Let's 採点 LOVE | ナノ


(06)


「や、やだ・・・やだ……」


どうしたらいいか分かんなくて……。
オレは、周囲の目も気にしないで、床に座り込んだまま泣き続けた。


完全に、キャラ崩壊。
たぶん、周りもドン引きだろうなーとか思いつつ、涙は止まんなくて……。


「奈緒・・・、……わっ!」


嗚咽を漏らしながら泣いていると、急に腕をぐいっと引っ張られた。
オレを引っ張り上げたのは……紳くんだった。
紳くんの隣には、唇を噛んで、オレを睨むようにしてみているあずみちゃん。
……なんか、めちゃくちゃ怒ってる・・・?


「紳、く・・・っ……」

「こっち、来い」


ぐいっ、と紳くんに腕を引かれて、オレはよろけるように歩き出した。
引きずられるようにして歩いていると、ふ、と視界に、譲が映る。


「い、壱・・・紳……?」

「あぁ、悪い。……ちょっと、抜けるな?」


おろおろとする譲に、紳くんがにこりと笑いかけた。
譲は、びっくりしているようだったけど、こくんと頷いた。


「え、あ・・・壱?」

「う、ぅえ・・・な、に?」


オレは、情けないことにまだ泣き続けていて……。
譲に声をかけられて、泣きながら視線を上げた。


「……大事な、子は・・・死んでも、離しちゃダメだ」

「……へ?」


譲は、そう言うと、自分のセリフが恥ずかしかったのか、赤くなって俯いた。
その言葉を聞いた瞬間、オレと紳くんの後ろを歩いていたあずみちゃんが、こくんこくんと何度もうなずくのが見える。


「壱、がんばれ・・・」

「う、うん・・・」


今のオレ、何を頑張ればいいのかちょっと分からないけど……。
でも、譲の気持ちが嬉しくて、こくんと頷いておく。
それを見て、紳くんがふっと口角を上げた。


「行くぞ」


そして、小さく手を振る譲と、ガヤガヤとうるさいクラスメイトを置いて、オレたちは体育館を後にした。









紳くんに引きずられながら歩くこと数分。
しばらく歩くと、紳くんは急に歩を止めた。
そして、空き教室にオレを放り込む。


「……お前、何を考えているんだ?」


そして、誰もいないのを確認すると、空いていた椅子に腰掛けて、オレに問いかけた。
あずみちゃんも、ちょっとおどおどしながらその横に座る。


「な、にを・・・?」

「お前の行動の、意味が分からん。……大澤のことが、好きなんだろう?なぜ、他の女に手を出す?」

「す、好きじゃないもん!」

「は?」

「紳くんの好きって、恋愛感情って意味でしょ!?」


呆気に取られたようにオレを見る紳くんと、驚いたようにオレを見るあずみちゃん。


オレは、もうどうしたらいいのか分かんなくなっていて……。
自分の中で、感情を処理することができなかった。





「オレ、奈緒のこと・・・好きとか、そういうレベルじゃないっ……!大切なんだ。大事すぎて……壊すのが、怖いんだよ!!」


だから、紳くんとあずみちゃんに、いろいろぶちまけることにした。
こんなこと言ったら、引かれちゃうかもしれない。
でも、オレにとって一番大事な子は、もうオレの元を去っていて……。
自分の中で処理できないこの感情を、とにかくぶちまけてしまおうと思ったんだ。


紳くんは、オレの言葉を聞いて、眉根を寄せた。





奈緒のこと、すっごく大切に思ってること。
誰よりも幸せになってほしいこと。
抱きしめて、どろどろに甘やかしたい気持ちになること。
でも、逆に壊してしまいたくもなるってこと。
ほかの男に触られるのが、ムカツクってこと。
教生、殺してやろうかと思ったこと。
奈緒に「あたしだけを見て」って言われて、嬉しかったけど怖かったこと(酔って奈緒が言ったって言ったら、あずみちゃんがびっくりしてた)。
奈緒以外、手を出せなくなりそうだから、一回気持ちに蓋をしようと思ってアケミに手を出したこと。
奈緒がオレの元からいなくなったら……もう、すべてを失ったような気分になったこと。





全部、全部話した。
そしたら、紳くんは呆れたように眉を寄せて、あずみちゃんは頬を膨らませた。


「恋愛感情って……紳くんとあずみちゃんみたいなのでしょ!?オレ、そんなんじゃないっ!!」


隣に腰掛けてオレの話を聞く紳くんとあずみちゃん。
オレが持っている感情は……こんな、柔らかくて甘いものじゃない。


「真っ黒なんだ、オレ!奈緒のこと、大切なのに・・・!オレがこんな風に奈緒を想って、万が一奈緒がオレのものになったら……オレ、奈緒のことどうするか分かんない!!奈緒が、幸せになれない!!」


奈緒のことを考えると、また涙が出てくる。
オレは、泣きながら言葉を発した。


「……幸せ?」





と。
急に、目の前で低い声が聞こえる。
何かと思って顔を上げたら、唇をぎゅっと噛んだあずみちゃんが、オレのこと睨んでた。






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