ハナサキ | ナノ


※今日はオフ


ぴょんぴょんと跳ねていた。

「よっ、よっ、よーいっ!」
「……」
「ふんぎぃっ、あと、二センチメートル…!」
「……」
「だああっ!……うぎゃっ」
「何しとっと、花…」
「あいたー、…て千歳やん。何しとん、今日オフやで?」
「それはこっちのセリフばい。俺はテニスボール借りに来たとよ」
「いやー、わたしは……財前の野郎、もう許さへん」
「財前?」
「あのアホがわたしのタオル、棚の上に放り投げたんや。取れ言うても『自分で取ればいいやないすか』とかほざいて帰りよった」
「財前も小学生みたいなことすったい。どれ、どこに乗ったとね」
「あのいっちゃん上や」
「ん?…ああ、これは花には高かね。ほれ、タオル」
「おう、おおきに千歳。千歳くらい背え高かったら便利やなあ」
「俺は小さか女の子のが可愛か思うばってん」
「ほんまに?ほな今日のところは千歳に免じて勘弁したるわ」
「そうか、ありがとう」
「…なんやお礼言われると困るわ。千歳は扱いにくいねん」
「花は扱いやすかよ」
「そんなん初めて言われたっちゅーねん。…何て言うんやろな、千歳には本気でぼけられんちゅーかしおらしくなる?」
「誰が?」
「わたしや。わ、た、し」
「花は冗談もうまかね〜」
「しばく、千歳ほんましばく!」
「おうっ、何で怒るとね」
「むかちん倍増じゃぼけ!」
「怒ると皺が増えるとよ」
「まだ十四や!皺なんか元よりないっちゅー話や」
「それにしても花は小さかね〜」
「せやねん、百五十ちょいしかない…て話逸らすなや!ちなみに身長はこれからすくすく伸びんで〜」
「花、ちょっとこっち来んね」
「千歳、人の話聞く気ある?…何やねんまったく…って、うぎゃあああ、何すんねや!」
「ちいちゃんの身長体感〜」
「あかんあかんあかん、せめてもうちょいバランスとれる体勢にせえや」
「んー、じゃあこれでよか?」
「ま、まあええけど。一見、この光景はお母さんと子どもやで?千歳」
「せめてパパって言ってほしかね。それにしても花は軽かばい」
「…千歳、天然たらしって言われへん?もう照れたりリアクション取るんも飽きたわ」
「妹は喜ぶたい」
「お前それ妹は何歳や。一緒にすな。…それにしてもやっぱ千歳目線は高いなあ下見るん怖ない?」
「俺はこれが普通ばい」
「そんなん言うてみたいわ。なあなあ、千歳歩いて」
「はいはい、落ちんように捕まっとくんよ」
「へいへいへーい。うっわ、歩いとるすっごいな千歳!な、千歳!」
「あんま暴れると落ちるばい。おとなしくせんね」
「…この高さから落ちたら下手したら足折るんな」
「試してみると?」
「いやいやいや千歳くん。何を言ってるのだね」
「標準語になったばい」
「そら標準語にもなるっちゅーねん…はあ、もうええわ。千歳、家帰らへん?」
「俺、テニスボール取りにきたとよ」
「ああ、せやったな。じゃあえーと…このボールでええ?」
「よかよ」
「ほな、これどうぞ。千歳、誰とテニスするん?」
「銀がな、相手してくれるばい。花も行くと?」
「いんや、面倒やしわたしは帰るわ。ちゅーことで、外へれっつごーや!千歳、発信」
「しょうがなかね。それじゃ、出発たい!」
「ゴーゴー!」

タタタタタ

「そのまま、ドアからバーンと出んでー!」
「わかっとるばい!……あ、頭ぶつかるとよ」

ヒョイッ

「え、ちょお千歳。そんなとつぜ……へぶっ」

ゴインッ

「?!今、すごい音がしたとよ、花!」
「ふあ〜いひ」
「何でぶつけたとね!…あー、完全に伸びとるばい。これは目覚めた時がおそろしか…」

ゴソッ

「ん?何の音……財前、何でそんなとこにおると?」
「…別に、先輩には関係ないっスわ。それより花先輩、頭冷やしてやらんでええの?」
「……ハハ」
「何で笑ってんねん…」
「財前も素直じゃなかねー。花のタオルならもう取ったばい」
「知ってますわ」
「最初からおったとね」
「…あー、先輩とこの気失っとるんがイチャコラしとって部室入れんかっただけですわ」
「財前」
「何ですのん」
「花のこと、後は頼んだばい。俺は銀を待たせとっとよ」
「はあ?意味分かりませんわ」
「家まで送ってって看病したらよか」
「…何で俺が」
「素直じゃないのは可愛くないばい。たまには優しくしてやんね」
「…千歳先輩まで知ってはるのに、何でこのアホは気づかんのや」
「花に嫌われとるばいね、財前」
「そないはっきり言わんといてくださいよ……よっと」
「送ってくんか?」
「しゃあないですやん、先輩用事あるんやし」
「…じゃあ、頼んだばい」
「はいはい」

走り去る千歳。

「……あー、ほんま何やねん」

この人、めっちゃ軽うて小さいわ。
- ナノ -