良心は死亡寸前だった。目の前に見える首筋に顔を埋めて、それから押し倒して、脱がして、舐めて、挿れて、みたいな。頭の悪い一連の流れが脳内に妄想と想像の合間という形で炸裂する。ビビビ、と俺を犯すその正体はすこし目を離した隙に眠り出した緑間先生にある。上等そうなシャツを纏った胸板が上下している。瞼を縁取る睫毛が長くて、とてもキレイだった。俺はいまにも飛び出していきそうな野性的なそれを抑える為に深呼吸する。ふう、ひい、襲いたい。馬鹿か。脳内の自問自答ほど寂しいものはない。机に散らかった勉強道具をしまい込みながら唾も呑み込む。ソファに座る緑間を下から見上げると、物凄くいいアングルだった。予想外。眼福。今日何度目かも分からない。ここまでいくと欲だってもう止まらなくなってきた。すこしだけ、すこしだけ。そう唱えながら緑間に手を伸ばす。その白い肌も、瞼の裏のキレイな色をした眼球も、淡い唇も、柔らかそうな髪も。すべてが誘惑してくるみたいで怖かった。妙な恐怖感はあたかもそこにあるのが当然みたいな顔をする。
誘惑が当然なら、この手を伸ばそうとする自分の欲だって必然だろう。
いい加減で、しかも自分勝手。まるで子供みたいだなあ、と信じられないくらい自分が惨めになった。伸ばした腕を引っ込めかけて、やはりそっとその指先に触れた。
ビクリと緑間の肩が揺れて焦燥が心臓を締め付ける。喉の奥が引き攣るのを抑え込む。自分の心臓の音で緑間が目覚めてしまうかもしれないと思って動けなくなるのに、緑間はそれ以降動かなくて。つまり杞憂。ふう、と深く息を吐いて、吸って。触れたままの指先から離れた。たったそれだけの、一方的な触れ合いで満足してしまう。
ふっと視線を外せばスクバの奥で息を殺す煙草の無機質な顔が覗いていた。さっきよりずっと焦ってそれを更に奥へ奥へ突っ込んだ。どっと汗が出て、信じれらないくらいに早くなる息の荒さに自分を笑う。
相変わらず汚い生き方しかできないなあ、なんて。ちゅうがくせーみたいな考え方で口元を歪ませた。


タイトル:深爪



短い…かなあ。
寝てしまった緑間せんせと非行少年高尾くんのピュアッピュアなお話でした。(なんか違う)
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