パシテア | ナノ

「ここアカデミーね」
「へえ、でかいね」
「まあね、君はアカデミーとかは通ってなかったの」
「そんなもの無かったからね」
「・・・・・・」

それにしてもでかい学校だな、人の顔浮き出た岩まであるし。あ、あれが木の葉の火影岩か。よく見たら五代目もいるじゃん。

「あ、そういえばこれ君のだよね」
「ん?・・・・・・・・・・何で持ってんの、わたしの手離剣ホルダー」
「んー、忍犬に探させたのよ。君の匂いべったりね。おまけにその鞄に貼ってある絆創膏と同じのがこれにも貼ってあるし」
「・・・・・はぁ。しくじったなあ。これで忍じゃないって言っても誤魔化せないじゃん」
「何、まだ誤魔化すつもりだったの」
「忍じゃ色々面倒じゃんね。特にこういうでっかい里じゃ」
「へえ」

聞いたのはお前だろ、はたけカカシ。何だ、そのどうでもいい感じの態度は。
ていうか、あー、何か調子狂うな。はたけカカシ。こんな男の扱いに苦しんだことないぞ・・。

「はたけカカシ」
「んー、フルネームで呼ばれると変な感じするんだけどな」
「じゃあカカシ、わたしお腹減ったんだけど」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたね。じゃあ何か食べに行こっか」
「カカシの奢りね、もちろん」
「馬鹿おっしゃいな」





「おう、いらっしゃい」
「ども」
「・・・」

何でラーメン屋に連れてくるかな、この男。いや、ラーメンは大好きだけどね。大好物だけどね。普通女の子連れて食べに行く場所じゃないだろコノヤロッ。

「あー!カカシ先生ってばデートかー!」
「ああナルト、またいたのね。デートって言うか、ただの里案内だけどね」
「ウシシ、照れなくてもいいってばよ。ようやくカカシ先生にも春が来たんだな」
「馬鹿言うな小僧!誰がこんな男」

聞いていられなくなり口を挟むと、ラーメンを口に入れたまま金髪の小僧がこちらを向いた。わたしの姿を見るなり小僧は慌ててラーメンを飲み込み、喉に支えたのかどんどんと胸を叩いている。

「んー・・・ぷはっ!すっげえ美人ー!カカシ先生どこで見つけたんだこの姉ちゃん」
「へっ、見たかカカシ。これが普通の男の態度だ」
「あーはいはい。ナルト、この人は木の葉の里に不法侵入しただけ奴でな、五代目に頼まれて今俺が里案内してんの」
「おいコラ」
「?何かよく分かんないってばよ」
「とりあえずわたしとカカシは何の関係もないの。まあ今にカカシはわたしの虜になるだろうけどね」
「懲りないねえ、・・おじさん、ラーメン二つちょうだい」
「あ、カカシわたしチャーシュー麺がいい!」

隣でカカシがため息を吐いたけど、何ていうかもう慣れた。それより今はラーメンラーメン!んー、いい匂いだわ。



「はー、食った食った」
「お前恐ろしいね、ホント」
「あのケチな親父に三人分奢らせた奴なんて初めて見たってばよ」
「まあ美貌ってのは有効に利用しないとね」

なかなか美味しいラーメンだった。あのとんこつスープがたまらんね。うむ。

「さて、腹ごしらえは終わったし次の所連れてってよ」
「あーもう。ホントびっくりするくらい自己中だねお前」
「カカシ先生が振り回されてるってばよ!」
「いやいやナルト、この程度じゃまだ振り回してるって言わないから。これからよ、これから」

ナルトはウシシと満面の笑みを浮かべている。何か子供らしくて可愛いな。わたしこれくらいの歳の時はもう・・・。うん、過去を振り返っちゃいけないよな。わたしも五歳くらいの時はこんなだった!

「さて、じゃあ行くか。ナルトお前は?」
「俺はこれから修行だってば!」
「そ、まあがんばれよ」
「おう!じゃあまたねカカシ先生、とそういえば姉ちゃん名前何て言うんだ?」
「え、あー・・・」

ええと、そうか。そりゃ名前聞かれるよね。名前無い、とは言えないし。ナルトの方に目を向けると首を傾げて不思議そうな顔をしていた。はて困ったぞ。

「どうしたんだってばよ」
「あああ、ええと、名前はね」
「・・・ななしだよ。そう呼んであげて」
「へ」
「じゃ、ナルトまたね。行くよ」
「おゥ、じゃーなななし姉ちゃん」
「ん、ばいばい」

ナルトは手を振って、そのまま走り去っていった。その後ろ姿を見届けてから、もう歩き始めてるカカシを追い掛ける。

「カカシ」
「ん、なーに」
「わたし、ななしじゃないけど」
「でも困ってたでしょーよ。どうするつもりだったのよ」
「何か、花子とかそんなんで誤魔化す!」
「ふーん、じゃあいいんじゃない。花子ちゃん。次は街中案内したげるから早くおいで」
「・・・・」

スタスタスタ、とカカシの歩くスピードは至って早い。さっき歩いていたスピードよりも、ずっと早い。わたしは急いでその背中を追い掛けた。

「カカシ!」
「なーに」
「わたし山田花子じゃないよ」

右腕をつんと引っ張りカカシを見上げると、カカシの顔のパーツで唯一覗いている右目がわたしを捉えた。そして、相変わらずののんびりした口調で言う。

「知ってーるよ。ななしでしょ」

その目が黒目が見えなくなるくらいに細められて、初めて見るその笑顔に思わず見惚れてしまった。


パシテアの動揺
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