Let's 採点 LOVE | ナノ


(03)


変な気分でホテルに入って、「お先に」と言ってシャワーを浴びた。
下着とジーンズだけ身に付けてベッドに腰掛けてテレビを見ながら、オレと入れ替わりにシャワーに入ったアケミを待っていると、出てきたのはバスタオル一枚のアケミ。
……あ、だめだ。


オレ、女の子大好きだったのに。
バスタオル一枚で女の子が出てきたら、腕引っ張ってベッドに縫い付けて、激しく抱いてたのに。


今は、変な虚無感しか感じない。
……やばい・・・よ。


「シノくん?」


オレの隣に腰掛けたアケミ。
何もまとっていないオレの上半身にすっと手を這わせて、首を傾げた。


「……ん、」


早く・・・押し倒さなきゃ。
バスタオルを剥いで、恐らく纏っているであろう下着を手際よく脱がせて、愛撫を始めなきゃ。


アケミの肩に手を置いて、ベッドに向かって押した。
口角を上げてオレの頬に手を置くアケミに、無理やり貼り付けた笑みを見せる。





『……壱』


「……っ!」


押し倒したアケミに口付けようとした瞬間、奈緒の声が聞こえた……ような、気がした。
瞬間、とてつもない罪悪感にかられて、キスを落とす方向を変える。
……首筋に。


「あっ・・・」





奈緒より幾分高いあえぎ声。

奈緒よりほんの少し大きい胸。

奈緒ほど整っていない顔。


『あたしは、ずっといっちゃんだけが大好きだよ』


……だめ。だめだよ。
奈緒のこと考えちゃダメ。


オレだって奈緒のこと「大好き」。
でも、ダメなの。
奈緒は、ダメ。


奈緒のこと、壊したくないんだ。
奈緒を、傷つけたくない。
恋仲になって、失いたくないんだ。


『……あたし、だけを見て?』


違うんだ。
“そういう”意味じゃないよ。


奈緒に言われるまでもない。
奈緒はオレの唯一。


奈緒が誰かに抱かれるなんて、考えただけでムカつく。
抱いたやつ、殺してやりたい。
抱かれた奈緒も……その事実を消すくらいに、めちゃくちゃに犯したい。


ずっと前から抱いていた、奈緒へのおかしな独占欲。
それが、奈緒を抱いてから顕著になった。


奈緒が“トクベツ”になりたいって言わないことに、最初はただムカついた。
オレにとって、奈緒は“トクベツ”なのに……って。恋人では無いけど、それ以上に大切な存在なのに……って。
でもね、今はちょっと違うんだ。
“トクベツ”って言われることが、怖い。


…………ダメ。オレ、何考えてるの?
いま抱いてるのは……奈緒じゃないのに。





「シノくん、調子悪い?」

「…………うん。そうかも」


もやもやしながらも、必死に愛撫をしていると、アケミがとろんとした目でこちらを見た。
調子……あ。
オレ……まったく勃って、ないんだ。


やだな。不能みたいじゃん。


「……ごめん。体調、あんまりよくなくて……」

「そっかあ。シノくんでもそういうこと、あるんだね」


クスリ、と笑ったアケミが、上体を起こす。
そして、オレの息子をやんわりと握った。


「シてあげるね……」


そして、オレの息子をぱくりと咥える。
その瞬間、奈緒の姿が重なって、オレは息を呑んだ。


……ああ、もう!ダメだって、思ってるのに!!





その後、なんとか勃ち上がった息子さんで、アケミを貫いた。
腰を振るたびに頭に浮かぶのは、奈緒の姿で……。
その度に、頭を振って行為に集中した。


……もう、ダメ・・・かも……。








**********


「……はぁ・・・」


ホテル代、もったいないよ・・・。
オレ、いつもは2〜3回ヤるんだ。


でも今日は……1回が限界だった。


「オレ・・・もう、ダメかも」


シャワーを浴びているアケミ。
オレは、とりあえず息子さんだけ洗い流して、ソファに寝転がっていた。
……ダメだった。


とりあえず、穴に突っ込んでるから、気持ちいいっちゃ気持ちいい。
でも……心が、全然気持ちよくなかった。


アケミが悪いわけじゃない。
ただ、オレが奈緒の影を追いすぎてるだけなんだ。
……奈緒以外抱けないなら、ほかの子抱いちゃえーっていう気分でアケミの誘いに乗ったのに……。結局、奈緒以外抱けなくなっちゃってるっていう、事実確認をして終わっちゃった。


「奈緒・・・」


うるっ
視界が歪む。
……最近、泣き虫だなー、オレ。


「なおー・・・」


どうしたらいいのかな?
ねえ、奈緒。
オレ、どうすればいいと思う?





……と。


ブー、ブー、ブー・・・


マナーモードにしていた携帯が、音を立てた。
放っておこうかとも思ったんだけど……長さ的に、電話だ。


オレは、のろのろと携帯に手を伸ばした。
……そして、サブディスプレイに書かれている名前を見て、心臓が止まるかと思った。


【奈緒】


奈緒からの、着信。
……え?マジで?このタイミングですか!?


「で、出なくちゃ・・・」


気まずい。
気まずいんだけど……。


慌てて、携帯片手にベランダに出る。
まさかと思うけど、途中でアケミが出てきたら困るもん。


「は、あ・・・」


一呼吸置いて、通話ボタンを押す。
やばい、オレ。……ちょっと、震えてる。


「もしもし・・・?」

『…………壱?』


奈緒の声。
……やっばい。声だけなのに……。
顔、熱くなる。


「奈緒?どうしたの・・・?」

『んー?……そろそろ、終わったかなって・・・思って』

「……え?終わったって・・・」





『……女の子との、えっち』






――頭、殴られたような気分だった。






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