「こどもだった頃に戻りたい」 「幸せだったあの頃に」 「もう、戻れないのかな」 ![]() 白い天井が広がり、目からは涙が流れていた。腹にかけていたタオルケットを退け、持ってきた冷蔵庫の中の麦茶を取りだし少しずつ喉を潤していく。 なんだか懐かしい夢でも見た気分だった。そんなに懐かしいことでもないのだが、何十年も前のことを思い出しているかのようだ。いや、もしかしたら懐かしいという部類にはいるのかもしれない。彼女のことは昨日のことのように覚えているのだが、傍から見れば「それは懐かしいだろう」と言われてしまうだろう。 所持ポイントの画面を確認し、携帯の照明を消し、上着を着た。昨日彼女と一緒にふぁみれすという所に行く前に買ったTシャツをバッグの中に詰め込んで部屋を出る。この辺りはアレグリが多くなってしまったため、ここにいることは難しくなった。住む場所を探してくれと頼めばすぐに見つかるのだが、そのために残り少ないポイントを無くすのは勿体ないと思い、この残り少ないポイントは本来の目的のために使おうと決めたのだ。 「(またイチからやり直し……と、いうわけではないか)」 彼女に会えたのだから。 ![]() 彼女は言っていた。まるでこどものように泣きじゃくりながら俺の服に皺を作り、悲しいほどに縋っていた。 (ある軍人の手記にて) |