パシテア | ナノ

やけに瞼の向こうが眩しくて目が覚めた。

「ふんむ・・・・」
「おはよ」
「・・・おはよ、もう朝」
「朝っていうか昼だけどね」

のそりと体を持ち上げるとぎしりと軋んだ。やっぱソファーで寝るのはだめだと思う。というか普通はカカシがこっちで寝るだろう。うむ。

「カカシ、わたしベッドがいー」
「贅沢言わない。置いてやってるだけ有り難く思いなさい」
「体がギシギシする、代わって」
「やだよ、俺だって任務の疲れがまだ残ってるんだから」

こいつ絶対嘘だ。疲れてるやつがそんな鼻唄歌いながら本読んでる筈がない。つうかイチャパラって、イチャパラって・・・・ん、もういい。何か面倒くさくなってきた。というか寝起きで頭回らない、あー・・・だるい。

「カカシご飯は」
「用意してあるから台所で食べておいで」
「持ってきてよ、ここで食べる」
「絶対こぼすからダメ」
「ちぇっ」
「それよりお前、食って寝てばっかだよね。よくそれで太らないな」

んー。ああ、そうか。昨日もカカシが帰ってきてから夕ご飯食べて風呂入ってすぐ寝たんだっけ。道理で頭が重いはずだな。
それよりお腹減った。何もしてなくてもお腹は減るから不思議だよね。ミステリー。

「カカシ今日も任務無いんだよねえ」
「そ、明日までは無いよ。だからせっかくの休暇邪魔しないでね」
「邪魔しないから遊ぼうよ」
「それが邪魔っていうんだけどなあ」

ソファーから降りて、のしのしと台所に向かった。机の上にはいんげんの煮染めと焼き魚がある。「味噌汁も鍋に入ってるから温めて飲んで」とカカシが居間の方から言ったので素直にガスコンロの火をつけた。こういう時に、火遁の方が早そうとか思ってしまうわたしってやっぱ忍者だよな、うむ。

「食べ終わったら流しにいれておけよー」
「分かってるよ」

味噌汁が湧いたので、机の上に並べてあったお椀に注ぎ、ついでに茶碗にご飯も注いだ。
いただきます。と言って手を合わせると、再び「どうぞ」と奥から聞こえてきた。昨日も思ったけどカカシの料理って美味いんだよなあ。でもわたしなんて・・・・まあ、目玉焼きは作れるし、負けてない負けてない。

「カカシ今日は一日本読んでるの?」
「・・・いや、報告書書かないとね。それにちょっとは体動かすつもりだけど」
「外行く?」
「そうね、ななし行きたいの?」
「うん」
「じゃ、今日は外で体動かすか。そういえばななしって瞳術以外も使えるのか?」
「まあ一応忍者だからね」
「へえ、属性は?」
「あー・・・風」
「へえ、珍しい。というか今日すっごいテンション低いよね、お前」
「寝過ぎて怠い」

そう言うと、カカシが「そりゃあれだけ寝てればね」と笑った。ああああ、頭重い瞼重い。怠い。体動かしたい。
ごくりと、最後の一口を飲み込んでからわたしはまた手を合わせ「ごちそうさまでした」と言った。カカシは「どうもお粗末様」と言ってその視線を本へと戻した。

「眠たい」
「・・・今、眠りすぎて怠いとか言ってなかった?」
「寝過ぎて眠いの」

食器を流しに浸け、居間へと戻った。ふとカカシを見ると、窓から射し込んだ光がその髪を照らしていた。今回は銀色に。それにしても今日は良い天気だ、温かいし。
くぁ、と欠伸をしてカカシの横に寝ころぶと右手で近くにあったシーツを掴みわたしに掛けてくれた。

「また寝るの、お前」
「外行くときになったら起こして」
「はいはい」

カカシの返事を聞くと、わたしはすぐに眠ってしまった。今日は、眠い。



* * * * *


「んー、そろそろ体でも動かすかな」

読み終えたイチャパラを閉じて、本棚に並べた。綺麗に整理整頓されているこの本棚を見ると、他人はA型だと思うかもしれない。実際はO型なんだけどね。

「あ、そういえばこいつ起こさないとね」

昨日も夜早く眠りにつき今日も正午過ぎまで寝ていたというのにまだ眠るななし。寝過ぎて眠いとかどんなだよ、全く。
横からのぞき込むと、二十二(自称)とは思えないほど幼い寝顔。肌は白くて綺麗だし睫毛は長いし、まあ普通の男がこれを見て惚れてしまう気持ちも分からなくは、無い。

「無防備だねえ。俺が絶対に襲わないとでも思ってんのか」

そっと髪の毛に触れると、俺のものとは全く違う触り心地。柔らかくて、指で梳いても絡まるどころか指が抜けていく。

「ななし」
「・・・・」
「・・・はぁ」

小さく呼んでみたが起きる気配はない。なのでその肩に手をかけて軽く揺すってみる。

「ほら、起きて。外行くんじゃないの?」
「・・・・」
「ったく、寝起きの悪さはサスケ以上だな。・・・・ななし!」

耳元ででかい声で叫んでやったら、びくりと体を震わせてななしの目が開いた。

「あー・・・・・朝?」
「いや、三時だから。外行くんじゃないの?」
「行く」
「じゃあさっさと起きて準備しろ。俺も着替えてくるから」

「んー」とまだ眠そうに返事をしながらも、準備を始めたななし。俺も手裏剣ホルダーを取りに寝室へと向かった。

「あ、お前って今までもこんなだった?」
「んー、こんなって?」
「普通に男の前で寝てたの、ってことだけど」
「ああ、まあ。というかその方が多かったかも」
「・・・・・そ」

そう返した自分の声が思ったよりも低くて自分自身で驚いた。ななしも不思議そうな顔をしている。


パシテアの居候生活

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