「もっと、聞きたいこと……?」
首を傾げると、奈緒がこくんと頷いた。
オレは、うーんと唸る。 聞きたいこと・・・聞きたいこと……。
「奈緒に、言いたいことはいっぱいあるけど……」
「んー。そしたら、全部言ってみ?」
「えっと、まずはごめ、」
「ごめんは、もういいってば」
いや、一応ね。 奈緒への愛おしさとか、いろいろあるけど……。 やっぱり、自分が鈍すぎたことで奈緒を傷つけたって言うのは頭から離れないんですよ。
「ごめん、以外だと……」
「うん、」
「まず、奈緒は可愛すぎると思う。本当、やだ。オレだけが分かるかわいさとかじゃないんだもん。全人類が惚れこむレベルの可愛さだよね」
「……は?」
「あと、17年間・・・18年?オレ、よく奈緒に手出さなかったよね。好きとか言うレベルじゃない。こーんなに頭ん中奈緒でいっぱいなのに、欲情しなかったとか……。まあ、オレこの世に男と女と『奈緒』っていう性別がいるような錯覚さえ覚えてたから、奈緒を抱くってことを考えもしなかったんだけど……」
「……えっと、ちょっと意味が分からないんだけど・・・」
「性別がね、男と女と奈緒があるんじゃないかって思ってたの。隣にいてくれればいいと思ってたんですよ。まあ、1回エッチしたら、もうダメだったけど。だって奈緒、可愛すぎるんだもん!おかげでほかの女相手に勃たなくなるし、病気にでもなったのかと思った」
「……ふーん、」
「うあっ!!今の、大失言でしたごめんなさい・・・。とにかく、奈緒は可愛すぎます、まるっ!……そんでね、えっと・・・この間奈緒の家でエッチしたとき、おばちゃんいたのに挿れたりしてごめんね。ムラムラが収まらなくなっちゃって……。あと、バックでシたのもごめんなさい。なんか、征服感って言うか……奈緒のこと手に入れたって錯覚できたのが嬉しくて……。って、また謝っちゃったね」
「…………変態、」
「だと思うんだよねー。奈緒が痛がったりしてるの、ちょっと可愛いと思っちゃう自分がいたりなんかするし。あとさ、奈緒って、快感に弱いよね?すぐ涙出ちゃうし……。ああやって、泣きながら喘ぐの、すっごい可愛い。そんで、それが恥ずかしいんだろうけど、顔を手のひらで覆っちゃうのも、マジ可愛い。引き剥がした瞬間に、真っ赤になるのも、やばいと思う。でも、舌出すのはなしだよ!キスしたくて、仕方なくなるでしょ?いっつもほっぺにちゅうで我慢してたんだよ!!あとね、奈緒ってお酒飲むとエロくなるんだよお?知ってた?だから、オレ以外の前で飲んじゃダメー。飲むなら、オレと2人きりのときにしてね?すぐ奈緒をぎゅってできるでしょ?あとは……まあ、あずみちゃんとかおかんの前でもいいけど……キス魔にだけはならないでね?女同士とは言っても、オレたぶんイラッとくる。お前が言うなって話しだけど」
弾丸トーク。 息継ぎのことも考えないで、思いついたことをぽんぽん吐いてみた。 奈緒は、途中でツッコミを入れたり、冷ややかな視線を送ってきたけど、後半は真っ赤になってしまった。 うう・・・可愛い。
「あと……」
まあ、今までのはただ思ったことを口にしただけだから……。 本当に伝えたいことは、こんな変態的なことじゃない。 ……これが本当に伝えたいことだったら、オレ人格おかしいよ。
奈緒との関係を「ちゃんとする」って決めた以上、必ず言わなきゃならないこと。
オレと奈緒は、ベッドに寝転んで会話をしていたんだけど、オレは上半身を起こして、ベッドに正座した。 ……うん、真っ裸だよ。 やや勃ち上がった息子さんが、こんにちはしてるよ。 でも、オレ真剣だからね。茶化しちゃダメだよ。
奈緒も、オレに倣ってふとんの上に正座する。 ……でも、さすがに恥ずかしいんだろう。タオルケットを体に巻きつけた。 それ、大正解。だって、欲情しちゃうもん。
「奈緒・・・」
「……っ、はい」
真剣な顔で奈緒を見ると、奈緒はちょっと声を震わせながら、返事をした。
「オレね、奈緒のことになると、心が黒くなったりもするけど……」
「うん、」
「でも……奈緒のこと、世界で一番大好きな自信があります」
「……っ、うん・・・」
タオルケット越しに、奈緒の肩に手を置いた。 それから、はあっと息を吐く。
「大事に、する。絶対、奈緒以外を見ないって誓う。……っていうか、昔もこれからも、オレは奈緒以外には特別な感情は抱けない」
もう、不誠実な態度は取らない。
「奈緒のこと・・・言葉では言い表せないくらい、大好きです。絶対、一緒に幸せになりたい。……オレと、付き合ってください」
そう言ったら・・・奈緒は、目に涙を溜めて、破顔した。
「……はいっ。あたしも、壱が大好きです!」
返事は、分かってた。 でも、聞いた瞬間、心臓がきゅうって音を立てた。
たぶん、オレと奈緒の関係って、これからもほとんど変わらないと思うんだ。 だって、これまでも毎日会っていたし、世間の恋人以上に親密な関係だった。 エッチもしてたし、ね。 あ。でも、これからはキスだってしまくるし……それに、押さえていたオレの嫉妬心は爆発しちゃうかもか。 ……あれ、結構変わるかな。
まあ、細かいことは置いておいて……。 でもね、たとえ関係がほとんど変わらなくても、声に出して想いを再認識することが、たぶんすっごく大事なんだよね。 オレ、奈緒のこと分かってたつもりだけど、分かってないことのほうが多かったし。
「……あ、」
「ん?」
タオルケット越しに抱き合っていると、腕の中の奈緒が小さく声を上げた。 ……なんだろう?
「採点、言ってなかったね」
「……採点、」
そういや、オレ0点になったんだ……。
ちょっと神妙な気分で奈緒を見ていると、目の前の奈緒はにこりと笑った。 それから……
ちゅっ、
軽い、リップ音。 唇に、奈緒の唇が当たる。 触れただけの……でも、大事な、キス。
「100点だよっ、ばーか!!」
ぱあって花が咲くみたいに笑う奈緒。 ……うん、オレ・・・この笑顔が見たかったんだ。 最近は、泣かせてばっかりで、全然見られなかった。
奈緒の肩を引き寄せて、今度はオレからキスをした。 ついばむようなキスを繰り返していると、奈緒が微笑みながらオレの首に手を回す。
100点の関係って、こんなに幸せなんだね。 怖がること、なかったんだ。
「壱、大好きだよ・・・」
幸せそうにまどろむ奈緒。 たぶん、オレも同じような顔してるんだろうな。 だって、すげえ幸せだもん。
反芻するのは、あのときの奈緒の言葉。 挑戦的にオレを見上げて言った、採点ゲームの始まりのセリフ。 あのときの奈緒の覚悟が、今のオレなら分かる。
100点になったら、壱にベタってくっついて、“トクベツ”になりたいってわがまま言って、なんでも愛の言葉を言ってあげる。
「大好きだよ、壱」
End. ⇒次のページに、壱&奈緒登場のあとがきがあります。よろしければ・・・
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