パシテア | ナノ


「君、内の里の子じゃないよね。何しに来たのか吐いてもらおうか」
「・・・・それさっきシカマルにも言われましたけど。ただの観光ですよオニーサン」
「それなら門番やシカマルを幻術にかける必要ないでしょ」

ちっ、こいつ何でそれ知ってんだ。もしかしてさっきの奴の幻術がもう解けたのかクソウ。この能力便利だけど術をかけてる時間調節出来ないのが難儀なんだよなあ、ふむ。
とりあえずこのオニイサンから逃げたい・・・けど、首筋にはクナイが当てられているわけだから下手に動けない。それに、このオニイサンは明らかに門番の奴やシカマルとは格が違う。まあ、・・・この能力の前では何も関係無いんだけどね。フハハハ。
もう一度ちらりと男の顔を覗くと鋭い目つきでわたしを睨んでいた。あー、その赤い目、気に入らないなあ。どっかの誰かを思い出す・・・・・ん?どっかの誰か・・・?誰だったっけ。割と身近な人物だったような。

「・・・・ま、いいか」
「?何がだ」
「お腹減ったし観光したいし、何より男に構われるのは嫌いじゃないけど」

男は訝しげな表情でわたしを見ている。実はわたし、さっきからそれが気に入らないんだよオニイサン。

「オニイサンみたいにわたしに靡かない男は大嫌いだコノヤロー」

ぎゅんと瞳に力を入れて、術をかけようと振り返った。が、その目を塞ぐようにオニイサンの手がわたしの瞼を覆った。うげ、これじゃあ術がかけらんないじゃないの。

「はーなーせー」
「やーだよ。君が瞳術を使うことは聞いてるからね」
「ぎゃー、腹立つ!めっさ腹立つ!何その余裕」
「分かった分かった、大人しくしててね。あ、後この目塞がなくても俺には瞳術はきかないよ」
「え、何で」
「車輪眼て聞いたことない?」

は、・・・車輪眼。思いだした、あの赤い目はイタチだ。そういえばアイツにもわたしの瞳術きかなかった。でも確かこの目って血継限界でうちは一族にしか・・・・・ってあああああ!

「はたけカカシ!」
「何?名前まで知ってんの。そりゃどーも」

何とか手を振り払って距離を取り、今度はわたしがオニイサンを睨み付けた。それに相反して、オニイサンは笑っている。わたしの怒りバロメーターはもう天辺が近い。

「折角木の葉まで来たのに意味無いじゃない!」
「へ?」
「あ、あいつ等はわたしに全く興味示さなくてむしろ女とも扱ってくれなくて嫌気がさして逃げてきたっていうのに・・・・」
「ちょ、落ち着け、な、」
「何でこんな遠くまで来てあんたみたいな男がいるのさー!わたしに靡かない男など滅んでしまえ!!」
「いや、そんな無茶苦茶な」
「だから、今決めた。わたし、この里中の男とアンタを落とすまで居座る!」
「・・・・落とすって何処に」
「わたしを愛して止まない地獄へに決まってるじゃない」

ビシっと指さしてやった。男はあからさまに呆れた顔をしてわたしを見ている。でも、そんな余裕でいられるのも今だけなんだからね。このわたしの手にかかれば男の一人や二人落とすなんて朝飯前よ。精々足掻くがいいわ、フハハハハ。

「うん、何て言うかね。根本的な所からいくと人って顔だけじゃないのよ」
「へっ、顔の大半マスクで隠してるような奴に言われても負け惜しみにしか聞こえないっつーの」
「何て言うんだろうな。とりあえず君の第一印象は最悪だけどね。俺は。性格って言葉知ってるかな」
「ば、馬鹿にしてんのか!生まれてこの方第一印象最悪なんて言われたこと無いわ!」
「ふぅ」

目の前の男は大きくため息を吐いて、ジトッとした目でわたしを見た。少し怯みながらも「何よ」と言うとやれやれと首を振って額当てをずらし赤い左目を隠した。

「君が俺のこと落とそうとするのは結構だけどね」
「な、何よ」
「ま、俺が君に惚れるのはあり得なーいね。悪いけど」
「何をゥ!」
「何なら賭けてもいい。俺が君に惚れるより、君が俺に惚れる方が早いと思うなあ」
「何でそういう話になってんの。絶対絶対絶対にあり得ない。あんたなんか大嫌いだっ、イーッ」
「そう?俺は嫌いじゃなーいよ」
「・・・・・へ、」
「ほら、もう絆されてるじゃん」
「くっ・・・からかったな!」
「からかわれたのはそっちでしょ」

ぐがあああ!むかつくうああ、バロメーターMAXまで上がった!こんなに腹立つ男に出会ったことは今まで無い!暁の奴等でもここまで酷いのはいなかった。爆発しろって言ったデイダラでさえここまでむかつかなかった。

「消えてしまえ!」
「ここ木の葉の里だけどね」
「黙れ白髪!老人!老け顔!」
「あーはいはい。それより火影様の所行くからちゃんと着いて来てね」
「誰が!」
「・・・・あー、もう分かった」

何が分かったなんだ、と言う前に男はわたしの体をひょいと抱え上げた。おーろーせーそれが無理ならせめてお姫様抱っこして連れてけコノヤローーー!俵じゃねんだぞオオオ!

「ふざけんな、ばかけバカシイイイ」
「ちょ、うるさいから耳元で騒がないでくれる。本当に落とすよ」
「ひいっ」

一瞬この男から出たオーラが本気だったので暴れるのを止めた。今落とされたら受け身を取れる気がしない。わたしを抱えているのにタンタン、と軽い足取りで屋根の上を駆ける辺り相当鍛錬してるのだろう。胸板も厚いし背高いし、うむ・・・・じゃなくて違うウウウ!わたしの使命はこの男を地獄に落とすことだ、コノヤロー!


パシテアの憂鬱


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