※高尾がアーティスト?さんで、緑間が女の子
※じんわり年齢操作





ツアーから帰ってきてそのまま事務所に顔を出し、最終的にいろんなものから解放されたのは深夜の2時だった。マンションへ向かう道路の真ん中を歩きながら「会いてえなぁ」としみじみ呟く。なんだかんだお互い忙しくて1月くらいずっと会ってないんじゃないか。そう思うとお腹の奥のほうが心臓と一緒にぎゅうぎゅう苦しくなった。携帯を見る。時刻は深夜2時47分。普通に考えて規則正しい生活を心がけている彼女は寝ている時間だ。会えるわけない。携帯もたぶん切っている。けれどなんとなく、今日は諦められなかった。

『会いたい』

それだけ書いてメールを送った。数秒もしないうちに苦笑する。俺こんな短いメール送ったことないだろ。小さく息を吐き出す。冷たい空気に触れている皮膚がぴりぴりした。もっと厚着してくればよかったと、自分が来ている薄手のカーディガンの袖を伸ばす。指先をきつく握ったとき、唐突に携帯が音を立てた。静けさのある夜の住宅街でやけに目立つその音に思わず背筋を伸ばして、そして急いで携帯を耳に当てる。聞こえた声は俺のそれより焦っていた。

『たっ、かお、か…』
「…ごめん、起こした?」
『…別に、お前の為に起きていたわけではない。すこしレポートに手間取っていただけだ』

思わず頬が緩む。無意識に優しい声が出た。「そっか。お疲れ」『お前もな』真ちゃんが小さく笑ったのが分かった。むず痒いような、愛しくて仕方のないこの感じがたまらなく俺を急かす。早く、会いたいって。

『ツアーは、無事成功か』
「うん。おかげさまで」
『そうか。よかった。体調は?』
「全然。あ、でもちょっと充電しなきゃいけないことがあって」
『? なにを』
「真ちゃんを」

なーんてな。いつも通りに笑った。会いたいけど、でも真ちゃんだって眠い筈だし。困らせたくはない。また他の日に会えれば。そう思って「真ちゃんいつ空いて」そう言ったところで緑間が『待っていろ』と言って電話を切った。……待っていろ?
俺はその意図を悟ってジーンズの後ろに携帯を突っ込んだ。地面を蹴り上げると全力疾走を始める。おいおい真ちゃん、ちょっとそれ、俺より唐突過ぎるんじゃないの!?
頬を撫でる冷たい風なんて一切気にならないくらい、俺は全身全霊で走っていた。喉の奥で弾んだ息が聞こえる。



自分の家であるマンションを通り過ぎてそれでもまだ走る。ひゅうひゅうと喉がいい音を立てていた。うそ、実際は結構つらい音。俺は暗い道の中、ぼやけた街灯を頼りに視線と脚を動かした。

「…あっ」

思わず声をあげる。反対方向から走ってくる人影。白い肌が街灯しかない空間でやけに浮いて見えた。分かりやすい。俺は近所迷惑とか、いろいろ頭を過ったけどシカトすることにして「真ちゃん!!!」出来うる限りデカイ声で叫んだ。向かいにいた彼女は一瞬驚いたのか動きを止めて、それからゆっくりと歩き出した。手を振りながら俺も速度を落としつつ、それでも気持ち早足で距離を詰める。
距離が縮まって、そっと手を伸ばしてみる。真ちゃんは眉をぴくっと動かしてから、俺の視線を気にしながら細い指先を絡ませてくれた。ひとより少し低い体温は走って熱くなった俺には丁度いい心地よさで、無意識にぎゅっとしていた。彼女の肩が僅かに跳ねるのを見逃さない。あ、やべ。嫌だったかな。汗ばんでたかも。「真ちゃん、あー、手繋ぐの、嫌だった? 汗ばんでた?」「…高尾」真ちゃんは俺のそれには応えず顔をこっちに向けた。

「…おかえり」

ぎゅ、と握り返された手が愛しくて俺は上がる体温を抑えられずにその場にしゃがみ込んだ。「ただいま」絞り出すようにやっと出た俺の声に真ちゃんが小さく笑った。


▼△

文章に描き切れなかったふたりの服装についてちょっと補足を。わたしに全くと言っていいほどオサレなセンスがないので、あんまり言うと格好悪くなってしまうとか思うのですこしだけ。
高尾はカーディガンを着ています。これは取り敢えず描写にも出しましたが、すこし大きめでだるゆるっとした感じの。オサレなジーンズもあって、取り敢えずカジュアルです。
緑間は部屋着です、時間が深夜3時近いので。邪道かもしれないんですけど、緑間がスウェットとか着てたら萌え禿ます。上は淡い色合いのパーカーとか。髪は横で結んでたり、または結んでなかったり。今回は結んでます。横で、うなじが高尾をきゅんきゅんさせます。書いてないけれど。

誰かわたしにオサレがなんたるかを教えてくれさい。




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