※高尾がバスケ部に入ってなく、ただ普通に学生で、緑間のことは高校に入ってから同じクラスてことで知ったぜ、みたいな。ある意味パロ?




夕焼けに濡れた深緑がキレイだった。
はじめて、ひとをキレイだと思った。
それが、理由だった。

緑間真太郎はクラスの中で浮いていたけれど、それなりにクラスメートから信頼もあるし嫌われてはいない。それを俺は知っている。寧ろ俺がそう仕向けた。会話の端々に緑間っていいやつなんだぜ、とかそんな適当なことを織り交ぜたのだ。俺自身緑間のことなどきっと彼のキレイな爪の先ほども知らないのだけれど、真摯な態度だとか勉強や部活に打ち込む姿勢だとかを見ていると、どうしても奴が悪いものには見えなかった。だから、これで合っていると言いようのない自信は現在進行形で有る。緑間のことを、誰にも嫌って欲しくない。から、俺は彼がクラスに馴染むように特殊な空気を自分の口から吐き出し、作り出す。俺は自分の立ち位置を分かっているつもり、だから。

「お前は俺のなにを、そんなに知っている」

真っ直ぐな視線はキライだ、だれからのものも、平等に。すべてを見透かしてやると言わんばかりのそれに、うそで塗り固めた自分が崩れてしまいそうになる。自分が自分でなくなる場所に他人が指を突っ込んできているという感覚は不快以外のなにものでもない、はずなのだけれど、こんにちの俺はオカシイラシイ。緑間から与えられるものならばなんでも欲している。例えそれが自分に向けられた罵倒だと、しても。
にへらり。笑って見せる。巧く笑えない。くそ。唇の震えが収まらないのは、彼が俺に声をかけてくれたという歓喜からか、それとも恐怖からか。

「…なにも、分かんない、よ」

駄目だ。目が霞んでなにも見えない。指先まで震えている。怖い、怖、い。

「……、高尾」

息が詰まる感覚。思わず目を見開く。声を出そうとして、声帯が仕事を放棄していることに気付いた。口をぱくぱくさせて母音だけの色の無い言葉を吐き出す。やっと声が出た頃には緑間は俺の両耳をそのキレイな手のひらで覆っていた。
み、どりま…、おまえ、俺の名前、
俺は口を動かすが、緑間はそれには応えずにそっと唇を持ち上げる。音は聞こえないけれど、「ありがとう」と口が動いたのが分かって、心臓の抉れるような甘くて酷い痛みが喉の奥を襲った。夕焼けが教室を覆って、俺はただ変化する空気を嗜んでいた。


タイトル:深爪



つまり何が言いたいかと言うとあれです、こいする高尾は美しい(わけが分からないのだよ)



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