先輩 | ナノ


昨日の放課後、山崎くんに言われたこと。
明日は各学年代表集まってミーティングがあるから絶対出席。と。

「うがあ!代表なんて面倒くさい!」
「何、なな部長になったの?そもそも部活やってたっけ?」
「うん、剣道部。押し付けられた。明日もミーティングだってさ」
「大変ー、まあがんばれ。いいじゃん剣道部、かっこいい先輩がいるだろー」
「わたしかっこいい先輩より平凡な日常が好きだもん。明日姉ちゃんは?」
「模試。てーわけで、勉強するから邪魔、山田部屋もどれ」
「…ぐすん」

それだけ言うと薄情な姉はわたしをポイッと部屋から投げ捨てた。
このまま部屋に戻るのも癪なので、ここに嫌がらせのように滞在してやろうかと思ったけど…クソウ、廊下寒いな。

(部屋戻ろう…)

ちゃららんっちゃっ

「あ、メール」

部屋へと向かう廊下に着信音が鳴り響き、パカッと画面を開くと新着一件



Time/2xxx/ ○×/△○ 21:38
From/やっちゃん
subj/(-ω-)
--------------------------
1年部長ってどゆことだ!

---END---


「何であいつ知ってんだアアアア!今日休んだくせにイイイ」

慌てて返信した。あわよくば明日のミーティング変わってもらおう、そう思って。



Time/2xxx/ ○×/△○ 21:41
To/やっちゃん
subj/(-ω-)Re2:
--------------------------
もう全てがやるせないです\
(^O^)/

---END---



って送ったら返信はきませんでした。
何がダメだったのかは分かりません。ついでに廊下が寒いです。

「…うん、もう寝よう。それがいい」

只今、午後九時半。わたしは部屋に入るとそのまま布団に潜り込み眠りについた。
明日、嵐とか来ないかな…。


* * * *


ジリリリリ

ガタンッ


「…何で目覚まし7時にセットした自分…!」

今日土曜日イイイ!そう思いながらベッドの上でゴロンゴロンと転がっていたら、目覚ましで思い切り頭を打った。ぎゃあああ、痛い、痛い!

「うっ…」

朝から何であたしは泣いてるんだろう。いや、泣いてないけど泣きたい気分ていうか、泣いてる気分みたいな。
全く、あたしは変なところで真面目だ。部長だって押し付けられたんだから別にやる必要なんてない、ない、うん。
だけどミーティング行った方がいいのかと迷ってる。

(このままだと山崎くんと土方先輩の思うツボだ…!)



「…で、何であたしは制服着て街にいるんだ」

いつの間にか、街をブラブラと彷徨い歩いている自分。
たぶん本能か何かで外へ出たんだろうと思う。…生真面目ッ!
携帯を見れば、八時四十分。いつの間にか時間は流れていたことに驚きつつ、何か朝御飯が食べれるところを探すことにした。

「よく考えたらあたしミーティングの時間知らないや。山崎くんめ、…そうだな、山崎くんのせいにして今日は休もう」

そう考えると、とても心が落ち着いて軽くなった。
この後はまさにフリーダム!入学祝にもらったお金残ってるから服でも買おう!
そしてめちゃくちゃ笑顔であろう顔のまま、あたしはモスへと入った。
店員さんの顔が一瞬ひきつった理由はわからないけど、とりあえずはいいや。

「ライスバーガーのきんぴらごぼうと、オニオンフライとジンジャーエールで」

頼んでから数分とせずに出された熱々のライスバーガーとその他を持ってわたしは空いている席を探した。休日の朝はやっぱり混んでるなあ。と思いながらきょろきょろと店内を見渡すと窓側に一つ席が空いているのを発見した。

「ラッキー!じゃあ早速いただきまーす」

右にはバーガー、左にはオニオンフライの二刀流でわたしはあっという間にこれらを平らげた。
満腹になったお腹を押さえて、チューっとストローを吸い外を見ると、社会人らしき人がたくさん通っていく。

(大変そうだ、営業の人かな…)

チュポンッとストローを放して、再び時間を確認すると、十時十五分前というところだった。

「さーて、何をするか…」

ライスバーガーたちを運んでもらった時のトレーにゴミやカップを乗せてから、あたしは立ち上がり店を出た。確かモスは店員さんが片付けてくれるはず。で、街へ出たはいいけど、結局どこに行きたいのはわからない。
そこでわたしは、木の棒を倒して行き先を決めることにした。

「さあ!今日一日のあたしの運命、どーこだ!」

パタンと棒が右へと倒れる。よし、右か、右な!と思いいざ足を踏み出そうとした時その先に見えたもの。

「木イイイ!右に倒れてんじゃねえええ!」

思わず叫んでしまったあたしの先に見えたのは、沖田先輩。
ばっちり目は合いました。

さあ、どうしよう。

とりあえずその場所とは反対方向に向かって走ったわたし。朝から歩道を全力疾走する女子高生を人はどう思うだろうか。
いや、まあ、気にしていられない…。

(あれ?でもちょっと待てよ)

今、沖田先輩があそこにいたってことはミーティング無いんじゃ…。
だって今の時間じゃ、ミーティング終わるには早すぎる。

「や、山崎めええッ!適当なことをオオ!」

その後のわたしは怒りに身を任すままに、服を三着も買ってしまいました。あれ?作文?



「あー、やっと肩の荷が下りたよ全く。・・・・って、あれ?着信入ってるし・・・って十五件!」


Time/2xxx/ ○×/△○ 8:56
From/xxxxxx
subj/山崎
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お前さっさと学校来い本気で
来いじゃないと俺が殺される
十分以内に来い絶対
山崎
----END-----


「何じゃこりゃああああ」

句読点入れろよ!
と思わずわたしは叫んだ。


* * * *


「ちーす、おはようございまさぁ」
「テメッ、総悟おはようじゃねえよ!何時間遅刻だと思ってんだアアア」
あり?確か十一時時集合じゃ…」
「八時だアアアア!」

まったく、土方コノヤローはうるせえなあ、と言いながら席につく沖田に、隣にいた志村妙はにこやかに訊ねた。

「ねえ沖田くん、あなた1年の女子部長の…山田さん?かしら。見なかった?」
「…山田?」
「あの校門で会ったヤツだよ。ヤツもまだ来てねーんだ」
「ハッ、どうせ忘れて男とでも遊んでるアルネ」
「まあ、どちらにしても呼び出しは確定ね、フフフ」
「そんな、姉上物騒な…!」
「まあとりあえずミーティング始めるか、ガハハハハハ」

(…確か、モスの前で棒投げてた女、山田だったような…)

そうしてミーティングは始まった。

「(山田さん何してんだよ……このままじゃ後で副長に…殴られるな。俺が)」

この後、本当に副長に殴られた。
ちなみに山田さんはミーティングに来なかったどころか俺への返信もしなかった。
……明日、あいつの靴に画鋲入れておこう。





※補足
部長→近藤、副長→土方
2年男子代表→沖田
2年女子代表→妙
1年男子代表→山崎
1年女子代表→山田

新八と神楽はついてきた、みたいな感じで。
一応みんな2年生と1年生。

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