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「土方さん!是非わたしの夢を聞いてくださああい!」
「断る」
「いやいや、そんなはっきりキッパリ言わないでくださいよ。本当は聞きたいんですよねー?」
「気持ち悪りぃ喋り方すんじゃねえ。ていうか今は職務中だ、お前も仕事しろ」
「それでわたしの夢はですね〜」

市中見回り中、突然やってきた部下。
突然やってくるのはいつものことだが、今日は"わたしのゆめを聞いてください"とか言ってきやがった。
ぶっちゃけお前の夢なんてどうでもいい、つーか腕組むんじゃねえ、隊士(特に総悟)の視線が気持ち悪いんだよ。
とりあえず煙草でも吹かして気持ちを落ち着けよう。
そんなことを考えている内も、"突然やってきた部下"は夢だか何だかについて語ってる。

「ええと、とりあえず土方さんも知っていると思うんですけどわたしの夢は、えっと、その土方さんのお嫁さん!じゃないですか。キャッ、言っちゃった」
「……」
「それで将来、ていうよりはわたしが23になったら結婚して、…あ、もちろん六月の花嫁がいいから六月になったらですけどね!素敵な教会でウェディングドレスを身に纏ったわたしと燕尾服の土方さん……ああ、もう素敵すぎる!」
「……」

まさにげんなりってやつだ。
どうせこんなことだろうと思ってはいたが、実際に聞くともう顔が引きつってしまう。
よくもまあ仮にも片思いの相手にこんなにも恥ずかしげもなくペラペラと言えたもんだな、コイツも。
俺だったら無理、というより聞いてる俺の方が恥ずかしくなってくる人生プランだ、結婚しようって言われるより苦痛だ。
そう考えていたことを口には出さなかったが、表情には出ているだろう。
俺はその表情のまま頭二個分小さな部下に目をやった。

「ねえ土方さん、家はどんなのがいいと思います?やっぱり白い家ですよね」

バカ言え、俺が白い家住んでたら気持ち悪りぃだろうが。
畳だ畳、純和風。

「それで毎朝、わたしが土方さんに朝ご飯作ってあげますね。スクランブルエッグにトーストにコーヒー!」

だから和風だっつってんだろ、ていうかそれ朝飯作るってより卵炒めただけだろ!
つーか何俺まで人生プラン立て始めてんだよ、ペースのまれるな、落ち着け俺。

「それでですね、休日なんかは一緒に出掛けたり家でゴロゴロしたりなんかしちゃって」

無視だ、とことん無視しろ俺。

「あ、くつろぐならやっぱ居間ですよね。大きな窓の近くに真っ赤なソファー置きましょうよ!」

ああ、いい加減にしろよ!だから何度も言ってんだろうが!

「和室がいいっつってんだろ!……あ、」
「きゃああああ土方さん、ついにわたしとの結婚を決意してくれたんですね!」
「バ、バカ、今のは言葉のあやで」
「えへへへ、土方さんたら照れなくていいっすよ!えへへ」

(コイツ……!)

「そうと決まったら早速婚姻届けを貰いに行きましょう!うはー!」

俺は大きく深呼吸をしてから愛すべき部下、いや、馬鹿の頭を打っ叩いてやった。
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