ハナサキ | ナノ


どうもこんちは。俺、財前光。わくわくすっぞ…とかいう某漫画のノリが似合わへん中学二年生、テニス部所属の健全な男子ですわ。
今日は、部活のマネージャーである花先輩の話をしようと思います。


とりあえず、今日もまた嫌がらせの一貫として先輩と仲のええ女、俺の(元)彼女のことを振ったりました。
もうすぐ、先輩が鬼の形相して教室に駆け込んでくると思います。

「くおるアアア!財前!」
「あ、やっぱり来はった」
「やっぱりちゃうわ!何やお前分かっててやっとるんかーい。今日という今日はほんましばく!」
「先輩には関係ないですやん」
「関係ないことないわボケええい!お前がわたしの友達振るたびに、友達がわたしのとこ来てぐちぐちぐちぐち迷惑や!」
「それ、先輩の方がひどいすわ。友達は大切にせなあきませんよ」
「お前に言われたくないっちゅーねん。お前は彼女大切にしろ!わたしも忠告はしてんねんで?財前はあかんって。でもみんな聞かへんのや!お前のせいや財前!」
「先輩、ここ二年の教室ですよ」
「ならちょお顔貸し!きっちりオトシマエつけてもらうで!」
「うわー、こわいっすわー」
「棒読みするくらいなら最初から何も言うな!」

そのまま、先輩は俺の制服の裾引っ張って屋上へとずんずんと進んでいく。
まあ、ここまでは予想通りや。先輩は俺が先輩のお友達と別れるたび、こうして俺を連行していく。

「先輩、引っ張らんでも一人で歩けますわあ」
「黙って引きずられときアホ財前。ほんま今日という今日は許さへん」

このセリフも、もう何度めや。

「…よし、財前。まずはそこに座り」
「……」
「正座や、正座。牡羊座とかの方やないで!」
「分かっとるわそれくらい」
「おい、ため口なっとるで!」
「先輩、ほんまうっさい。ちゅーか授業始まったんやけど」
「関係ないわ。反省するまで帰したらんでな」
「(ほんなら一生反省しんし)」

早くも正座を崩してポケットから携帯を取り出す。すると、また花先輩が上の方で怒る。
挙げ句の果てには自分が正座して、俺に詰め寄ってきた。

「あんな、財前。財前も中学生やから女遊びしたい気持ちがわからんわけやないで?」
「ほんならええやろ。…あ、返信早っ」
「……」

先輩は俺の手から携帯を奪いとると、折り畳んでそんまま自分のポケットに入れた。あーあ、メール編集中やのに。

「何するんスか」
「こっちの台詞や!人の話は目え見て聞くもんやで〜光くん」
「光くんとかきもいっスわ」
「ほんま腹立つ!」
「…あんな、財前。一応言うとくけど、ふられた方は凹むもんなんやで?凹む言うてもどっか一ヶ所ぐにゃっとなるわけちゃうで、精神的にや」
「それぐらい分かっとりますよ。俺、先輩とちごてアホちゃうもん」
「どういう意味や」
「そのまんまですわ」
「…まあええ。ここは海よりも深い花さんの心に免じて」
「何やワカメはえとりそうやな」
「ああ、ええよなワカメ。味噌汁に入れるとうまい…てそれむっちゃ浅瀬やん!」
「クオリティ低いノリツッコミやな」
「誰のせいや。ちゅーかな、あー、もうめんどうなってきた。何で財前わたしの友達ばっか狙うん?嫌がらせ?」
「俺が狙っとるんやなくて、向こうから来るんスわ」
「ウワーオ、モテル男ハ…しばく!ほんま死なす!」
「それより携帯返してもらえます?」

そう言うと、眉間に皺を寄せながらも先輩は携帯をポケットから取り出し返してくれた。そのうち刺されんで。という忠告と共に。
余計なお世話ですわ。俺はあんたが振り向いてくれたら、他の女なんかと付き合わんのに。

「先輩ー」
「なんや」
「好きっスわ」
「そうか、よかったな」

ほらな、やっぱこれや。だいぶ前に勇気振り絞って告った時もこうやった。
せやから、嫌がらせしたろ思って先輩と仲のええ友達や先輩の家の近所のお姉さんやとにかく先輩に身近な人ばっかと付き合っては別れるっちゅーんを繰り返しとる。
先輩は、別れるたびにこうやって俺んこと呼び出すし。先輩と二人きりでしゃべるとかこんぐらいしかないねん。しゃーないやろ。

「次は誰にしよ」
「おまっ、全然反省してないやん。ほんまわたしの友達は止めや」
「あー、あの人なんて言うたっけ?曽根さん?かわええですよね」
「ちょ、曽根はあかんて。ほんまあかん。な、財前?」
「あかんわー、俺もう恋に落ちてしまいましたわー」
「ざーいーぜーんー」

相当な顔しとる先輩を無視して、俺は立ち上がると屋上と校舎をつなぐ階段へと向かう。
後ろからは先輩の雄叫び。ほんま、うっさい。

「ほんなら、今からメアド聞いてきますわ」
「死ね!そこの階段から転がり落ちて股間強打して死ね!」

股間強打しても、死なへんと思うけど。


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