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あなたが、大丈夫だ、なんて珍しく微笑んでいうものだから私はそれを信じきって、もう何も言えなかった。
だって私にはその言葉以外に信じるものなんて無かったから。
襖越しに聞こえた、近藤さんの「危ない任務」だ、という話も総悟が言った「行かせてもいいんですかィ?」なんて言葉も、私には何処か遠いものに聞こえた。

何で、皆そんな風に言うの?まるでトシが死ぬみたいじゃないのさ。
そんなわけないよ、だって、言ったもの、帰ってくると。
帰ってきたら、結婚しようって言った。
トシは嘘を吐かない、それなら私はトシの言葉を疑う余地もない。


「局長大変です!副長が!!」

どうしたの?退、何でそんなに焦ってるの?
トシが病院に運ばれた?攘夷浪士に撃たれて?
何言ってるのよ、アイツはそんなことでくたばる奴じゃないってこと、退が一番分かってるでしょ?
ねぇ、何で皆そんなに焦っているの。
もし、それが本当だとしたら、私は何を信じればいいのよ。
嘘、本当は分かってる。
分かってるよ、それくらい。
でも、仕方ないじゃない、信じたかったのよ、愛してるから。
誰が死ぬなんて、信じるのよ、こんなに好きなのに。
結婚して、今よりもっと幸せになって好きになりたかったのに。
もう、いないじゃない。

花婿のいない結婚式。わたしはまだあなたの墓前にすら立てないでいる。
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