シリーズ番外編 | ナノ


3 de 遊園地:07


観覧車を降りたオレたちは、早々に遊園地を出て、帰路についた。
最後の局面だし、ここではちゃんとカップルで隣同士。先頭は紳くんとあずみちゃん、次がオレと奈緒、最後に譲と女王。ジェットコースターの並び方と同じだね。
女王は、オレからのアドバイスを実行に移しているらしく、譲とは人ひとり分の距離を空けている。……なんか、譲が寂しそうに女王を盗み見ているよ。かわいそうだよ。
……テンションに任せて、悪いこと言っちゃったかなぁ。


「……あ! 美姫ちゃん、プリクラあるよう? この間、撮ってみたいって言ってなかった?」

「え!? ……あ、本当ですね! 撮ってみたいです!!」


あずみちゃんが、道すがらにあったゲームセンターを指差して言うと、女王は顔を輝かせて、大きく頷いた。
へえ、女王ってば、プリクラも撮ったことないのかな? 予想以上に箱入りのお嬢様だよね。


「じゃあ、撮っていこうよう。紳、いいよね?」

「……まあ、ここまで来たらな。撮るか」

「いいの? やった!!」


あずみちゃんと早く2人きりになりたいであろう紳くんも、今日1日付きあったのだから、ここで反対の意を唱えることはないらしい。
オレも……まあ、6人っていうのも楽しかったし、反対する気はないよう(あずみちゃん風に)。


「あずみと壱とは撮ったことあるけど、6人なんてきっともうないだろうしね」


奈緒も乗り気らしく、にこにことゲーセンに足を進める。
オレも、紳くんや譲となんて撮ることなかったからなぁ。いい記念だね!


「紳くんはあずみちゃんと撮ったことあるの?」

「ん? ないぞ」

「ないんだ! じゃあ、初プリってやつだね!」


それから、紳くんとあずみちゃんも撮ったことないんだってさ。
でも、紳くんとあずみちゃんのプリクラなんて、プレミアでも付きそうだよね! うちの学校なら、ちょっとした値段で売れそう!


「じゃあ、行こーう?」


あずみちゃんの号令のもと、オレたち6人はゲーセンに足を進めた。








**********


「狭い・・・。紳くんも譲も、でかすぎっ」

「その分、あずみが小さいんだからいいだろう」

「小さくないよう!」

「いや、小さいでしょ」

「・・・でかくて、ごめん」

「ゆずはでかいんじゃないわ! 大きいのよ!」


上から、オレ、紳くん、あずみちゃん、奈緒、譲、女王ね。
一番ツッコミたいのは女王かな。でかいと大きいって、なにが違うんだろう?


「シンプルなのでいいよね? フレームつけると切れちゃいそう・・・」


ここでもしっかり者を演じて、パネルをタッチする奈緒。
もう、可愛い・・・。お姉さんモードのなおなおも、マジ可愛い。


「あずみ、あまりくっつくな。襲うぞ」

「ばっ!! なに言ってるの、こんなところで!」

「……雪平くん、それ冗談に聞こえないからやめて」

「なおなおー、襲うぞ☆」

「うるさい」


理性的なようで、実は誰よりも本能に忠実な紳くんだ。
今日1日、思う存分くっつけなかったフラストレーションからか、狭いプリクラの個室でとんでもない発言をかました。
オレもそれに乗っかってみたけど……。
……うぅ、触れないで。泣いちゃいそう。


「…………美姫さん、なんか怒ってる?」

「え? お、怒ってないわよ?」

「なんか、変・・・」

「変じゃないわ。節度を持った距離を心がけているのよ」


それを聞いた瞬間、譲はまさしく「しょぼーん(´・ω・`)」な表情を見せた。
……なんか、ホントごめん。


「ほらほら、みんなカメラ見て」

「え? カ、カメラってどこ・・・?」

「画面の上の、これ。……ほら! 3、2、1……」


設定が終わったらしく、奈緒がまとまりのないメンバーに声をかける。レンズの位置を解説しながら、奈緒が音声ガイダンスに従ってカウントダウンをしてくれた。


あ。
一応、並び順の説明しておこうかな。
並び順ってほどでもないけど、前列に女性陣、後列に男性陣だよ。
前列右から、あずみちゃん、女王、奈緒。
後列は、紳くん、譲、オレね。


このプリクラ、合計6枚撮れるみたいだね。


1枚目は、みんなちょっときょとんとした顔で写っている。
2枚目は、一応画面を見ている。……あ、オレちょう良い笑顔。
3枚目は、あずみちゃんと奈緒が、中央の女王に寄るようにしてピースしている。
4枚目は、3枚目と同じ構図。だけど、譲がちょっと切なそうな顔してる。
5枚目は、前列の女性陣が肩組んで……うーん、仲良しだなぁ。





――そして迎えた、6枚目。


「っていうか、最後くらい紳も表情変えてよう! 全部無表情じゃん!」

「ゆずもよ」


最後の1枚というところで、あずみちゃんが声をあげた。
それに次いで、女王も譲に声をかける。
うーん。たしかに、普段から表情が出にくいこの2人、ほとんど同じ顔してるんだよね。
後列は、オレだけムダに変顔したり、すげえいい笑顔で写ったりしてる。
これって、微妙に恥ずかしい。


「……美姫さん」

「ああ、分かった。最後だしな」


譲は女王に距離を置かれているのが寂しいのか、ぽつんと女王の名前を呟く。その声を聞いて、女王はうっと言葉を詰まらせてしまった。
それから、紳くんはにやり、とあずみちゃんを見下ろす。……うわぁ、あくどい笑顔。


「……なんか、楽しそうだね」

「そうか? ほら、表情変えてやるから、前見ろ」


それに反応したあずみちゃんの頭をぽんぽんと撫でて、紳くんはレンズを見るように促す。
あずみちゃんは、紳くんの言葉に頷いて、しぶしぶ前を見た。


「はい、最後ね。レンズ見て……」


なおなおのセリフと共に、カウントダウンが始まる。


3・2・1……





「んぅっ!?」

「きゃっ!!」


……レンズ音と、女性2人が小さな悲鳴をあげたのは、同時だった。


声の上がったほうを見ると……





や、やられたっ!!!





紳くんは、あずみちゃんの後頭部に右手をあて、無理やりあずみちゃんを振り向かせている。
そして……言うまでもない。……ちゅーしてやがる。


譲は、女王に構ってもらえず、我慢が切れたんだろう。……早いよ!
とにかく、後ろから覆いかぶさるように女王に抱き着いて、女王の首もとに顔をうずめている。


オレと奈緒? あはー。
ちょう良い笑顔ですけどなにか?


「…………なおなおー!」

「はいはい。写真、全部選んじゃうねー」


うっかりしてたよ。やられたよ。
写真には残らないけど、とりあえず奈緒に抱きついてみた。
奈緒は呆れたような顔をしながらも、それどころじゃないほかの4人に代わって写真の選択を進める。


「んっ、っ・・・は」


おやおやまあまあ。
あずみちゃんの苦しそうな息遣い。
紳くんって、結構常識知らず? 深いちゅーすんじゃねーっ!!
2人がオープンとはいえ、さすがにそれはダメ、絶対!


「……ゆ、ず・・・」

「美姫さん・・・オレ、・・・」


それから、譲と女王もすでに2人の世界に入り込んじゃっている。
譲ってば、ほんのちょっとでも女王の様子がおかしいと、不安になっちゃうんだね。
ごめんね、余計すぎること言っちゃって。


「落書きボックスに移動らしいけど……。並んでる人もいないし、放っておこうか。壱、行こう?」

「はいはーい」


2組のバカップルは放置。
オレと奈緒は、落書きボックスに移動した。


……紳くんの顔に、ひげ書いちゃおーっと!





その後は、ゲーセン前で解散。
プリクラは3等分にして、各ペアに渡しました。


たぶん紳くんは、今日くっつけなかった分を取り返すくらいあずみちゃんを構い倒すんだろうなぁ。
譲と女王も、もしかして今日1歩先に進んじゃったりするかも!?





「奈緒、おつかれ」

「おつかれー。なんか濃い1日だったね」

「うんー。でも、楽しかったね!」

「うん、楽しかったね! 壱、今日、うち寄ってく? たぶん夕飯鍋だよー」

「寄る寄る!」


オレと奈緒はというと、手をつないで自宅までの道を歩きました。
オレたち、今日がんばったよね? 今日くらい勉強はおやすみして、奈緒にご褒美もらっても、ばちはあたらないよね?





こうして、ぐだぐだで濃〜い、トリプルデートは幕を降ろしたのでした!!








******
やっと終了!!
だーっ! 長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!
I3さまにいただいた、トリプルデートのお話でした!!

自分で書いといてなんですが、キャラがうーるさいっ!!←
どんだけ集団行動の出来ない子たちなんだと、泣きそうになりました・・・。

それから、最後のプリクラエピソードはI3さまの強い(?)リクエストによりうまれました!(`・ω・´)





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