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「真太郎、お前は本当に恥ずかしい奴だな」

 僕が皮肉に笑うと、真太郎は言葉を詰まらせながらもこちらの方に顔を上げて不愉快そうに眉の皺を深くした。
 ポケットから駒を取りだし、王将の文字をなぞって自分も顔を上げて真太郎を見上げる。
 僕も不愉快だった。いつでも殺す準備はできていた。
 真太郎が名前に向ける感情の名を僕はよく知っていたし、僕も同じ感情を名前に向けているのだ。冬のにおいがする10月、今日の風邪はとても冷たく、クラスのおしゃべり九官鳥と呼ばれる男子はマフラーを巻いて静かの授業を受けていたように、今日の冷たさは冬のものだった。
 両手をポケットに入れる。

「何がだ」
「いいや、別に、気にしなくていい」

 まるで生まれたての赤子のように純粋な瞳だった。名前が真太郎に引かれる理由がそこにあるのだとしたら、あの瞳をくり抜いて名前に手渡してやろうとも思える。きみが好きな瞳だと。

「知ってるか?名前の肌はなめらかで指のすべりがいい。クリトリスの感度なんかも、きっとそこらの女とは比べ物にならないだろうね。真太郎、知ってたか?」

 最初から最後まで話しをしてしまえばこの長身の男は泣き崩れるのではないだろうかとも思った。苦しそうな顔をして、僕から目を逸らしている。僕は続けた。
 名前の肌はとても甘く、どのスイーツよりも甘く、それでいて飽きさせない。すべりは和菓子よりもなめらかだ。乳首を摘んでやれば頬を染めて唇を噛んで傷だらけの肩に手を置き、僕の名前を呼んで笑ってくれる。自分の乳首に伸びる手を掴むと、怒ったように口を尖らせて、掴まれたままの乳首を放置して僕の乳首の方へ顔を持っていき、そして薄くて熱い舌で先端を舐める。飼いならされた犬のように、嬉しそうに、そして悲しそうに。固くなったモノを、なめらかな手のひらで撫で、ズボンのチャックを外し、外し忘れたベルトを僕が外すと、名前はお礼も何も言わずに、透明の液が流れる先端へ乳首を舐めていた舌をそちらに伸ばし、口を開いて先端を舐める。
 熱い息を吐くと、なめらかな手のひらがモノへと伸び、限界まで固くなって、そして大きくなる。
 ペニス。ちんちん。僕はペニスを、名前はちんちんと使い分けて呼んでいた。別にこだわりがあるわけではない。赤司のちんちん、本当に大きいね。鍛えられないペニスが大きくてよかったと思う瞬間だった。名前の髪を撫でると、名前は口から離して亀頭を撫で、睾丸も一緒に撫でた。
 顔、赤いよ赤司。口よりも先に腕が伸びた。向かう先は名前の股下だった。クリトリスを人差し指でそっと触れると、睾丸を撫でる手がぎゅっと拳に代わり思わず声が出てしまった。名前よりもまず先に。それがとても恥ずかしく、そして悔しく、同じように人差し指と親指でクリトリスを摘むと、僕と同じように顔を赤くした名前はダメ、ダメと口にしながら、薄く開かれる瞳で僕のペニスを見つめ撫で続けた。
 ちんちん、筋、とか細い声で鳴いた名前は筋を撫でる。その瞬間我慢していたものが先端から出てしまい、なめらかな手に白濁した粘り気のある液が満遍なく付着し、ベッドを濡らした。
「いっぱい出たね」と、白濁の液を僕の胸へと撫でるように付けて、僕は怒った。気持ちが悪いと。そうしたら名前はその手を舐めた。気持ち悪くないよ、と言って、指の間を舐める。申し訳なかったがその白濁の液を舐めた口でキスをしてはほしくないと思った。
「もう一回舐めていい?」僕の返事を聞かないで、名前は身を低くしてペニスを舐めて、舌を巧みに使って僕は二度目の絶頂を迎えた。
「赤司、怪我するなんて珍しいね」ふくらはぎの怪我に気がついた名前は裸のままベッドから立ち上がって救急箱を片手に持ってきて、慣れた手つきでふくらはぎにガーゼを貼った。「腰を動かしたら剥がれると思うけど」「いいの。放っておくわけにいかないでしょ」その瞬間、本当に、この少女が儚く、優しく、綺麗で、惨めで、そして愛おしく、両腕を伸ばして名前を抱き締めてキスをした。深い深い、落ちるキスをした。小学生の時に不思議に思っていたこの胸の苦しみの正体を毎度毎度と思い出させてくれる。名前の名を何度も呼んだ。愛おしかった。ただそれだけだった。セックスに余計な感情などいらなかった。ただ、愛おしく、抱いて、壊して壊されてしまいたかっただけのことだった。
 名前の秘部に一本指を入れて、二本目の人差し指を入れれば中指と人差し指は名前へと繋がった。額に汗が滲み、前髪がべったりと張り付き、妙にいやらしい雰囲気を出している。高校へ上がる前に前髪をバッサリと切ろうと提案したのは名前だった。黒子と前髪かぶってなーい?とはさみを片手に持って笑う名前に従って、彼女に切ってもらった。
 熱い名前の中は指だけでも伝わるほどに狭く、が、指は動くほどの空間をもっていた。宇宙のようだった。「舐めていいか」と訊き、名前の漏れる声の中に確かに聞き取った承諾の声に指を抜き、クリトリスへと舌を伸ばし、下から上へ滑らせ歯を立てた。歯を立てたまま先端を舌で何度も何度も小さく揺らしながら舐めれば、顎に名前の中から出た透明の液体がどろどろと顎を伝って零れ落ちていく。ぬめりを持つ液体を啜って、喉を鳴らす。名前が僕の中に入ってくる感覚に二度の絶頂を迎えたペニスは既に硬直を始め、赤黒く大きくなっていた。ペニスを持って名前の中にへと入れる。「赤司、おっきい」苦しそうに息をしながら名前は僕を見上げた。口の端には涎が流れていた。先端を入れただけで少し、白濁の液が出た。そして思い切り奥へと、名前の腰の隣に手をついて一気に突き出せば名前は揺れて声を何度も何度も漏らし手で顔を覆い、何度も何度も僕の名を呼んだ。腰を掴んで、何度も奥へと突き出した。何度も中で射精をした。何度も愛していると呟いた。

 そして、真太郎に話せば、真太郎は目を伏せて、そうか、とだけ呟いてマフラーに口元を隠した。冷たい風が真太郎の緑色を持つ髪を揺らし、僕の赤い髪を揺らし、茶色に染まってしまった弱い葉が空を舞う。

「悪いな、幼馴染の痴態なんて聞きたくないだろうに」
「……いや、別に」

 真太郎は確かに泣いていた。震える声を不思議に思い顔を上げて表情を伺えば、寒さに鼻や頬を赤くしているわけではない、その瞳からは確かに涙が流れていた。情けないとは思わなかったが、嘲笑う準備はとうの昔から出来ており、その表情と涙を見た途端に心の底から笑いが込み上げた。
 恥ずかしいだろう、と言った。真太郎は何も答えないけれども僕の言葉はしっかりとその耳に入ったらしく、大粒の涙を流して俯き、ポケットに入れていた手を拳に変えた。

「僕に先を越されて恥ずかしいだろう」

真太郎はしっかりと力強く頷いた。嗚咽を出して、その振動と共に力強く。