3 de 遊園地:03
あれ、なんか幸せそうだぞ。 なんだコイツ! あずみちゃん可愛そうだよ!!
「大丈夫か・・・?」
「ふぅ、ぇ・・・」
ジェットコースターを降りてすぐ、フラフラのあずみちゃん(+譲)を休ませるために、降り場のすぐ近くにあるベンチに腰をおろした。 腰掛ける紳くんに膝枕をしてもらうようなかたちで、心を落ち着けているであろうあずみちゃん。そんなあずみちゃんの髪をなでながら、優しげな目で心配の言葉をかける紳くん。 ちょっと待て。そもそもあずみちゃんこんなんなってるの、紳くんがあずみちゃんで遊び倒したせいだからね!? なのに、なんであずみちゃんも幸せそうな顔しちゃってんの!? 間違ってる、絶対!
「……ぅ、」
「ゆずっ! ゆず!? 死んじゃいやっ!!」
「う、ぁ・・・吐く、」
「ゆずーっ!!!」
「女王、ストップ。ゆすらないで、安静にさせてあげてねー?」
それから、隣のベンチに腰掛けた譲は、額に手を当てて俯いてしまった。そんな譲を心配してのことだろう。女王がガクガクと揺するんだけど……。それ、逆効果。譲吐いちゃうよ。
ということで、女王にペットボトルを手渡して、まっすぐ座るように言う。 それから、ぐらぐらしている譲の肩をとんと押して、紳くんとあずみちゃんのように膝枕の状態にした。
「え!? ……えぇっ!?」
「はいはい、女王暴れないの。譲の安静のためだから。ペットボトル、額に当ててあげてー」
「あ、・・・は、はい」
「それから、紳くんみたいに髪とか撫でてあげたらー?」
「そ、そうねっ!!」
カップルっぽいことに憧れを抱いている女王だ。ちょっと示唆すれば……ね? 譲にも女王にも優しい状況のかんせーいっ。
「…………壱って、意外に面倒見がいいよね」
と。 そんな様子を見ていた奈緒が、ふと声をあげた。 う、おぉっ!!
「なになにっ!? 惚れ直しちゃったかい?」
「そうかも」
「…………っ、!!」
「っ、ちょ・・・!」
聞いた!? なおなお惚れ直しちゃったって!! オレは奈緒にガバッと抱きついて、ぎゅうっと抱きしめた。腕の中で奈緒が身じろぐけど……離さないっ! ダメだこれ。もう我慢できないっ!!
……今すぐどこかに連れ込んで、愛し合っちゃいたいのです!!
「紳くん! そろそろ別行動にしない!?」
「いいぞ」
「譲も、ね?」
「……ん」
ということで、おそらく別行動に同意してくれるであろう紳くんに声をかけると、即頷いてくれた。 譲も、あずみちゃんにばっかり懐く女王に、少しの切なさを感じているんだろう。こくんと頷く。
キタコレ、早く奈緒を連れて……と思ったけれど……。 女子の結束は、どうやら男子陣より固かったらしい。
「やだっ。せっかくだし、みんなで遊ぼうよう」
「ちょ、離して! まだジェットコースターしか乗ってないじゃん!」
「まだあずみ先輩や奈緒先輩と、お話してないもの!!」
あずみちゃんは、紳くんのシャツをぎゅっと握って言うし、奈緒はオレの胸板をバシバシと叩く。女王も、悲しそうな顔であずみちゃんと奈緒に視線を投げた。
……ガッデム!
「美姫さん・・・オレじゃ、や?」
「そんなことないけど……でも、今日は6人がいいの」
下から覗き込むように言う譲に、ちょっと頬を染めながら女王が返す。 ……譲、お前・・・。
「2人じゃ不満か?」
「そ、んなことないけど・・・! せっかくだし……ね?」
それから、ちょっと不機嫌な紳くんを諭すように、あずみちゃんが言葉を並べる。シャツの裾をぎゅっと握りしめるあずみちゃんは、オレが見ても可愛い。それに、あずみちゃんって意外に頑固だから、てこでも譲らないだろう。
「なおなおー。オレ、奈緒と2人きりになりたいよー」
「こんな機会ないんだから、今日くらいいいじゃん。いつも一緒にいるんだし……」
「でも、遊園地・・・」
「子供の頃から、100回以上来てるでしょ? 今日は6人でね」
オレは……ダメだ。 奈緒を説得できる材料がないもん。 「ヤりたいから!」なんて言ったら、絶対怒られるし……。
ということで、男3人の説得も虚しく、6人でのデートはまだまだ続きそうです。
**********
――数時間後。
さまざまなアトラクションに乗って、大満足したオレたち6人は、最後の乗り物になるであろう、観覧車の前で睨み合っていた。 きっかけは、奈緒が出した「せっかくだし、3ペアをじゃんけんで決めない?」というセリフだ。 このままだと当然のようにカップルで3組になることに、おもしろみを感じなかったんだろう。 その意見に頷いたあずみちゃんと女王も、同じ気持ちなんだよね。
気持ちは分かる。分かるけど……!!
女性陣は、「せっかくだし・・・」とか「こんな機会ないし・・・」という意思で動いている。でも、実は男のほうがロマンチストなわけで、最後の観覧車くらいは彼女と……って思うわけだよ。 でも、たぶん女性陣の3人は、今日は彼氏といちゃつく日ではないと割り切っているんだろう。すでにペア決めじゃんけんに積極的だ。
「じゃあ、ぐーちょきぱーで別れましょうねー?」
「……あずみ、俺」
「雪平くんストーップ! 何出すか伝えようとしないの。結果決まっちゃうでしょ?」
「なおなお! オレは、」
「チャラ男先輩、ダメ。公平に行きましょうよ。ゆずを見習ってください」
「……美姫さん・・・」
女王のばかーっ!! っていうか、譲も納得してないよ、絶対!
観覧車の前で、円陣くんでじゃんけんしようとしているオレたちは、はたから見ると異様な光景なんだろうなぁ。 今日1日、いろんな視線は浴びてきたけど……今はまた、ちょっと違った視線を感じる。 つまり、「何してんだこいつら」的な視線ね。
「じゃあ、行きますよーう? せーのっ、『ぐーちょきぱーで、分かれましょうっ♪』」
あずみちゃんの掛け声と共に、一斉に3種類の手が出される。
「……チッ」
「はりゃりゃ」
「っ、・・・くっ」
「見事に分かれたね」
「……(´・ω・`)」
「あら、」
――そんな感じで、3組のペアは決まっちまいました。
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