ハナサキ | ナノ

※授業中

「あー、ほんまスピーキングのテストとかめんどうやわ。だいたい英語とかいらへんよな?」
「知らへん。校長に言いや」
「…あー、ほんま校長とかいらんわ。校長てなんなん?校が長いんか」
「知らへん。PTAに言いや」
「……あー、ほんまPTAとか…」
「しつこいわ。お前が一番いらんっちゅーねん。花と練習せなあかん俺の身にもなってみ?」
「友達おらへんの?蔵」
「そないに死にたいんやったらさっくり死なせたんで、花」
「…I can swim…」
「うっといな、自分。ちゅうか無駄に発音うますぎや!」
「蔵ノ介くん。隣の席だからと言って君の練習につき合わされるわたしの身にもなってくれたまへよ」
「あー、もう嫌やー。何で席替えとかしたんー?謙也でええやん。消しゴムぶつけたればええやん」
「…You are crazy…」
「ちょお待ち、テキストにそんな例文ないで?自分で作ったやろ今」
「You are noisy…」
「お前のがノイジーやっちゅーねん。もうええわ、ちゃっちゃか済ますぞ」
「最初からそうしとったらよかったんちゃいますか?」
「……」
「あいひゃひゃ、なにひゅんねん蔵」
「……」
「むごんひぇつひぇるひゃ…アホ、めっちゃ痛いわ!」
「なんやろな、俺の心の奥底に眠るサディストの素質が今目を覚まし飛び羽ばたいたんかもしれへん」
「長ッ!ちゅーか普通にサディストやんな、蔵。テニスやっとる時のあの目わたし忘れへんよ」
「お前はどMやもんな」
「Mやないよ。ほら、脳あるMはSを隠すって言うやんな」
「言わへんし、それ普通にMやろ」
「……」
「……」
「練習しよか」
「それがええと思うわ」
「あ、総入れ歯」
「総入れ歯?」
「SってサディストのSやねんな?ほなMって何の略なん?」
「あー、そういえば聞かへんなあ。マゾの略ちゃう?」
「マゾの対義語はサドやろ」
「ああ、そうか」
「ほんまこれやから白石くんは。Mも分からんくせに、苦手科目はありませんとか言ってんなよ」
「はあ?キャラブックに載ってもないお前に言われとうないわタコ!」
「誰がタコや!よう見てみ、足八本あるかい」
「足八本もあったらきもいわボケ…って、またこのパターンやんけ」
「学習せえよ蔵石」
「白石や。しょうもないボケすんな。ちゅーかあれやろ、英語が得意科目なんは財前やなかったか?」
「財前ざい英語しゃべれたん?」
「しゃべれるかどうかは知らんけど、確か得意科目英語って…おいお前どこ行くんや。今授業中やぞ!」
「Mの本質を見極めてきます、言うといて。ちゅーか何よりあいつに得意科目があることが気に入らん」
「そない誇らしげに言うてもサボりはサボりやぞ!どアホ!」
「アディダス」
「アディオスって言えや!」





「ざーいぜーんざーい!」
「…先輩、今授業中ですよ。みんな引いてますわ」
「お前得意科目英語なんか!わたしなんて技術家庭科やぞ」
「それはなんや微妙っスね。ちゅーか早よ帰れや。お前の勢いのせいで担任も固まっとるやないか」
「ちゃうねん、今はちゃんとした理由で来たんや」
「授業中に来るほどのちゃんとした理由あるんスか?」
「ある!SMのな、Mって何の略なん!」
「…SとかMとかでかい声で言うなや。本格的に引いとるわ、クラスん奴ら。ちゅーかアホらし…」
「あれれー?もしかして英語得意科目や言うといて分からんのかなざーいぜーんざーい」
「アホ言わんでください、マゾヒストの略やろ、Mって」
「まぞひ…?」
「マゾヒスト、先輩のことっスわ」
「はあ?わたしマゾヒヒヒちゃうし!」
「ヒヒヒやのうて、ヒストです。ヒヒヒて何笑っとんのや」
「マゾリスト」
「ヒストや言うとるやろ」
「アマゾン川」
「もはや意味分からんわ」

「とりあえず帰れや、相手なら休み時間にしたるから」
「わたし先輩やねんけど」
「やから早よ三年の教室帰れ、言うてんのや」
「…く、後輩にぞんざいに扱われる。ざーいぜーんざーい!」
「俺の名前呼ばんな」
「くそう、もうええわ!財前のアホ!ピアス!全身マゾヒスト」
「…マゾヒストって言えとるやないか…」
「バーカバーカ」
「ええで早よ行けや」
「言われんでも行くっちゅーねん、ふんっ」


バタバタバタバタ


「…先生、授業再開してええですよ。すんません」
「え、ああそうか」
「ほんま、後でどついときますわ」
「ああ、おん…」

「なあなあ財前くん」
「何や川岸」
「財前くんとこの先輩て変わってはるね」

まあ、否定はできひんな。
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