パシテア | ナノ

サスケを連れ戻しに行ってきます。心配はしてください。でも探さないでください。

これからまたしばらく長い任務につくため、あいつに一言断っておこうと家に帰ったらこんな書き置きがしてあった。サスケを連れ戻しに行く?さっきサクラの話を聞いたからか・・・。思いたったらすぐ行動ってどれだけ早いんだよ、まったく。
第一、サスケを連れ戻すなんてあいつサスケの顔も知らないだろうに。気になる所だけど俺も任務があるから追い掛けるのは・・・無理だな。五代目にどやされる。

「ま、危なくなったら逃げるでしょ、あいつなら」

それよりもさっさと任務を終わらせて帰ってくることにしよう。その方が効率いい気がする。
ま、あいつに直接聞きたいこともあるしね。


『・・・行っちゃいましたよ、カカシ先生』
『あ、ばれてたのね』
『探知能力低い彼女はともかく、わたしまで騙せると思ったら大間違いですよ』
『んー、成長したねサクラ』
『そんなことよりカカシせーんせ。さっきの聞いてたんでしょ?先生の方はどうなのよ』
『ハハ、・・・サクラはどう思うの?』
『そうですね・・・ぞっこん?てとこかな。すごく好きなように見えます』
『え、俺そんな風に見えてんのね。困ったな』
『何、違うんですか?』
『・・・いや、多分それで正しいよ。だけどあいつに気付かれるのは困るなあ、なんて。あ、サクラこのことは秘密で頼むな』
『ああ、勝負ってやつですか?一体何なんです、それ。というかどっちかが先に折れなきゃずっとこのままですよ』
『ま、そうなんだけどね・・・。どうしてもこれは負けられなくてなあ』
『・・・よく分からないです』
『ま、とにかく秘密ってことでよろしく。それじゃ俺は任務あるから』


任務から帰ってきた時にいてくれると嬉しいんだけどな。あ、でも居候って三日間だけだったっけ?まあ、いいや。どうも嫌な予感がするけど・・・気にしても仕方ないな。
それじゃあしばらく行ってきます。


* * * * *


「サースーケ!ってどんな顔かなあ」

里を既に出てしまってからの疑問。あー、サクラに特徴聞いてこればよかった。いや、なんか聞いたはずだぞ。確か・・・・黒髪に車輪眼。うんそれだ。
・・・と、いうかサスケってイタチの弟なんだよね。それならイタチに似てるよね、多分。よっしゃ、ここはわたしの第六感を頼りに行くしかないな。

「サスケがいそうなのはー、右」

ビシッと右の道を指さしそちらに続く一本道を駆け出した。デイダラみたいなトリがあればもっと楽だけど、生憎わたしはあんなヘンテコ芸はできないからな。仕方ない。
というか今一瞬で暁時代を思いだした。暁時代と言ってもわたしは暁の一員では無かったし、みんなみたいにツーマンセルで色々な里を旅するなんてことしていなかった。だから、全くこのわたしを置いて自分達だけ旅行するなんてそんなことさせるか!って頻繁にあいつ等についていったなあ・・・。角都は無駄遣いするなってうるさいから、滅多に一緒にいなかったけどね。

「あ、そうだ。暁といえばあれだよ。イタチ探した方が早いよね」

急ストップした。そうだそうだ、サスケはイタチに復讐するために里を抜けたんだからイタチに接触してくるはず。そこに一足早くわたしが参上して待ち伏せしていればいいんだ。そして華麗にサスケをわたしの幻術で捕まえて帰ろう。
そうとなれば話は早い。暁のアジトに行けばいいのだ。リーダーにイタチの場所を聞いて・・・完璧だ。もう随分と走ったからよく分からないけど、わたしの知っているアジトは西の方角にあった。気がする。一日あれば着く距離だから、それならのんびり歩いていこう。団子でも食べながら。

「そうだ!前に行ったお団子屋さんに寄ろう。おじさんに挨拶しなくちゃね」

ついでにお持ち帰り用も貰っていこうかな。イタチの目の前で美味そうに食ってやるのだフハハハハ!



「で、こうなる意味が分からない」
「よう赤髪か。久しぶりだな」
「相変わらず馬鹿面してるな、うん」
「何でいるの何でいるの何でいるの。ここわたしの団子屋だ」
「あ、赤髪がいるならここの団子代しいらないな、うん。またいつもの手でよろしく頼んだぞ」
「奢らない。絶対に奢らない。この美貌は自分のためにしか使わない。むしろお前達のためには使わない」

団子屋についたわたしが見たものは、団子をほおばるデイダラとそれをヒルコの中から傍観しているサソリの姿。直ぐさま逃げようと思ったけど、この道を通らなければアジトには行けない。おまけにあそこに行くならどうせこいつ等にも会う。というわけでこうして二人の前に仁王立ちしているのだ。

「団子食べてる暇があるなら世の中のためになることでもしてみろ。芸術馬鹿達めが!」
「はあ?お前にオイラの芸術の何が分かるっていうんだ、うん。爆破するぞ」
「というか犯罪者が世のため人のためも何もねえんだよ」
「それならせめてわたしのためにアジトまで送れ!あのトリ出せデイダラ!」
「ああ、そういえば旦那」
「そういえばそうだったな」
「ちょ、シカトすん・・ぬあああ」

わたしの台詞を遮り、ヒルコの尾がこちらに向かって飛んできた。咄嗟に避けるが、わたしがいたその場所は地面に穴があき土煙を立てている。前が見にくい。いやそうじゃなくて危ないふざけんな。

「何の恨みがあるのよサソリ!」
「ちっ、避けやがったか。相変わらず回避するしか脳の無え馬鹿のようだな」
「消えろ、突然知り合いに攻撃するお前に馬鹿呼ばわりされたくない」
「はあ?何甘えこと言ってんだ。こうなることくらい想像ついただろアホ」
「い、意味分からん」

そう返すと、二人は揃いも揃って呆れた顔をした。そしてため息を吐く。あああ、ほらね。これだよこれ。この態度がむかつくのだよ!こいつ等わたしのこと完全に見下してるし、馬鹿にしてるし、何よりわたしのこの美貌を気にもとめない!
やっぱり別の道を何とか考えるべきだった、しくじったなこれ。

「お前、勝手に組織抜けたろ、うん」
「組織抜けた・・・?」
「一ヶ月も姿見せない上に連絡もつかない。そりゃあ組織裏切ったと思われるだろうな」
「え。というかわたしそもそも暁の一員だったの」
「全然役に立ってなかったけどな、うん」
「だがお前は暁の内部を知りすぎている。俺たちが何をしているか、俺たちの術の特徴、弱点。だからリーダーに見つけ次第殺せって言われてんだよ。じゃあな」
「ちょ、ストップストップ!何それ意味分かんない。暁ってただの旅行好きサークルじゃなかったの」
「はあ、何言ってるんだ、うん。何でS級犯罪者が集まって旅行行かなきゃなんねえんだ、うん。俺たちは」
「待てデイダラ、この馬鹿どうやら本物の馬鹿のようだぜ、クク」

本物の馬鹿と言われました。本物の馬鹿です。いや、そうじゃなくて違ったの、旅行好きな団体さんじゃなかったの。確かに旅の先々で戦闘はあったし尾獣とか何とかの聞き込みもしていたけど。
う、うすうす感づいてはいたんだよ。確かにこんな凶暴な奴らがみんな旅好きだなんてさ。だけどわたし何も知らされてないし、みんなみたいに任務っぽいものも無かったし。

「サソリたちのあれは任務だったの・・・!てっきり里の追っ手から逃げるため戦っているのだとばかり」
「確かに本物の馬鹿だな、うん」
「だろ」
「じゃあ、わたしだけ任務が無かったのは何で?というかリーダーそんな話一回もしなかったよ!」
「それは、お前が任務こなせるほど強くないからだろ、うん」
「大方その瞳術が珍しかったんだろ。それにしても鈍い奴だな」
「うっわ、全然知らなかった・・・」

そんな裏があったとは。愕然としていると、サソリはヒルコの尾をわたしから遠ざけた。どうやら殺すのは止めた、らしい。というか止めてくれると嬉しい。

「ん、旦那。殺さねえのか、うん」
「何か色々呆れてやる気が失せた、お前の好きにしろ」
「え、他人任せかよ。・・・そうだなあ、そういえば赤髪お前アジトに行きたいって何の用だ、うん」
「ああ、ちょこっとイタチに用事がね。サスケってどこにいるのかなあと」
「サスケ?誰だそれ」
「イタチの弟」
「そんな奴に何の用が・・・って旦那、置いていくなよ、うん」
「うるせえ、俺は先に行く。お前がそいつは何とかしろ」

ズズ、ズズ、と奇妙な音を立てながらサソリは団子屋から遠ざかっていく。デイダラは今度はサソリに対して呆れたため息を吐いた。

「とりあえず、お前も来るか、うん。アジトに行けばどうせ逃げられないしな」
「やった。さすがデイダラ。サソリと違って話が通じる!」
「それじゃとりあえず」
「とりあえず?」
「ここの団子代よろしく」



パシテアの家出

- ナノ -