log | ナノ
例えば苺牛乳の取り合いとか約束を破ったとかそんな些細なことで喧嘩をして、それでアイツが家を飛び出して、口ではせーせーするとか言ってみたりして、でも結局寂しくなるのはいつだって俺の方だ。
さっきまで口げんかしていた部屋が突然静かになって、俺一人世界に取り残されたみたいに寂しくなる。
こんな時に限って神楽は新八の家に行っているし、依頼だってこない(それはいつものことだとも言う)
少しでも気晴らしをしようとソファーに寝ころびジャンプを開いてみても面白くも何ともない、ますます孤独感を感じるだけ。
(あーあ、早く打ち切りになんねーかな、ギンタマン)
ボーッとしていたって時間が過ぎるのは遅いし、眠ろうと思って目を瞑っても浮かんでくるのはアイツの泣きそうな顔で、俺は自然としかめ面を作る。
全く何なんだよ、さっさと帰ってこいよチクショー。
いい年だっていうのに少しだけ鼻の奥がつんとして、それと同時にアイツの匂いが俺を満たす。
春みたいにふわふわした黄色い花の匂いは俺を安心させてくれて、それが無いと今の俺はもううまく呼吸もできない。
俺はますますますます寂しくなるだけ。
ソファーから、重い腰を上げて床にしっかりと足をついた。
二、三度首をボキボキ、と鳴らし俺の足を玄関へと向かわせ、お馴染みのブーツを履き、ゆっくりと扉を横に開いた。
「あれ?お前……」
ガラガラと音を立てて開いた扉の向こうには先程家を飛び出した彼女がいて、その顔は罰が悪そうにそっぽを向いている。
「……銀ちゃんが、寂しいだろうと思って帰ってきてあげたの」
ポツリ、と呟く彼女を見るけど目は合わせてくれない。
俺はガシガシと頭を掻きながら、あーだとかうーだとか言う声を上げてから一言。
「寂しかったぞコノヤロー……さっきは悪かったな」
そして彼女をぎゅっと抱きしめると、俺の好きな春みたいにふわふわした黄色い花の匂いがした。