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 人は結果を求めるのだ。答えがほしい。それが人間が生きていると実感する、唯一の方法なのだから。
 しゃがんで膝を抱いていた。目の前にはわたしが殺した男と、その男の目をくり抜いている赤司がおり、赤司はわたしの顔をチラチラと確認しながら、人差し指を目へ伸ばしていく。
 悪趣味だよ、と心からの一言を伝えると、赤司は笑ってありがとうと言った。

「でも、キミの裸を見たこの眼、どうにかしてやりたくて」

 普通の人から見れば赤司のこと台詞と行動は人間がする事ではないと顔を真っ青にし、歯をガチガチと鳴らしながら肩を震わすだろう。
 裸のわたしはゆっくりと赤司に近付いて、眼球に触れている手を握り立ち上がった。赤司はわたしの頬を大きな手で包み込み、優しく唇を重ね合わせる。角度を変えながら、わたしの舌を吸いながら、頬に置いていた両手はいつしか後頭部と腰へと回されて、わたしの両手はいつしか赤司の腰に回していた。
 赤司は唇を離して、顎、首筋にへと舌を這わせた。赤司、赤司と縋るように赤司の名を呼んで、わたしと赤司の隙間を塞ぐ様に抱きしめるとそのままわたしの背は優しく、ゆっくり、包み込まれるようにベッドに沈む。

「名前は…名前は僕のものだ。誰にも渡さない、名前を見る事は許さない。僕以外を愛すことなど許したりはしない。僕がキミがすべてのように、キミも僕をすべてで無いと許さない。名前、名前…」
「あっ…ん、赤司…、」

「好き」
 わたしの喉は赤司にそう告げる。赤司、赤司と彼の名を何度も呼んだ。彼もわたしの名を何度も何度も呼んだ。
 誰かに必要とされること、誰かが隣で笑ってくれること、誰かがわたしに笑顔を作ってくれること、誰かが隣で手を握ってくれること。どれも幸せなことなのだと、わたしは思う。願いがすべて叶うのなら、わたしはそれ以上の幸せなことなんてなくて、死んでもいいと思うだろう。
 赤司の腕はわたしを抱きしめている。わたしの指は赤司の服を掴んで、シャツのボタンを手探りで外そうと、息苦しくそれを手間取らせていると、赤司はシャツのボタンを握るわたしの手を掴んで心臓の上にへと乗せた。
 バクバクと、わたしが真太郎を前にしている時の振動とにているそれがたまらなく愛おしくなり、乾いた声を赤司に聞かせた。

「赤司」ただ、それだけを呼んだ。そして力なく赤司を抱きしめた。

「名前のことを愛している」
「赤司」
「僕はずっと名前のことだけを守ってあげるから、だから、泣かないでくれ」

 わたしは自分が泣いている事など、赤司に言われるまで気付かなかったろう。赤司の心はすごくきつく締めつけられて、迷子になって、泣いているのだ。

「赤司、好き」

 赤司がわたしにキスをする。舌を絡めて舌を吸われて、零れた唾液を拭われて、またキスをする。骨ばった、皮の固い、ボールを握るために力を付けたその手でわたしの胸のふくらみを掴んで突起を掴み、唇を離して突起に舌を這わせた。
 僕は、愛しているから。赤司の熱い息に下半身がぶるりと震え、赤司の手首を掴んで、その手を太ももの内側に当てる。赤司は口角を上げて、頬を赤く染めて、中指を中へと侵入させた。彼はわたしの事をよくわかっているから、わたしが一番感じる大好きな部分を刺激してくれる。

「あかっ、あかしっ…あかしっ」
「…、ぐちょぐちょだよ」

 赤司がクリトリスを摘み、背中を反らせると、その舌は指が入っていたはずの中に入っていった。生々しい暖かさに思わず声が漏れ、次第にはそれが高い声になっていく。赤司。赤司、気持ちいよ。震える唇が、喉が、赤司にそう告げていた。

「気持ちいい?」
「しゃ、喋っちゃダメッ…うんっ、ん、あっ、う、んん」
「見て、ホラ、どんどん溢れてくる。それに甘い」
「あかし…、」

 溢れてくる液体を赤司は音を立てて吸い出した。恥ずかしさに自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
 赤司は綺麗だった。何をしても綺麗だった。すべてが、美しかった。

 赤司が顔を上げてズボンのボタンを外した。パンツを脱いで自分のそれをわたしの中の入り口にへと当て、はあ、と息を吐き、息を吸う。わたしの腰を掴み手に、自身の手を触れるように乗せると、赤司はわたしの手を握り一気に中へと侵入した。
 真太郎。
 わたしはいつも、赤司を真太郎に見立てていた。彼もそれをわかっていた。それでもわたしは目の前にいる真太郎を赤司、と呼んだ。