなら、」 「僕は彼女の家族を食べた。だから僕が引き取ったまでだ。でも彼女は特別でね、なんとなく、放っておけなかったんだよ」 「上がっていきなよ、普通のお茶くらいは出す」と、征十郎はテツヤに道を開け、テツヤは鞄の紐を握りながら靴を脱ぎ、玄関を上がった。 わたしの定位置である部屋の隅っこに膝を抱え、征十郎とテツヤを見比べ続けている。二人の間に会話は一切ない。時折テツヤがわたしをちらちらと気に掛けてくるくらいだ、視線を感じるのは。征十郎は学校のプリントへ目をやっている。そして、またテツヤと視線が合った時だった。征十郎が顔を上げてテツヤに問う。 「…そんなに気になるのか?」 「いや、別に、そんな」 「触ってみるか?好きにするがいいさ」 「好きにって、あ、赤司くん、」 「大丈夫だよ。セックスもしてるし、結構調教したつもりなんだ。どうぞ」 テツヤはわたしに踏み寄る事はなかったが、視線は先程よりも一層強くなっていく。 「こっちにおいで」 征十郎が命令する。命令に従って、わたしは征十郎の側へ行き、いつもの、征十郎の膝に座った。 「脚を広げるんだ。彼に見れるようにね。パンツを脱いで。彼の手を取って引き寄せて。膝から退け。彼の肩に手を置いて。両腕で首を引き寄せてそのまま抱きしめて。彼の股間に手を置いて」征十郎の命令に従うだけ、それだけなのに征十郎の時とはまた別の緊張が全身を走る。テツヤの肩がビクンと跳ね、振動でわたしの肩も跳ねた。 テツヤの顔は真っ赤に染め上がっている。目を泳がせて、困った表情で俯いている。わたしは次の命令を待っているが、一向にそれがないので振り返ると、征十郎は然も楽しそうに笑って言った。 「ソイツをフェラの練習代わりに使え。テツヤ、休日部活が終わったら僕の家に寄って彼女にフェラをさしてあげてくれないか?ものすごく、君の、バスケのレベル並みに下手なんだよ。だから二人で上手くなって…僕がいいと言うまで続けろ。そして、一度だけセックスを許してやる。それまで童貞でいるように」 悲しそうに、テツヤは俯いていた顔を上げて、征十郎を見る。 わかっていた。あの目で言われてしまっては、テツヤも逆らえないということを。 テツヤが答えない代わりにわたしが「はい」と返事をして彼のジーンズのファスナーに指を掛け、ゆっくりと下ろしていく。ボタンを取るのを忘れ手を上に上げると、はぁ、と零れる吐息を吐いたテツヤは歯を食いしばって、それからわたしの手の上に、綺麗な手を置いた。 「いいです、いいですから、無理しないでください」 「テツヤ、これは命令だよ。…さて、僕は寝室に戻るから、二人は続けてるといい」 「ソ、ソファーに、座って、ください。お願いします、お願いします」 テツヤも、よくわかっているようだった。テツヤは渋々、立ち上がって側にあったソファーへ座り、わたしがジーンズとパンツに指をかけて下ろすと、腰を上げてから、ゆっくりと、ゆっくりと静かに座った。彼のペニスは硬く、上を向いている。付け根を握ると、テツヤの顔は赤から更に赤へと変わっていき、手を上へ滑らせると顔を揺らして俯いた。 そして亀頭を舐めた。カウパーが出ている。カウパーを吸ってから亀頭を咥えた。するとテツヤは「う」や「あ」と震える手をわたしの頭に乗せ、苦しそうに、声を漏らし続けた。征十郎はこれをしても何も言わないのに、テツヤは感じるのか、と思いながら付け根をしっかりと握り、顔をゆっくりと上下に振っていく。 「あっ…、もう、いい、いいです、からッ」 テツヤのペニスは限界まで硬くなってきていた。征十郎よりも天を向くペニスを両手で握る。じわりと白濁である精液がペニスの先端から流れ落ちていく。わたしはそれを舐めた。征十郎のよりも少しだけ、美味しい。 それでもわたしはまだ下手なままである。テツヤはフェラをされるのが初めてなのだろう。素人同士、セックスが下手同士でどうやって上手くなれというのだろうか。それでも征十郎の命令は絶対なのだ。 前 | 次 |