Let's 採点 LOVE | ナノ


(08)


「奈緒・・・ごめん。意味、分かんないよ」


頭の中、パニックだ。
つまり……どういうことなの?


「だからぁ、あのときのいっちゃんは100点だったのお」

「あの、とき・・・?」


あのときは、100点だった?
それで、今は85点なの・・・?


「な、なんで・・・?奈緒には、ほかに100点の人がいるんじゃないの?」


奈緒の顔を覗き込むようにして言うと、奈緒はちょっとびっくりしたような顔をした。


「……え?いるわけないじゃん」

「いるわけ、ない?」

「うん。だって、点数なんかついてんの、いっちゃんだけだもーん」

「え?なん・・・?」


ごめん、奈緒。
本当に、意味わかんないんだ。
だってオレは……ちょっと前まで50点で……。
奈緒に、キスする資格もなくて……。
でも、奈緒と1度キスをしている。


……ごちゃごちゃだ。





「だからぁ、そもそもあたしが一生着いていく気持ちになるのなんて、いっちゃんだけなのー」


ちょっと苛立ったように言う奈緒。
それを聞いて、オレの心臓はどくんと音を立てた。


「……え?」

「もー!だから、そもそもあたし、いっちゃん以外を100点にする気なんてないんだからぁ」

「な、お?」

「あたしが、一生着いていきたいくらい大切に想ってるのなんて、今も昔もいっちゃんただ1人だよ」

「あ・・・え……?」


言葉が、出てこない。
なに?……奈緒は、なにを言ってるの?


「あたしは、ずっといっちゃんだけが大好きだよ」


整理ができていない頭に、奈緒の言葉が響く。
一旦落ち着いた涙腺が、また緩んだらしい。
ぼろぼろと、涙が落ちてくる。


「また泣くー。……もー」


奈緒の唇が、オレの頬に触れた。
びくり、と震えているうちに、奈緒の唇が、オレの涙を吸い取る。


「ずっと、いっちゃんが大好き。昔から今まで、その気持ちが変わったこと、ないよ」

「オ、レ・・・だって、そうだよ」

「ほんとー?その割りに、女の子といっぱいエッチしてんじゃーん」


言いながら、奈緒がくいって口角を上げた。
でも、眉は下がっていて……すげえ、悲しそうな顔だった。


「だって・・・奈緒は……」





だって奈緒は……女の子、じゃないから。
奈緒は、「奈緒」だから。
「彼女」とか、そんな風に言葉にできるような存在じゃない。
大事なんだ。奈緒が、大事。


オレの、真っ黒の心で壊したくない。
「彼女」なんて、そんなカテゴリにおさまって欲しくない。


……ほかの人に、触って欲しくない。
全部、オレのものになってほしい。





「奈緒は・・・奈緒は……」


言葉が、見つからない。
オレは、泣きながらうわごとみたいに奈緒の名前を呼んで、言葉を探した。


そんなオレを見て、奈緒は・・・笑った。





「昔みたいに、いっちゃんを信じたいんだよお。ただひたすら、いっちゃんだけを見ていた、あの頃みたいになりたいの」

「奈緒・・・」


奈緒の腕が、オレに巻きついた。
肩口に、奈緒の顔。
オレも、条件反射みたいに奈緒の細いからだを抱きしめる。


「ずっと、大好き。いっちゃんだけが、好き。……だから、お願い。100点に戻って?」

「な、……」

「あの頃みたいに、いっちゃんを信じさせて?……あたし、だけを見て?」





そこまで言った瞬間、奈緒のからだが、ぐらりと揺れた。
オレに巻きついていた腕の力は緩んで、右方向に傾く。


「奈緒・・・?」


そして、こてん・・・と、床に横になってしまった。
くーくーという寝息。
……酔って、寝ちゃったんだ……。





眠っている奈緒に、かけぶとんをかけた。
そして、じいっと奈緒の顔を見る。





奈緒のファーストキスの相手は、オレだった?
奈緒が、点数なんてつけてるのはオレだけ?
奈緒が、一生着いてく気持ちになるのは……オレ、だけ?


口元を、手のひらで押さえつける。
……どういう、こと?


昔みたいにって……オレを、信じたいって・・・どういうこと?





ぶるりと、体が震えた。


奈緒・・・奈緒は、どうしたいの?
オレは……奈緒を、どうしたいんだ?





優しくしたい。
甘やかしたい。
ドロドロに、溶かしたい。

めちゃくちゃにしたい。
傷つけたい。
壊したい。

ほかのヤツに、触られたくない。
オレのものになってほしい。





奈緒が、ほしいんだ。
でも、これが“恋愛感情”なわけない。


こんな、ドロドロしているわけない。
だってこんなの……こんな感情を抱いて、奈緒といられるわけない。





オレは、奈緒を抱いてから、一度もほかの女に手を出してない。
……手を、出せない。


奈緒をはじめて抱いたとき、今まで感じたことないくらいに、相手を求めた。
欲しくて欲しくて仕方なくなって……。


奈緒には、もう手を出さないほうがいいかもって思ったりもした。
でも、無理なんだ。
奈緒が目の前にいると、どうしても欲しくなってしまう。





涙が、止まらない。
どうしたらいいのか、分からない。





「奈緒・・・戻って欲しいって、どういうこと、なの……?」


眠っている奈緒に、問いかける。





「奈緒……?」


オレ、どうすればいいの?








test 4 ⇒ End




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