ハナサキ | ナノ

期末考査一週間前


「ほなみんな赤点とらんようにちゃんと勉強すること。あと、体なまらへんように筋トレは各自でしいや」
『はーい』
「ちなみに一教科でも赤点とったらそん時は……楽しみやなあ」
「こっわ!白石、何やねんその笑顔は!」
「ユウジ……ま、数学がんばり」
「こ、小春!白石むっちゃ怖いねんけど!」
「あの笑顔には何か隠されてるわねえ」
「小春!テスト期間いっしょに勉強しようや!」
「え〜」
「はいはい。個人的な話は後にしてや。とりあえず部活終わるで」


部室

「はあ……」
「ん?どしたん金ちゃん。金ちゃんがため息つくやなんて珍しい」
「花〜、ワイテスト嫌いや〜」
「ああ。そういえば金ちゃん勉強からっきしやからな」
「自分、いくらほんまのことでも、もうちょい歯に衣着せてしゃべりや」
「そういう謙也もたいぎゃ失礼ばい」
「ワイ……ワイ……赤点とったらどうなってまうん?白石に殺されてまう……嫌やああ!死にたない!」
「金ちゃんにとって蔵の存在てどんだけ鬼やねん」
「まあ白石が怖いんは分かる気もするけどな」

「んー?今俺の話してへんかった?謙也」

「しらっ……!」
「あ、蔵おつかれ」
「おん。ちゅうか花は何で当たり前のように男子の部室におるねん」
「せやって、どうせレギュラーしか使うてへんのやからええやん」
「俺のエクスタシーボディーはそない安ないねん」
「うん。ぜんっぜん見たないから大丈夫や」
「それはそうと……金ちゃん」
「!」
「金ちゃんは明日から、勉強合宿やからな」
「勉強合宿?」
「勉強合宿?」
「せや。勉強合宿」
「ワ、ワイ嫌や!」
「嫌や言うても逃げられへんで。親御さんにはすでに許可とってあんねん」
「許可って何やねん…。ちゅうか合宿て何するん?」
「まあ簡単に言えば、うちに泊まり込みで勉強やな」
「ああ……、ってそれわたしにまで被害くるやん!」
「被害言うなや。たかが一週間やねんから」
「ワイ、白石の家に泊まり込みなんしたない!嫌や嫌や嫌や!」
「へえ……、金ちゃん嫌なんや」
「嫌やっ!」
「ほなこうするしかないなあ」
「お、包帯とき始めたで」
「聞き分けない子にはこうするしかあらへんからなあ、さあ金ちゃんどないする?」
「ちょっと白石やりすぎばい。金ちゃん涙目になっとったい」
「千歳も参加してもええんやで、合宿」
「や、それは遠慮すったい」
「ワイ…ワイ…勉強嫌や…」
「あーあ、金ちゃん泣き出してしもた。どうすんねん蔵」
「……ふう。しゃあないなあ」
「……白石?」
「金ちゃん。金ちゃんも中学生なんやからテストは絶対受けなあかんねん」
「……うん」
「やから、もし金ちゃんが頑張って赤点一個もとらんかったら金ちゃんにご褒美やるで」
「ご褒美?」
「せや。俺や千歳や謙也や誰でも試合の相手したるし、おやつもたこ焼きにしたる」
「はあ?それどういうことですか、部長」
「財前がしゃべった!」
「ちゅうかおったんや」
「おやつがたこ焼きてどういうことやねん、ほな俺も赤点とらへんかったら、おやつぜんざいにしてください」
「学年一桁は黙っとりなさい」
「それ、差別っすわ〜」
「ほな謙也におごってもらい」
「……謙也さんごちです」
「何でや!」
「と、まあそういうことでやな。頑張れるな金ちゃん?」
「さっき白石が言うてたことほんま…?」
「ああ、ほんまやで」
「ほなワイ……やる!」
「よっしゃ。金ちゃんはいい子やなあ。明日からがんばろな」


一方

「ちゅうかテストていまいちモチベ上がらへんねん」
「小春と勉強するならモチベ上がりまくりちゃうんか?」
「小春……勉強の邪魔されたないねんて」
「や、小春は勉強せんくてもできるやろ」
「小春はんの頭脳は、持ち合わせた才能と努力との賜物やなかろうか」
「銀が言うとやけに重みあるな」
「……よっしゃああ!俺もやったるで!賢い男になって小春に惚れ直してもらうねん!」
「惚れ直すって、惚れられてたことあるんか?」


白石たちに戻る

「まあそんなわけで、荷物用意して明日うちまで来るんやで」
「分かった!」
「ところで蔵、勉強合宿て具体的には何すんの?」
「ん?そらまあ朝六時起床で筋トレして八時から勉強開始。夜は健康的に十時就寝てとこやろか」
「……え?それぶっ続け?」
「まあ途中で飯食ったり筋トレしたりはするけど、だいたいぶっ続けやな」
「こいつ……鬼や」
「あ、ちなみに花も強制参加な」
「何で!」
「え、そんなん癪やろ。自分だけのんびり勉強とか」
「ありえへん!……て、金ちゃん泣きそうやねんけど!」
「え、何で?」
「何でちゃうわ!」

「二時間……」
「ん?千歳先輩、何ですかそれ」
「金ちゃんが逃げ出すまでの時間ばい」
「……」

- ナノ -