はぁ…と息をはくと、視界が白い煙で埋まる。すっかり冬になったなあ、とルゥは感じながら、海沿いの道を歩く。船の停泊所につき、周りを見渡す。どうやらお目当ての船は、まだ帰ってきていないようだった。防寒具をしっかりと身につけて来ているが、海の近くはやはり寒い。一度近くの店にでも入って、時間を改めてこようかと悩むも、会いたいと逸る気持ちを抑えきれずにいた。ここで待とう。そう決めて、近くの岩場に腰を下ろした。

「海のすぐそばでこんなにも寒いのに、海の上は大丈夫かな。」

「大丈夫だったよ。」

「えっ?」

後ろから聞き覚えのある声がして、ルゥは振り返る。そこには待っていた人物が立っていた。

「アクアさん!」

「ただいま、ルゥ。」

「えっと…あの、おかえりなさい。」

独り言を聞かれたことが少し恥ずかしくて、ルゥは言葉に詰まりながらも返事をする。アクアはルゥに少し微笑みながら、手を引いた。

「今日はこっちに船を停めてある。」

「だから、後ろから来たんですね。船がないのにアクアさんがいたから、すごくびっくりしたんですよ。」

「ふふ、知ってる。振り返ったときの顔が驚いたときの顔だった。」

驚いたこともしっかりと気づかれていて、ルゥは顔を赤くした。また赤くなった、とアクアはルゥの頬を指で少しついた。

「言わないでください。恥ずかしいんです。」

視線を逸らしながら語るルゥにアクアは何も恥ずかしがることはないのに、と首をかしげる。顔を赤くして小さな体を更に小さくしているのは、とても可愛いと感じる。しかし、それを口に出すと、会話が成り立たないほどルゥは動揺するだろうと思い、自身の胸の内にとどめた。じっと見つめるアクアの視線に気づき、ルゥは繋いでいた手を少し引く。

「アクアさん?どうかしましたか?」

「…鼻が真っ赤だなって思って。」

そう言ってアクアはルゥの鼻をつまんだ。予想もつかなかったその行動を、ルゥはふみゅっと声を出し、受け止めた。変な声。と吹き出し、アクアは再び歩き出した。

「アクアさん!」


波の音を聞きながら
(少し怒ったような声と共に歩く数分間)





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