おさくら卒業の話 | ナノ
おさくら、卒業の話
3-2の教室の前まで行くとまだ白石が残っていた。
「お、オサムちゃんやん」
気配に気づいたらしい白石が声をかけてきたので、そのまま教室に入って「卒業おめでとうさん」といってやったら、白石は少し黙りこくった。
窓の方をみて白石は、
「卒業やんなぁ」
とつぶやいた
「今更なんやけど、もうみんなでテニス出来ないんやなぁ」
「もう、教室に行ったら朝1番に来る謙也に挨拶することも、けんじろーと今日のおやつ考えることも、師範に話聞いてもらうことも、ユウジと小春の漫才みることも、財前の毒舌につっこむことも、金ちゃんとたこ焼き食べることも、サボってる千歳をたたき起しに行くんも、もうしまいなんや」
(白石が)
「なぁオサムちゃん、おれ寂しいんかな」
(泣いてる)
2年の時に部長を任命されて3年に目をつけられたときも、全国大会で負けたときも、引退のときも、白石は泣かなかった。
ずいぶん大人な少年だと思ったものだが、流れる涙を学ランの袖で拭ってる白石はただの15歳の少年だった。
「オサムちゃん、寂しい」
「おれ、寂しいよ」
「なぁ、寂しい…!」
そのまま白石を抱きしめた。
「せんせい、バイバイ…」