Let's 採点 LOVE | ナノ


(03)


奈緒と一緒に、帰り道を歩く。
最近はお決まりになってきたけど……なんか、ちょっと緊張する。
でも……こうやって帰りも奈緒と一緒にいられるのは嬉しいんだ。
高校に入って、オレが遊ぶようになっちゃってから……一緒に帰ること、ほとんどなかったから。


「……奈緒んちって、今日おばさんたちいるの?」


奈緒のほうをチラッと見て、聞く。
すると、奈緒はクスって笑って、ぶるんと首を振った。


……あ、いない・・・んだ。


「……でも、今日は出来ないよ」

「え・・・?」


と、奈緒がちょっとだけ眉を寄せて言った。
……はい?どういうこと?


「んーとね、今日、アレだから」

「アレ・・・?……あ、」


アレ、と聞いて、一瞬何のことか分からなくなる。
そして、唐突に悟った。


……せーり。


「そ、そっか。んじゃあ、しょうがないよねー」

「そう、だね」


そっか・・・。今日は、シないのか。
……なんか、ちょっとほっとした気分。





オレ、今奈緒への気持ちがよく分かんないから。
このまま、奈緒のこと抱き続けたら……つか、もし100点になっちゃったら……。


オレ、怖いんだ。
100点を採ったときの約束。
「“トクベツ”になりたいってわがまま言って、なんでも愛の言葉を囁く」
……それが、怖い。


だって、奈緒はもう“トクベツ”だもん。
世間一般の“トクベツ”じゃないんだ。
……オレが今まで抱いてきた女の子たちがなりたがった、“トクベツ”……つまり、「彼女」ね。
奈緒は、彼女なんかより、ずっと・・・ずーっと上なんだから。


奈緒が、もし“彼女”になったら……。
オレ、どうするんだろう?
それが、一番自然なのかもしれないけど……。
オレ、奈緒以上に好きになる女の子、いないと思うし。


でも、奈緒への感情を“愛”だって認めたら。
いまオレが抱いてる、くろーい感情を“恋愛感情”って認めたら……。


オレ、恋愛ってよくわかんないんだ。
でも、紳くんとか譲見てると、幸せなことなんだっていうのは分かる。


オレがね、奈緒に抱いてる感情は、きっと恋じゃない。
だって、これが恋だったらオレ……奈緒と、幸せになれないもん。





……うぅ、支離滅裂だぁ・・・。
何考えてるのか、よく分かんなくなってきた……。


とにかく、何を言いたいかって、奈緒がせーりでよかったってこと!
……ま、微妙なんだけどね・・・。





「……ち?・・・壱?」

「あ、・・・ご、ごめん。なに?」


……やべ。オレ、自分の世界に入り込んじゃってたみたい。
思考から現実に戻ってくると、奈緒が不思議そうにオレを覗き込んでいた。
……可愛いなー。


「だから、今日は、寄らない?」

「え?……なんで?奈緒、なんか用事あるの?」


奈緒が用事あるなら仕方ないけど……。
でも、オレはできればもうちょっと一緒にいたいな。
そう思って奈緒を見ると、奈緒はびっくりしたような顔をしていた。


「奈緒?・・・どうしたの?」

「え?……あ、あぁ。今日、できないけど、寄るの?」

「で、できなきゃ・・・寄っちゃダメ?」


不安そうに問いかけると、奈緒はきゅっと唇を噛んで、両手のひらで顔を覆った。


「あー、もう!」


そして、カラッとした声で言葉を発する。
なん、だろう・・・?
でも、両手の隙間から見た奈緒の口元、笑ってたし……別に、ムカツクことがあったとかじゃない・・・よね?


「あの・・・奈緒?」

「……いいに、決まってんじゃん」

「え・・・?」


奈緒が、両手をはずして、嬉しそうに笑った。


「できなくても、一緒にいたいって思ってくれるなら、嬉しい。……上がってって?」


いつの間にか、家の前に着いていて……。
笑顔の奈緒が、オレの手を引いた。


「……っ、!!」


たった、それだけなのに……。
手が、熱い・・・。





どうしよう・・・。オレもう、末期かもしれない……。






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