シリーズ番外編 | ナノ


突撃☆家庭訪問:03


カチャン、


そんな楽しい会話を続けて約1時間。
ふと、恵麻さん(お母さんって呼ばれるのいやなんだって)が、手に持っていたカップを机に置いた。
自然と、みんなの視線が恵麻さんに向かう。


「ねえ、千夏? わたし、あなたに聞かなきゃならないことがあるの」


恵麻さんは、ものすごく日本語が上手だ。
青い瞳で、まっすぐわたしのことを見る。
……なん、だろ?


「なんですか・・・?」

「あのね、千夏はその・・・会長なのよね?」

「え、えぇ」


頷くと、恵麻さんはきゅっと唇を噛んだ。
……ちなみに、唯はこの話に入ってこなくなりました。なんとなく、地雷が分かるんだろうね。


「千夏は……唯のこと、どういった対象で見ているの?」

「……え?」

「つまり、会長として愛でているの?」

「……あぁ、」


そこで、納得した。
お仲間だからこそ、恵麻さんは疑念を抱いたんだ。


つまり、わたしが唯とつきあっているのは、かわいい子を傍に置いておきたいためだけではないのかって。
唯を、「彼氏」ではなく、愛玩用として見ているんじゃないかって。


わたしは、首を横に振った。


「いいえ。……もちろん、正直かわいいとは思いますし・・・その、そういう意味でキュンとはしています」

「そう・・・」

「でも、決してそれだけではない……というか、会長職はもうクセみたいなもので・・・」


わたしも、カップを机に置いて、恵麻さんはじめ5人の姉妹に笑いかけた。


「いまは、唯のカッコいいところをたくさん知っています。男らしいところもあるし……男の人として、人生で一番好きだなぁって思ってるんですよ」

「「「「「「……!」」」」」」

「ち、千夏ぁ・・・」


……や、ば。うっかり、ホンネを話しすぎました。
唯は喜んでくれたのか、目をうるませているけど……。


まずかったか・・・! と思って恵麻さん+お姉さま&妹さまに視線をやると……全員、泣いていました☆


「え、ちょ・・・!?」

「うぅ・・・唯ちゃんっ、よかったねぇっ!」

「萌えっ子として意外に、唯に需要があったのね!」

「やだぁ。あたし、涙が止まらないのぉ」

「千夏たんバンザーイ!」

「っ、くっ・・・。本当に、よかったね唯! 美人でおっぱい星人な千夏さんと・・・!」

「千夏姉ちゃん、ありがとうぅー!」

「ありがとう・・・。母ちゃん、姉ちゃん・・・ありがとう!」


……え、なにこの似非感動物語は。








**********


そんなこんなで――。


わたしと唯はいま、唯の部屋に閉じ込められています☆


「……えぇー。なにこれー・・・?」

「ご、ごめんっ! ほんと・・・ごめんっ!!」


唯は、わたしに向かって両手を合わせて頭を下げた。
……本当に、強烈な家族だなぁ・・・。
溺愛パターンでも、悪いほうにいかなくて本当によかったけど・・・。
けど……どんな状況よ、これ。


「なに考えてるんだろう、あいつら・・・」


はあ、と唯がため息をつく。
……たしかに、家族としてはありえないわな。


いまの、状況……。
あの感動秘話のあと、6人は大いに盛り上がり始めた。
「結婚しちゃいなさいよ、あんたたち!」……と。


そして急に、「将来を添い遂げるなら、性の相性はかなり大事な問題になる。ふたりはどうなんだ」なんて探りを入れてきて……。
なにを隠そう、付き合って1か月経った現在、わたしと唯はそこまでいっていない。実は、ベロちゅーまでしか進んでいないのだ。
それを知った6人は……怖かった。


唯に、早くヤっちゃいなさい誰かに盗られたらどうするの! なんてとんでもないことを言いはじめ、唯とわたしを抱えあげて拉致。
ものすごいスピードで階段を駆け上がり、唯の部屋にわたしたちを放り投げた。
挙句、外側から南京錠をかけ、「わたしたち3時間くらい出かけてくるから、早いとこヤんなさい! 千夏ちゃん、夕飯食べていってね。お赤飯炊くから!」なんて言って、本当に車でどこかに出かけてしまった。


……本当にすごいね、生田家。たしかに、唯の言うとおり変なのかもしれないね。


唯は、まさかこんなことになると思っていなかったんだろう。ものすごく、おろおろしている。
うぅー、かわいい。……って、おろ?


「唯、ポケットになにか入ってるよ?」

「……え?」


ふと、気がついた。
唯のお尻のポケットに、なにか入ってる。
なんだろ、……って!


「……コンドーム?」

「ぎゃああっ!!!」


ポケットの中に入っていたのはコンドーム・・・通称ゴムだった。
ゴムの袋には、黒のマッキーで「高校卒業までは避妊しなさい(はぁと)」なんてでかでかと書かれている。


「ご、ごめんっ! 本当・・・ごめん! まさか、こんなことになるなんて・・・」

「……なんで謝るの?」


慌てている唯を横目に、わたしは唯のベッドに向かって歩き出した。
そして、ぼふんと腰掛ける。……あ、ふかふか。


わたしはとっくに・・・唯になら抱かれたいって思うし、お膳立てにのってやろうじゃんって気分になっていた。
1か月、清いお付き合いもよかったし、大事にされている実感が湧いてうれしかったけど、そろそろ……唯と、一歩進んだ関係になりたいなって思ってたところだし。


「っ、千夏・・・」

「……家出る前に、お風呂入ってきてよかった。……唯は?」

「……お、オレも・・・朝、入った」


唯が、こくんと喉を鳴らして、ベッドに近づいてくる。
……唯も、覚悟決めてくれた?


「千夏・・・あのさ、」

「ん・・・?」

「オレ……千夏のこと、ぎゅってしたい、っ」

「……っ、」


かわいい! でも、いまハァハァしちゃだめだぞわたし!!


「千夏・・・。好きだ」

「ん。わたしも好き」


真剣な表情で近づいてくる唯に向かって、右手を伸ばす。
唯は、わたしの手のひらを掴むと、そのままベッドにわたしを押し倒した。






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