Innocent world | ナノ


「自分の身くらい自分で守れます!」
「なら先日のあの傷と血の量はなんだった!」
「傷をつくっても自分の力で治癒できるんです、それに自分の傷を治すのは他人にするよりも2倍早く治せるんです!」
「そうして自分の体にどんどん傷つけるつもりか!」
「そういう事言ってるんじゃない!」

 彼と彼女の言い合いはバダップの寝室で行われていた。バダップは自分の部屋である寝室で報告書を作成していて、それを見かねた名前はカフェオレをいれて寝室へと入り、バダップが「自分の身が守れないのなら戦場へ行かないほうがいい」と言ったところからこの言い合いは始まったのだった。
 心配されることを極度に嫌う名前にとって、バダップの過保護にも似た発言が彼女には重かったのだろう。名前はその言葉を聞く度に毎度毎度と眉の皺を深くしていたのにバダップは気付かなかった。だがバダップも名前の身を按じての発言だったので、悪気の一つもない彼にとっては名前の反抗的な態度が気に障ったのである。

「それに」

 幾分冷めてしまったカフェオレは薄くなった湯気を出している。バダップは身を乗り出していたのを直し、名前を見つめた。落ち着きを持った名前の声にバダップも落ち着きを取り戻し、娘一人に何を熱くなっているのかを心の中で自分に苦笑いを見せる。名前はカフェオレを机の上に置いて、口を開いた。

「わたしは人間じゃないんです」

 名前がそう言うと、バダップは目を大きく開かせたあとに少しだけ口角を上げた。バカにしたような笑いだった。だがその笑いも、スウェットを上にあげた名前の行動に消され、そして視界に入るものにバダップは薄く口を開く。

 バダップの視界にはいったものは、名前の胸にある大きな傷だった。胸から臍をめがけてある傷は、どうもおかしく刻まれているような傷だった。名前はスウェットを戻し、バダップを見る。自分に向けられている目を確認したのか、名前は自分を嘲笑うかのように笑ってホラ、と言った。

「やっぱり皆そう、皆同じ反応をする。バダップさんも…同じ」

 その傷の理由を訊くにも訊けず、バダップは自分の寝室から出ていく名前の背中を見送る。止める言葉が出ず、かすれた声で名前の名を呼んだが、彼女には気付かれなかった。このかすれた声の原因はわからなかったが、きっと名前に関係していることだとバダップは踏んだ。喉を押さえ、名前の後ろ姿を思い浮かべる。
 あの傷を見せたのは自分だけではなかったのか、とこれこそ原因不明の感情が芽生え、それがまさか、と気付くのはバウゼンからのメールを受信し、その内容を読んだ後だった。



 バダップの寝室に再度入った名前はバダップの言われるがままにベッドに座っていた。バダップはパソコンに向かい、バウゼンに今名前は熱を出していてそちらに行けないということを打ち送信ボタンを押し、そして名前の方に振り向いた。

「…そ、その、さっきはごめんなさい…。わたし、」
「いや、構わない。」

 バダップは名前の隣へと移動し、そのまま名前の肩を押した。押し倒された名前は「えっ」と戸惑う声を出しながらバダップの胸を押すが、バダップの力に勝てるほどの力など持っているはずもなく、すんなりとバダップのキスを許してしまった。角度を変えながらの啄ばむようなキスに名前も抵抗の色を示さなくなり、胸を押していた手は段々とベッドの上に落としていった。唇が離れたので、名前はすかさずバダップに「なぜ」と訊いたが、バダップはそれに答えようとはせず、一度唇を噛んだあと、それは下へ下へと下がって行き、手はスウェットの中に入り上へ上へと進み、傷の部分にへと手を添える。ピクンと名前の反応を見た後、傷に添えていた手は乳房に移動し、やんわりと揉み始める。

「あ う、やだ」

 名前は自分の乳房に置かれたバダップの手を掴み行動を止めると、バダップは顔を上げて名前を見下ろした。冷たい視線に名前は恐怖の色をした目を潤し、掴んだ手を離した。

「何が嫌なんだ?」

 答える暇を与えずにバダップは名前の唇に噛みつき、次第に深い深いキスをした。名前の舌に無理矢理自分の舌を当て、絡ませ、歯をなぞって離す。名前は溜まった唾液をごくりと飲んだ後バダップを睨んだ。その睨みがバダップの刺激となって、揉んでいた乳房から指は先端へと向かい、摘むと、名前から高い声が発せられた。

「ここが好きなのか?それともここか?」
「そこは、だめ、そこは」
「それとも、」
「あっ」

 バダップの腕と手は胸から下半身にかけて移動し、最後には陰部をなぞり下着の上から押すと、名前は喘ぎ声紛いなものを出す。バダップは下着を外し、スウェットを脱がしにかかると、名前は顔を真っ赤にしてバダップの腕を掴んだ。

「君が好きだ、だから、したいと思った。それだけでは足らないか?」
「わたしの気持ちはどうなるんですか」
「君の気持ちも尊重したいが、…なら君はどうなんだ」
「…いつも…、いつもわたしのこと『君』って言って…、名前を呼ばない人なんてもってのほかです」

「名前」

 さて、これ以上なにも言えなくなった名前である。互いに見つめ合っていると、名前は片手でバダップの前髪を上げた。そして両頬に手を添えて自分からキスをしていく。バダップも掴んでいたスウェットから手を離し、名前を覆って顔の横に腕を置いた。頬に添えられていた手も、お互いに手を繋ぎ合っている。

「気でも変わったか?」
「バダップさんは 好き。この世界の中で、一番好き。」

 唇も手も離したバダップはスウェットも下着も脱がした状態で名前の陰部へと顔を埋めた。それに慌てて声を出す名前であるが、バダップはそのまま内太ももに手を当て、そのまま陰部へと舌を伸ばす。名前からは甲高い声と、小さく腰が揺れていることに気付いた。

「あ あっ、バダップさん」
「ここが一番いいみたいだな…音がする」

 顔を離して指をいれると、そこから水をかき交ぜたかのような卑猥な音が響いた。油断も隙も一息入れる余裕もない名前は顔が離れたと思ったら次は激しく指を動かされ背中が小さく反った。

「あッ、バダップさ、あ、うっ や、」
「かわいいな」
「ばだっぷ、さ ん」
「痛くはないか」
「ん、平気… 痛くない。」
「…そうか、それならよかった」

 陰部に指をいれ、覆いかぶさるようにキスをし、傷のある胸を愛撫した。

「ひ あ あ あっ、だめ、いっちゃ、」
「まだ駄目だ、それは許さない。まだ」
「だって、だって…!」

 ガチャガチャとベルトを外したバダップは指を離して濡れた陰部に思い切り押すようにいれると、今までで一番高い声を出した名前は背中を弓のように反う。

「まだだ」

 バダップのものは奥に奥にへと打ち付けられる。名前もまた自分の意思でなく無意識に腰が揺れ、背中が反り、高い声で上げていた。離れないようにバダップは腰を掴んで腰を振っている。バダップも名前も互いに熱い息を出し、バダップは動きを緩めて名前を持ちあげた。

「あっひっ、バダップ…さ、いや、苦しい、あつい」
「ああ、俺もだ」
「好き…、バダップさんすきぃ」
「ああ……」

 バダップは名前の行動部に手を回してしっかりと抱き締めたあと、腰を振った。名前の爪が背中に立てられるが痛みを感じることはなかった。肌と肌がこれまでにないくらいに密着し、そして激しさは増していく。名前の喘ぎ声にバダップから漏れる声、そして水の音が寝室に響き渡る。

「うあ、ああっ、あっあっ、いっ あっ、ああ!」
「う…、くっ、」
「ああ、ああ!やっあ、いっちゃ、いっちゃう、あついっ、バダップっ!」
「はあ…ああ、俺も、あつい」

 ゆっくりと名前を下ろして自分のものを抜いた。二人は息を切らして、名前に関してはゆっくりと息を吐いている。「いったか」バダップは問いかけてみるが名前からの返答はない。シーツについた白濁した液をティッシュで拭い名前の隣に横になったバダップは「名前」と名前を呼んだ。

「バダップさん」

 互いに息を切らしていて、これ以上続く言葉はなかった。そしてバダップは名前の手を握って、二人は目を閉じた。

I down to shine dream world.