パシテア | ナノ

「よっ、皆さん久しぶり」
「赤髪・・・?」
「赤髪じゃないですか、久しぶりですね。てっきり組織を裏切ったのだと思っていましたよ」
「乳デカ女かぁ?久しぶりだなゲハハァ!」
「あー・・・びっくりするくらい変わらない反応がうざい。少しは媚びろ。わたしを崇めろ」

そう吐き捨て、乳デカと下品なこと言った飛段を殴ってやろうかと足を踏み出した所でリーダーと目が合った。相変わらずの無表情が何を考えているかさっぱり分からなくて怖い。

「サソリ、俺の命令を忘れたのか」
「知るか、俺はデイダラに任せたんだ」
「あ、旦那!責任転嫁すんのか、うん」
「・・・・デイダラ」
「・・・赤髪がイタチに用があるって言うから連れてきたんだ、うん。殺せって言うならリーダーが殺ればいいだろ、袋の鼠なんだからな」
「え、袋の鼠ってわたしのこと?」
「それ以外、誰がいるんだ、うん」

全員の視線がわたしに注がれる。こんな状況で飛段を殴るも何も無い。というか殴る前にわたしが殺される、間違いなく。
もう何でこんな面倒なことになっているのか分からない。嫌いだ暁メンバー・・・くそう。

「イタチに何の用があって来たんだ、赤髪」
「・・・イタチの弟くんのこと聞きたかっただけ」
「弟・・・?」
「サスケ?・・・お前がサスケに何の用だ」
「んー、詳しいことは後から言うからさイタチ。とりあえずリーダー、この場は見逃してっ」
「小南」
「何かしら」
「赤髪を牢に入れておけ。とりあえず夕ご飯が先だ」
「わかったわ」
「わーい、牢屋だありがとう・・・って、何でやねん!」
「おう、本当にノリツッコミしてる奴初めて見たぞ・・うん」
「相変わらず面白い奴だな、赤髪ィ」
「さあ、いくわよ」

茶化すデイダラと飛段に蹴を入れるのも叶わず、小南に連れられてわたしは部屋を出た。「後でご飯持っていくぞ〜」「美容ホルモンをなあ、ゲハハァ」あいつ等絶対に殴ってやる。帰りぎわに殴ってやる。



「小南ー」
「・・・何?」
「見逃して」
「無理よ。神の・・・ペインの言うことは絶対」
「頭かたいなあ、小南。大丈夫大丈夫、ペインを後ろから殴って幻術かければ」
「着いたわ、おとなしくしててね。わたしも仲間を傷めつけたくないの」
「・・・リーダーがやれと言ったら?」
「殺るわ」

信用なんねえ!全然信用なんねえ!・・・じゃなくて、リーダーといい小南といい無表情過ぎて怖い。ねえ、あんた等は何考えてんの?この先のことが予測できなさすぎて嫌なんだけど。

「さあここよ、何か用があればこの蝶に言って。駆け付けるわ。それと餌・・・食料は後から持ってくるわ」
「おい聞こえてるぞ、餌って言ったの。本当にお前性格悪いな小南」
「あなたに言われたくないわ」

ムムム、と小南を睨みつけた。が、小南はわたしに背を向け牢から出ていってしまった。
静まりかえった暗い鉄の部屋。あー、さみしい・・・。それにお腹もすいた。だって今日お団子しか食べてないんだ。

「虚しい・・・早く餌でいいから持ってきてよ小南」
「ほう、お前は餌でいいのか。それではこの鬼鮫特製ハンバーグは不必要だな」
「!イタチ」
「仕方ないから持ってきてやった。そしてサスケの話、聞かせてもらおう」
「ハンバーグやった!しかも目玉焼きつきじゃん鬼鮫さすが」
「・・・早く食べろ」

格子の隙間からイタチはハンバーグをわたしに手渡した。熱々で何て美味しそうな。手を合わせて早速一口。デミグラスソースが口の中でとろける。ああ、幸せ。

「赤髪・・・」
「ん?」

目玉焼きー、目玉焼きもこの半熟具合がたまらないね。黄身のトロトロがわたしを満たしていく。まるで肉の宝石箱やー!

「・・・随分と美味そうに食すな。そんなものを」
「そんなもの?何で?」
「その肉、今日飛段が捕らえた大ミミズのものだ」
「ぶふっ!おまっ・・・何てものを、ぐあああ」

鬼鮫あの野郎オオオ!何てもの作ってんだふざけんなアアア!ミミズ食っちゃったじゃないかオエエ・・・。つうか、やっぱ暁嫌いだくそう・・・わたしにこんなもの食べさせるなんてあり得ない!高級フルコースよ、普通なら。

「イタチ、あんたわたしに何の恨みがあるのよ・・・」
「恨みは無いが、話を聞け。サスケのことで俺に話とはなんだ」
「え、ああ、そう。サスケのことね。イタチ、今サスケがどこにいるか分かる?」
「何故だ」
「あー。ちょっとサスケを木の葉に連れ戻そうと思ってさ。サスケはイタチを追ってるって聞いたから」

言っている最中にも、イタチの眉間には皺がより、わたしの話をすごく難しい顔で聞いていた。まあ元からイタチは無表情で怖い顔してる奴だけど、何となくそれとは違うような気がする。

「・・・赤髪とサスケ、何の関係がある。お前にサスケを連れ戻すことは不可能だ」
「は?何でそんなこと分かるのさ」
「あいつは・・・あいつの親友でさえ止められなかった。それをお前のような者に止められるわけもない」
「それはこの瞳術で」
「忘れたのか、サスケは俺の弟。つまり車輪眼を有する。お前の幻術など無意味だ」
「・・・・ハッ」

そうだ。すっかり忘れていた。サスケはイタチの弟だった。イタチやカカシと同じ車輪眼を持った・・・。それでは普通に考えてわたしがサスケを連れ戻すのは無理だ。よく知らないけど、サスケに忍術、まして体術で勝っているとは思えない・・・。
だけど、・・・今回ばかりはそれでも諦められないし譲れないのだ。どうしてもサスケを。

「お前はおとなしくこの組織にいろ、リーダーの方には俺から話を通しておく」

イタチはわたしにそう告げて牢屋から出ていこうと、わたしの側を離れた。
・・・おとなしくこの組織にいろ?あなたわたしがそんな言葉を素直に聞くと思ってるんですか?というかイタチ、あんたはよく分かってるでしょ、わたしの性格を。

「・・・・絶対嫌だ」
「?なんだ」
「瞳術が使えない?フハハ、それがどうした」
「・・・?」
「瞳術が使えなくとも、サスケにも目はある!わたしの姿は見える!それなら恐るるに足りぬわアア」
「どういうことだ」
「サスケを落とす」

ビシッと親指を地面に向けて突き出した。サスケを落とす。そして連れ帰る。幻術が使えないなんて、これ以上にわたしを燃えさせるものはない。わたしの本領発揮よ。この顔も髪も肌も何もかもはそのためにあるんだから。フハハ、覚悟しろサスケェ。

「何やら燃えているようだがな、お前はそこからどうやって出るのだ」
「・・・・イーターチッ」
「フッ、俺にその程度の媚びが通ずるとでも思っているのか。ナンセンス」
「チッ・・・じゃあ交換条件でどうよ」

腕を組み、じろりとイタチを睨む。こいつに色仕掛けが通用しないのはもう分かっているから無駄なことはしない。取引ってのが一番手っ取り早い。
しかし予想外にイタチは、ふっと笑うとクナイを取出し牢の鍵へ向かってそれを投げつけた。ガチャン、という音がして鍵は真っ二つに割れ、鈍い音を立てて牢の扉が開く。

「交換条件などはいらない。ただ、一つ」
「・・・何」
「サスケによろしく伝えといてくれ」
「・・・覚えてたらね」

わたしは直ぐ様牢を出て、イタチのすぐ近くにあった小さな出窓を破壊しそこに足をかけた。顔だけ振り返りイタチを見ると、口元だけを吊り上げ笑っていた。

「イタチ、何でわたしを逃がす気になったの?」
「・・・・愚かなる赤髪よ。お前は愚かだ」
「何でわたし二回も愚かって言われてんの?喧嘩か、喧嘩売ってるのか」
「お前は・・・自分の容姿に固執し、力を過信している。しかし純真だ。その純真さが何かを救う」
「・・・ふうん」
「フッ、俺も一つ聞くが、何故何の関わりもないサスケを連れ戻そうとするのだ」
「・・・友達のため」
「・・・」

イタチはもう返事をしなかったので、じゃあわたしそろそろ行くわ、と小さな窓をくぐった。良かった、途中でつまらなくて。外に出てからもう一度イタチを見たけど、わたしには後ろ姿しか見えず表情はうかがえなかった。

「・・・今度、おいしい団子でも差し入れするかな」

呟き、夜の道をわたしは駆け出した。あ、結局サスケの情報何も聞いてない。


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