Let's 採点 LOVE | ナノ


(07)


「あはっ、」


奈緒が声を出して笑った。
……なに?


「奈緒・・・?」

「誰って……いっちゃんが、それを聞くの?」


唇を三日月形にして、奈緒が笑う。
……え?どういう、こと?


「き、聞いちゃダメ……?」

「ダメってことはないけど……やっぱり、変だよお」


けたけたと笑う奈緒。
え?え……?


「な、奈緒は・・・100点の人しかキスさせないんでしょ?」

「んー?もっちろん!」

「……100点の人なら、何をされてもいいんでしょ?・・・一生、ついていくんでしょ?」

「そうだよお」


その言葉を聞いて、ぐっと喉が詰まってしまう。
それでも……聞かなきゃ。
オレは、目をぎゅって瞑った後、はあっと息を吐き出した。
そして、一呼吸置いてから、奈緒へ問いかける。


「オ、レは・・・何点?」

「85点、だよ」





泣きそう……。


つか・・・ごめん。
オレの涙腺って、そんなに固くないんだ。
……泣きそうっていうか・・・泣くよ。


「い、っちゃん・・・?」


きょとんとした奈緒が、オレの頬に手を添える。
そして、伝っていた涙を拭うと、心配そうに口を開いた。


「どうしたの・・・?泣いてるの?」

「……っ、泣い、てる・・・よ」


そりゃ、泣くよ。
だって……世界で一番大切な子に、100点の人がいるって分かったんだもん。
オレより・・・大事な人がいるって、分かったんだもん。


奈緒は、処女じゃない。
……ファーストキスも、済ませてる。


じゃあ、オレは奈緒の何を奪えばいいの?





「なんで?」


オレの胸中を知らない奈緒は、きょとんとして言った。


「……オレが、85点だから」


口にした瞬間、涙腺が崩壊したらしい。
自分でも驚くほど、涙がぼろぼろ落ちてきた。
……オレ、一応男なのに・・・。情けなさ、すぎ。


「くっ・・・」


堪えようと思っても、堪えきれない。
奈緒の目の前で、オレはひたすら泣き続けていた。


「泣かないでよ、いっちゃん・・・」


と、奈緒の胸元に、顔が押し付けられた。
……奈緒が、抱きしめてくれてるんだ。


「なお・・・」


それが、嬉しいんだけど、悲しい。
奈緒の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめた。


「泣かないでよお。また、100点に戻ればいいじゃん・・・。あと、ちょっとじゃん……」

「だって、100点になったところで、奈緒には…………『また』?」


え、え?
今、奈緒「また」って言った?「戻ればいい」って言った?
オレ、一回でも100点になったことあったっけ……?


「な、お・・・?」

「ん?」


オレが顔を上げると、奈緒が心配そうにオレを覗き込んでいた。
……どういうこと、ですかね?


「奈緒って……100点の人とキスしたんでしょ?」

「そうだってばー」

「それって・・・誰?」


尋ねると、奈緒はぷーっと口を膨らませた。


「忘れてんのお?」

「・・・忘れ?」

「したじゃん……。小学校のとき」

「…………はい!!??」


驚いて声を荒げると、奈緒はぶすっとしてオレを睨んだ。
え?え??……どういう、こと?


「え?してな、いよね?……どういうこと?」

「だからー、いっちゃんと、キスしたじゃん。この部屋で」

「う、うそ・・・。だって、最初に奈緒とシたときも、奈緒キスはダメって……」

「あんときじゃないってばあ。小学校のとき。……将来の夢の話してて……」





「…………あ!!」





と、唐突に思い出してしまった。
あれ・・・確か、小学校3年生のときだ。
オレと奈緒、一緒に遊んでて……
奈緒の将来の夢を聞いたら、「お嫁さん」って言ってたから……。
「じゃあ、ボクがなおなおをお嫁さんにする」って言って、キス・・・した。





「……した、ね」

「思い出したあ?」


オレを睨むようにしながら、奈緒が言う。
……思い出した。
思い出したよ。でも・・・意味が、分かんない。






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