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退屈。なんで学校の授業ってこんなに退屈なんだろう。
ボーッとしながらシャーペンをクルクル回しているわたしの耳に、銀八のダルそうな声が飛び込み、抜けてゆく。

「…でだなー、万葉集ってのは昔おっぱいがミサイルだった母ちゃんがー」
「先生ー、それもうお母さんじゃありませーん」

ああ、新八くんもよくも毎日毎日ツッコミ入れるよなー、シカトすればいいのになー。
シャーペンを回す手を止め、クラスのみんなを見渡せば、下らない銀八の嘘を必死にノートに書きまくってる奴や寝てる奴、さっさと早弁してる奴までいる。
つまんねー、眠くもないしもうつまんねーつまんねーチクショウ!
「つまんねーですねィ」
「は?」

隣から全くわたしの思いそのままを口にする言葉が聞こえ、思わず、は?、なんて言ってしまった。
横に顔を向けると、とてもつまらなさそうには見えない何かを企むような顔の沖田がいた。

「沖田、そんなすっごい楽しそうな顔してつまんねーって言われても説得力ないって」
「そうですかィ?まあ楽しいことは考えてますねィ」

本当に嬉しそうに楽しそうに、でも悪戯っぽく笑う沖田の顔に、何だかこちらまで変に楽しくなってわくわくしてしまう。
そしてわたしは沖田に聞いた。

「たとえばその楽しいことってなに?」
「そうですねィ、……まあどうやってこの退屈な授業からアンタ連れて逃げ出そうかな、ってね」

そう言った沖田の言葉に呆気にとられるわたしを他所に、沖田はまた楽しそうな顔をしたんだ。

それから30秒後に沖田はバズーカを発射し、手を取られたわたしは走りながら校舎を出た。
四階の窓から身を乗り出して叫ぶ銀八に手を振りながら自転車に跨がった沖田を見ると、なんだか本当におかしくて思わず笑いが込み上げてきた。
そしてそんなわたしに沖田は笑みを浮かべる。

「いっしょに逃げ出そうぜィ」

自転車の後ろに飛び乗り、沖田の肩を握り、太陽の光でキラキラ輝く茶金髪を見た。
坂をハイスピードで走りきった時には、もうわたしは沖田に恋をしていたっていう、退屈な日のわたしの逃走劇。
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