自室に入ってすぐ、奈緒は例のごとく部屋着に着替えた。 今日のはフード付きロングTシャツに、レギンス。 うー・・・可愛いな。
奈緒の部屋で待っていると、とんとんと階段を上がる音。 ……なんだけど、ちょっと遅い……?
異変を感じたオレは、閉まっていた奈緒の部屋のドアを開けた。 すると……奈緒は、両手に10本くらいの缶を持っていた。
「な、奈緒・・・?」
「おっもい!……ありがと、」
そして、慌てて奈緒に駆け寄って缶を半分引き取ったオレに、にこりと笑いかけると、ちょっとよろめきつつ部屋に入ってきた。 そして、奈緒の部屋に置いてある、ミニ冷蔵庫に、その缶を入れていく。
「奈緒・・・コレ……」
「んー?壱、お酒飲んだことない?」
「や……ある、けど・・・」
学園祭や体育祭の打ち上げなんかで飲むこともあったし……。 それに、ラブホってお酒置いてあんじゃん?私服で行ったとき、たまーに飲んだりする。 ……なんか、気分乗らないとき、とかね。
「んじゃ、飲も」
「え、あ・・・でも、こんなにいいの?」
奈緒んち、なんでこんなにお酒のストックがあるんだろう……? そう思って問いかけると、奈緒はきょとんとした後、にっこり笑った。
「うん。これ、お父さんの会社の試作品なのー」
「試作・・・?あ、」
そうだ。奈緒パパ、確かお酒のメーカーの開発やってんだっけ。 それで、大量に貰ってくるんだった。オレの親父も、よく奈緒パパの会社のお酒もらって、飲んでる。
「まだまだ大量にあるからね。……飲もー」
「い、いいけど・・・どうしたの?」
奈緒の家には数えきれないほど来てるけど、お酒を飲むのははじめてだ。 ……なんで、だろ?
「今日金曜だし・・・あと、ちょっといいことあったから!」
ぷしゅっと1つ目の缶のプルタブを開けて、奈緒が嬉しそうに笑った。 ……可愛いし、いっか。
そう思ったオレも、奈緒に渡された缶を取って、奈緒の缶にぶつけた。
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それから、1時間。 オレは、目の前の光景に絶句していた。
「いーっちゃん?のまにゃいのぉ?」
「な、奈緒さん・・・?」
「にゃーんで奈緒さんかなぁ?なおなおでしょお?」
「な、なおなお・・・」
そう呼ぶと、奈緒は桜色の頬を緩めて、破顔した。 ……マジで?奈緒って、お酒弱かったのー!?
2缶目に差し掛かる頃から、なんかおかしいなーとは思ってた。 急に「いっちゃん」呼びになるし、頬が色づき始めたから。
んで、3缶目に差しかかったくらいから、「ナ行」が「にゃ」になりはじめて、語尾が伸びてきた。 「わー可愛いー」とか思ってた自分を殴りたい。
そして、ハイペースで4缶目に突入する頃には、奈緒は明らかに酔っ払っていた。 ……つか、酔っていたのは3缶目からか。 4缶目から、なんかエロくなってきたんだ。
口の周りについたお酒がおいしいのか、ペロペロ舌は出すし、目が情事中みたいに潤んでいる。 首はなぜかこてんと傾いているし、瞬きはゆっくりだし……。 おまけに、スキンシップが激しい。
もう、オレにどうしろっていうの!?
「いーっちゃん?」
「うぅ・・・なおなおー……」
本当、今日できないなら煽んないで・・・! つかもう……下半身にクるから!!
「ふふっ・・・」
クスクス笑った奈緒は、舌を舐めると、とんでもないことを口にした。
「ねね?ちゅーしよ?」
「え、えええええ!?」
「ちゅう・・・?」
「だ、だめでしょっ?」
迫ってくる奈緒を、慌てて押し返すと、奈緒はぷーっと膨れた。
「なんでえ?いっちゃん、あたしとちゅーしたくないのぉ?」
「し、したいけど!!」
奈緒の唇凝視してると、うっかり吸い込まれそうになる。 だ・・・だめっ!酔ってるときに、約束破っちゃ……
「100点になるまで・・・ダメなんでしょ?」
奈緒の肩を押さえて言うと、奈緒はちょっときょとんとした後、ペロッと舌を出した。
「そおだったねぇ。ごめんね?」
あーあーあーあー!!! もう、オレどうしたらいいんだよっ!!
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