ハナサキ | ナノ

※今日は金曜なので千歳くんが遊びに来ました


「…何やおかしい気すんねんけど」
「ん?何がおかしかね?」
「やって、何でわたし千歳と部屋に二人きりやねん!光にばれたらシメられてまうやん!」
「白石が風呂上がるまでの辛抱ばい。そんしても光くんはヤキモチやきやねー…はっ!」
「な、何!」
「花!花!テ、テレビはどこにあっとね!」
「あ〜、テレビならわたしの部屋に…てどこ行くんや千歳!」
「今日はカオナシに会える日ったい!早よせな始まってしまうとよ!」
「カ、カオナシて…ああ、千と千尋の……て、わたしの部屋で見る気かい!待て待て待てえええい!!」

ドタドタドタドタ

「こん部屋か!」
「ぎゃあ!そこ白石姉の部屋や!どアホウ!」
「…は?花、何しとんの……あ、こんばんはー」
「ちっ、違うとたや。隣の部屋か!!」
「いやいや挨拶くらいしようね千歳くん…て隣は白石妹の…!」
「釜ジイば見んね!」
「ほんなら人の話聞かんかい!こんジブリオタクがああ!」

ドタドタドタドタ

「?…何やったんやろ。ちゅうか今の背え高いモジャモジャ誰やろなあ?」
「んー?今ん誰ー?」
「さあ?ウチも分からんわ」

ドタドタドタドタ

「ちいいひいいろおおお!」
「(ここまで来ると千歳が怖い!)ち、千歳ストオオップ!」
「……!」
「(目、目がマジや)…あ、わたしの部屋そこ…」
「、ゆばーばー!!」
「ぎゃっ!ドア壊れるっちゅうねん!」
「(しゅばっ)」
「(ち、千歳にあるまじき素早さや…!しかも勝手にテレビ点けよった)」
「ああ…始まっとる。もう、お父さんとお母さんが豚んなるとこやね」
「おい、そん前に千歳はわたしに謝るべきやろ」
「ジブリは何ものにも変えられんばい。ほら、花もこけけ。一緒に見っと」
「…ほんま千歳ってマイペースやなあ。ペース崩れるで嫌やねん」
「早よしなっせ」
「指図されるとイラッとすんねんけど…はあ」

そして鑑賞会

「うわっ、くされ神きっしょいなあ」
「しっ、こっからがいいとこばい。千尋とみんなが協力して助けるんよ」
「おん。一回見たことあるから知っとるけどな」
「千尋…むぞらしか」
「…ロリコン」
「何か言うた?」
「言うてへんよー。…カオナシと千尋が電車乗るんいつやっけ?わたし海のシーンむっちゃ好きやねん」
「それはラストばい。海のシーンならもうすぐ…あ、ほら」
「あ、ほんまや。ええなあ、綺麗やなあ。わたしもあそこで働きたい」
「花には無理やと思うったい」
「失礼な……ぎゃっ!カオナシがカエル食べてもた!」
「カオナシ…会いたか〜」
「……」
「なあ花、どこにカオナシおっとね」
「(…蔵、早よ風呂から出えへんかな)」

それから十数分後

「ハクかっこええ!わたし、ハクと結婚したい!ハクの背中乗って登校したいわあ」
「生徒の視線ば独り占めできっとね」
「坊もかわええなあ。あんなんおったら困るけどお腹でぽよぽよしたい」
「花の腹も十分ぽよぽよしとったい」
「喧嘩売っとるんか千歳」
「冗談ばい。そんなことば言うたら、光くんに怒られてしまうとよ」
「いや、光のが酷いで。あいつわたしの贅肉、捩じりあげんねん。痛いの何のって」
「…光くん、ドメスティックなんやね」
「蔵も陰湿で酷いなんけどな。蔵は、風呂上がりのストレッチしとるわたし見て失笑すんねんで?ほんで、これ見よがしにTシャツ脱ぐんや。うっといやろ」
「…花も苦労しよっとねえ」
「せやな。今も現在進行形で苦労しとるしな。千歳、今日どないすんの?」
「ん?泊まってくつもりったい。あ、##AME1##、エンガチョー」
「エンガチョー…ってちゃうわ!」
「もうすぐ花の好きなシーンたい。集中して見んね」
「……」

そしてクライマックス

「……ちょ、ちとせえ、ティッシュとって」
「…ぐすっ、ん」
「おおきに…うっ、えかったなあ千尋もハクも…ぐすっ」
「やっぱりジブリは涙なしでは見れんばい…」
「あはは、ちとせぼろなきやあ、ぐずっ」
「花こそ鼻水づっとるばい」
「何やと…」

ガチャリ

「あ」
「お」
「…え、自分ら何しとるん?」
「あー、蔵。風呂長かったなあ」
「いや、リビングでストレッチしてたんやけどな。部屋戻ったら千歳も花もおらへんし。で、花ん部屋来たら何や号泣しとるし」
「金曜ロードショー見てたんよ。もうボロ泣きやわ」
「白石も今度うちでDVD見ると?」
「いや、遠慮しとくわ。ちゅうか、まあ二つ目のつっこみ所なんやけどな」
「何?」
「どげんしたと?」
「…明日、関西大会やからな」
「「あ」」


※千歳くんが遊びに来ました


「花ー、ナウシカはなかとね?」
「ない」
「じゃあ耳をすませばは」
「ない言うとるやん。うちにあんのは、魔女の宅急便とトトロだけや」
「それは悲しかね。あぎゃん感動する話はないばい。俺も自転車の後ろに乗せて走りたか〜」
「や、千歳があの名場面再現てどないやねん。……ちゅうか、千歳と自転車が結びつかへん」
「確かに自転車は持っとらんよ。基本は徒歩ばい」
「ああ、そんな感じや」

とその時、花の部屋の戸が開く。

「にゃ〜」
「にゃ〜?……あ、くうちゃん」
「にゃ、にゃんこちゃん!」
「くうちゃん何で二階まで来とるん?階段上られんやろ?」
「っ、花、花、このにゃんこちゃんは何ね!」
「(にゃんこちゃん…?)あ、千歳は見るん初めてやっけ?うちの家族、猫のくうちゃんやで」
「む、むぞらしかー!」
「……千歳、きらっきらしとるなあ。くうちゃんおいで〜」
「花、花、抱っこしてよか?」
「え、まあええけど。うちのくうちゃん、ベタベタされるん好きとちゃうねん。嫌がるかも……て、むっちゃおとなしゅうしとるやん。何故」
「むぞらしか〜むぞらしか〜。花が羨ましいったい。寮では動物は飼えんとよ」
「ああ、まあそうやろなあ」
「黒猫ってところが更にポイントが高いばい。ばってん、何でくうちゃんて名前なん?ジジに改名せんね」
「いや、せえへんから。くうちゃんもろてきた時に、さみしがってクウクウ鳴いてたから、蔵がくうちゃんてつけたんよ」
「白石が名付け親?想像するとおかしかねえ」
「うん千歳、失礼や」
「ばってん、白石がそげに女々しい名前つけるんは想像つかんばい。太郎とか花子とかつけそうな顔しとうとよ」
「うん千歳、二度目やけど失礼や」
「はあ……それにしてもにゃんこちゃんはむぞらしかね」
「……さっきから気になってんねけど、にゃんこちゃんて何や」
「にゃんこちゃんはにゃんこちゃんばい」
「やー、そんなでかい男がにゃんこちゃん言うてもかわいくないっちゅうか、通り越して痛い」
「そげなこと言うたら、俺はにゃんこちゃんを何て呼んだらよかとね!」
「百歩譲って猫ちゃんやろ」
「にゃんこちゃんでもよかばい」
「痛い言うてんねん」
「い、痛い……!」
「せや、痛い」
「お、俺は今まで公園でにゃんこちゃんば手懐けて一緒にひなたぼっこしちょったけん。これも痛かと?」
「あー、何やもう千歳は規格外な気してきたわ」
「俺は痛かと?花、はっきり言わんね!」
「あー、あー」

とその時、再び花の部屋の戸が開きました。

「あ、くうちゃんこんなとこにおったん。にゃんにゃんおいで〜」
「「にゃ、にゃんにゃん!」」

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