※卒業式の後


「緑間、」
ずっと伝えたいことがあった。伝えたい、て。思ってたけど、でも言ってしまったらそれはすべての終わりを示しているから。だから1年のときに芽生え花開いたその思いを俺はずっとずっと、この卒業式の日まで隠し通してきた。誰にも見つからないように繊細な糸で包んできた、何重にも何万重にも。俺とお前の高校生活がぜんぶさよならする日に、思い出になってしまう日に。俺のこの思いも終わらしてください、てね。それだけ。だから、ちょっと笑って見下してそれで、いいから。いいと、思ってるから。大丈夫だから。泣かないから。だから、だから。

「すきだった、ずっと」

緑間の目が大きく見開かれる。1年のときよりまたすこし伸びた身長、広くなった肩幅、でも変わらない指通しのいいキレイな髪。冷たい春風がふたりだけの世界を作り出す。だれの声も聞こえないいつも通りの帰り道。胸に咲いた造花が不安げに俺を見上げていた。そんな目で見なくても、真ちゃんがいる前だ、泣かねえよ。唇を噛む。けれど脳ミソは解けと言って俺の口から要らないことまで導き出す。駄目だ駄目だ、溢れちゃ駄目だって。ば。待って。

「ずっと、ずっとすきだった。いまも、ほんとはすきだけど、でも」
「高尾」

緑間の爪先が動いた。脚を踏み出して俺に近づく。反射で下を向いていた視線を緑間に合わせる。この身長差による距離感が妙にすきだった。いや、これからもたぶん、すきなんだろうな。曖昧に寂しくなる。心臓がきゅるきゅる音を立てる。緑間が俺に手を伸ばしているのが見えた。予想外の行動に今度は俺が目を見開く番だった。

「は…」
「俺もすきだ」

抱き締められたと分かったのは自分の背中に回っている緑間の指先が震えているのを感じてからだった。どうやら俺たちは離れる必要などないらしい。その代わり溢れる思いをもう俺は隠さないことにした。




この後同棲する話があります。主に脊髄の脳ミソの中に。
最初は高緑予定だったんですが、おかしいな、なぜか緑高に見えるマジック。いやもうだから、最終的にリバってことにしてみます。ぼやぼやしててごめんなさい



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