Let's 採点 LOVE | ナノ


(04)


「な、え・・・あ……」


パニック。
頭、回んない。


携帯を持つ手が、ぶるぶる震えた。
……奈緒・・・どこかで、見てたってこと……?


『きょ、う・・・千夏とあずみと……夏休みの旅行計画立てようと思ってね。街、出てたの……』

「あ・・・な、奈緒……」


……うそ。
アケミと、ホテル入るとこ……見られてた、の?


『……今、電話平気?』

「え・・・あの……奈緒、オレ……」

『平気?』

「う、うん……」


奈緒の声は……ちょっと、震えてた。
そんでもって、冷たい。
オレは、その声にも若干パニックを起こしちゃって……。そんなオレの焦りの上から、奈緒が言葉を被せる。


『……ごめんね?女の子待たせちゃって……。すぐ・・・終わるから』

「……え?」


奈緒の言葉に、びくりと震える。


……聞いちゃ、ダメな気がする。
怖い……。


「な、奈緒・・・!待って。話なら……オレ、奈緒の家行くから!」


時間が、欲しかったんだ。
整理する時間が欲しかった。
言い訳を考える時間が……欲しかった。


何を言われるか、薄々分かっていたから。
だって……心臓が、破裂しそうだもん。
まだ、何を言われたわけでもないのに……涙が、止まんないんだもん。


『……ううん。電話で、大丈夫。……たいしたことじゃないし』

「待って・・・やだ!」


たいしたことじゃないわけ、ない。


「奈緒・・・お願い。あとで、家に行くから。待って……」

『……あのね、採点・・・なんだけど……』

「ま、待って!お願いだから!!」

『壱……今まで、ありがとね』





ごとん。


心の中で、何かが落ちた音がした。





「あ・・・やだ……ごめ、・・・奈緒……」







『0点。……さ、よな・・・ら』








奈緒の声は、震えていた。
オレが二の句を告ぐ前に……電話は、切れてしまった。





ぷー、ぷー、ぷー・・・


高い電子音が、空っぽの心に響く。
手のひらから携帯が滑り落ちて……かたん、と地に落ちた。





「……な、お・・・」


0点。
これが、結末?


「奈緒・・・奈緒……」


がくがくと、足が震えた。
力、入んない。
……もう、立ってられない。


ぺたん、と地に座り込んで、呆然としながら携帯を見つめた。





「さよなら」って何?
オレと奈緒が……もう、ばいばいってこと?


そんなわけ、ないよね?
だって……だって、奈緒とオレは……。





「……シノくん?何、して……。な、泣いてる・・・の?」


ベランダのドアをキイって開けて。
アケミが、オレを覗き込んだ。
そして、ぼろぼろ泣いているオレに驚いたのか、目を丸くした。


「ごめ・・・オレ、用事が……」


ふらふらと立ち上がって、財布からホテル代を取り出す。
そして、アケミに手渡した。


「え、えぇ!?どういう……」

「ごめん・・・行かなきゃ……」


男として、最悪だと思う。
でも、今、奈緒のところに行く以上に、大事なことってないんだ。





……「さよなら」なんて、ウソだよね?
だって、オレと奈緒が離れるなんて……ありえないもん。





ホテルを飛び出して、猛ダッシュで奈緒の家に走る。
途中奈緒の携帯に電話をしてみたけれど、『電波の届かないところに……』っていうアナウンスが鳴るだけだった。








結局。
奈緒の家には、おばちゃんしかいなくて。
さっき電話が来て「友達の家に泊まる」って言われたらしい。


すぐに紳くんに電話したけど、「あずみの家にはいないぞ」って言われた。おかんの家にいるのかな……って思って、昔おかんと付き合っていた男に電話番号を聞いて電話したけど、おかんも友達の家に泊まっているらしい。
……奈緒は、どこにいるの・・・?


その後も、いろんなところに電話した。
でも、奈緒がどこにいるのかはわからなくて……。
心配で死にそうだったけど、あずみちゃんとおかんが傍にいるんだよね・・・?大丈夫、だよね……?





明日……明日、学校で話そう。
大丈夫。ちゃんと……ちゃんと、話をしよう。





その日の夜は、一睡も出来なかった。
「絶対大丈夫」って呟きながら、涙枯れるんじゃないかってくらいに泣いて……。


夜が明けるのを、待った。








test 5 ⇒ Side壱 End
※次のページから、Side奈緒に移ります。






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