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 資料は鞄の中に放り込んだまま、ボスから言い渡された命は「ホムンクルスの幹部を殺せ」だった。
 赤司が殺したある組織というのは、わたし達と同じように裏で殺し屋をしている「ホムンクルス」という組織である。わたし達のように少人数小規模で殺しを行っている組織とは違い、ホムンクルスはわたし達よりも倍に、大組織と呼ばれる人数で行っている。例えば、わたしや赤司が部下、つまり下請人として、それを取り締まるのが遠藤さんや中井さん、つまり幹部がいて、ボスがいる。しかしわたし達の小組織ではこんなものあってないようなものだ。しかしホムンクルスは違う。

「なんで?あんなとこをいちいち相手してたらわたし達すぐ全滅だと思うけど」
「赤司の顔を知られた。避けるようにはしていたが仕方のないことだ」

 そう言われると何も反抗できなくなる。赤司は視線をボスから床に転がっているチェスの駒に移し、ソファーに凭れかかり、腕を組んだ。赤司が悪いのではない。この殺しを組んだ中井さんがすべての元凶なのだ。しかしボスは中井さんを責めたりはせず、ひしひしと感じられる赤司への怒り。わたしも、自分でも気付くほど、ボスへ睨みをきかせていた。
 遠藤さんはいないけど、それが日常茶飯事なのだから気にかける必要もないだろう。けれど状況が状況なのだから、きっとボスは遠藤さんにも怒りを感じているはずだ。

「もし幹部を殺して、逆鱗に触れたら元の子もない。気付かれずに、っていうのはもう無理は話だよ。それに赤司の顔を知られたのは」
「いや、殺した奴だけじゃない。僕が仕留め損ねた幹部も居合わせててね。でも…そいつは僕が殺すとして…、他は誰を殺すんだい?試しに殺しておくだなんて…そんな幼稚な考えで殺しに行かせるほどボスは馬鹿じゃないだろう」
「敵の潜伏先を見つけた。今から殺しに行ってもらう。赤司と…名前でな」
「人数は?」
「もちろん赤司の仕留め損ねた奴と…もう一人幹部がいる。中井の情報だと女の連れ込んでセックスかましてるみてーだから殺してこい」
「わたしそういう所に割り込んでいくの嫌いなんだけど」

 ボスの命令は絶対だ。わたしは今ここでボスを殺すこともできる、はず。赤司と協力すれば簡単だ。…なんてそんな軽はずみなことが言えるはずがない。わたしはボスの実力をよく知っている、わたしに暗殺術を教えてくれたのはボスなのだから。それにこの仕事がなくなったらわたしは生活できなくなる。
 赤司がいつものようにニット帽をかぶり、ショルダーバッグを肩にかける。わたしも手首に下げていたゴムで髪をくくり、前髪をピンで横に分ける。少しでも顔がわからないようにとボスから命令されて長年このスタイルで殺しをしている。バレることはそうそうないけど。

「殺したら明日は仕事無しでいい」

 ボスが煙草に火を付けた。一度立ち止まった赤司はボスの紫煙を見て階段へ向かう。わたしはその背中を追った。

 パーカーを着た赤司と上にいつもと違うカーディガンを羽織り、少しスカートの丈も短くして裏口を出る。初めに言い渡されたのはホテル街にある大きな建物に居るとボスは言った。暗闇に隠れながらホテル街に向かう。

「ねえ」

 赤司が口を開いた。

「殺し終えて報告したら僕の家でセックスしよう。どうせ明日は土曜日なんだ」
「部活はどうするの?」
「仕事のことも考えて明日は用事があっていけない事にしてある」
「用意がいいねえ、ホント」

 赤司の腕は確かだ。むしろわたしよりも遥かにいい。わたしよりも後にこの仕事に就いたのに、やはり出来が違えば違うのだ。小爆弾のピッチコック(ボス命名)を巧みに使う技術は正直ボスよりも格段に上だとわたしは思っている。けれど、やはりボスは強い。
 ホテル街へ入った。カーディガンを着ている学生を連れている青年の姿は大人達の目に止まり、そして目を細めている。こんなことはしょっちゅうあるためにわたしも赤司も気にしていない。ワイヤー銃を太ももにつけていて走ることはできない。階段も注意しながら上がらなくてはならない。
 ホムンクルスがいるホテルに入り、部屋を取った。中井さんの情報に間違いなどあったことはない。302に、いる。監視カメラの位置を確かめながら302の部屋を叩いた。カメラの死角にある部屋だ。わたし達もやりやすい。
 ピッキングで鍵を開ける。わたしの特技の一つだ。銃を構え、赤司は部屋についている監視カメラへピッチコックを投げた。部屋には一つしか監視カメラがついていなかったらしい。わたしは汗をかいて腰を振る男の頭へ引き金を引き頭を飛ばした。赤司はピッチコックを投げる。女は震えてその場を動かず、ピッチコックの餌食になった。

「お前らは」
「かっこわるい」

 さすがに幹部といったところだろう、ピッチコックを避けわたしの弾も避けた、が、太ももにつけていたワイヤー銃を撃ち幹部の体に巻き付けてボタンを押した。ピタリと止まった幹部の男は転び、銃をわたし達に向ける。

「早く、音が目立つ」
「わかってる」

 ショルダーバッグから銃を取り出した赤司は一言、本当に格好悪いね、と言って撃った。胸がぽっかりと空いた男。

「案外簡単だったね」
「二人とも生まれてきた赤子の格好をしてくれてたからだよ。さ、行こう。




 生まれてきた格好だって、変な表現する赤司がおかしくって笑って、赤司の背中を押して、ベッドの上に寝そべった。赤司の舌はボスのよりも薄くて柔らかい。わたしの舌をしつこく追い回さず、ある程度の距離を保って絡めていた舌を避け、歯茎をなぞって唇を離した。わざと唾液が繋がるようにする赤司はやらしい性格だと思う。カーディガンのボタンを外した赤司は言った。

「ホムンクルスが来たら、どうする?」
「今ここに?」
「ああ、そのドアを突き破って」
「…うーん…死にたくないって思うんじゃないかな。赤司は?」
「僕は…、どうだろう、わからないよ」

 質問してきたのは赤司なのに、いつもズルイ事ばっかりするのね。人を殺したことがある人が繋がっていいのは、人を殺した事がある人だけなんだ。そう、いつもの目で言った赤司にわたしは振り向いて言った。わかってる。真太郎の事は諦めろ、そういう風に言われてる感じがして、納得できた。
 背中に手を入れてブラのホックを外し、首元まで上げて胸の突起を摘んだ。「あ…う、赤司」「こんな顔、真太郎には見せたくないな」片腕を顔の横に置いてかぶさる様にキスをされ、胸の突起をいじられながら、赤司の服に手を入れて同じように胸の突起を触る。

「今日の下着は可愛いね」
「赤司はピンクが好きなんだね、前もピンクの着てたら言ったよ、覚えてる?」
「キミの下着なんて何度も見てるから覚えてない」

 スカートに手を侵入させてパンツを下ろす一連の動作はスムーズで無駄な動きは一切ない。

「もうぐちゃぐちゃだ、やらしい子だな…本当に」
「赤司もちんちんでズボンがもっこりしてる。やらしーかっこわるい」
「あっ、ちょっと」

 はは、と足でズボンのふくらみを軽く押すと声を漏らすように笑った。もうちょっと我慢しようと思ったけどこんなことされちゃ苦しいな、とズボンとボクサーパンツを脱いだ赤司は自分のを持ってわたしの秘部に宛がった。

「あ…ん、早い」
「名前がいけないんだ」
「もう、ちょっと…あっ」
「かわいい」

 きゅう、と胸が締め付けられた。同時に赤司も顔を少し歪ませて、わたしの太ももと腰を片腕ずつで支えながらゆっくりと動く。かわいいって言われると、いつも赤司はこんな顔をして段々と嬉しそうにするのを、知っている。

「赤司…赤司ィ」

 腰を支える腕を掴むと赤司は両手で腰を支えながら大きな筋肉質な体で抱きしめてくれる。肌と肌がぶつかる音は遠藤さんのように、野太くはない。乾いた音と、水の音。体が離れて一層激しくなる快感に顔を歪ませた。漏れる声に、苦しそうに笑う赤司は何度も何度も名前を呼んだり可愛いと呟く。
 いく前に赤司は動きを止めて秘部から大きく固くなったそれを抜いて自分の手で上下に扱き始めた。「えっ」「ん?」「なんでやめちゃったの?」「だって何度もいかせると気を失うだろう?」ありえない。

「ちょっと信じられないんだけど」
「ほんとにやらしい子だな」
「わたしの前でそれぶらつかせないで」
「そう怒らないで、ね」

 手を止めてわたしに覆いかぶさった赤司に顔を背けると、強引に顎を掴んで正面を向かせられ、今度は嫌な笑顔を浮かべた。

「ねえ今日はどんなのがいい?激しいのがいい?それとも焦らされたい?」

 もう焦らされたから激しいのがいい、と求めれば、赤司は裏のない、かわいい笑顔を浮かべた。