オレは、2人に縋るような視線をぶつけた。 答えを知ってるなら……教えてほしい。……そういう、気持ちで。
「あずみも、俺もバカだったが……お前も、とんでもなくバカだな」
「え!?紳くんとあずみちゃんの馴れ初め聞きたい!」
「壱・・・今、壱の話してる、だろ?」
「……はい」
譲がオレをたしなめる。 ……うぅ・・・。
「……ま、これはお前が自分で気づくことだな」
肩をすくめた紳くん。 えー!?答え、教えてくれないの!?
「オレも・・・そう、思うな」
こくんと譲が頷く。 マジで!?譲まで意地悪すんのー!?
「な、なんでえ!?」
「なんでって……人に言われたところで、納得できる感情じゃないからだろう」
見下ろすようにオレを見て、紳くんが口角を上げる。 ……う、わっ。かあっこいー・・・。
「……さて、」
ガラッ
紳くんが、椅子を引いた。 そして、バッグを持って立ち上がる。
「オレはあずみのところに行くが……壱は、どうする?」
「え?……あー、行く」
オレも、バッグを手にとって立ち上がった。
……奈緒に、会いたいんだけどさあ。 いまのオレ、たぶん感情ドロドロなんですよ。 だから……あんまり、会いたくない・・・かも。何するか分かんないって言うか……。 現に、この間変な感情に支配されて、無理やり学校でヤっちゃったし……。
「譲はー?」
いまだに椅子に腰掛ける譲に声をかけると、譲は軽く首を振って、ちょっとだけ口角を上げた。
「……まだ、美姫さんから連絡来ないんだ。帰って、いいよ」
ばいばい、と譲が手を振った。
「あぁ。じゃあ、また来週な」
「じゃあねん!」
今日は、金曜日。 土日をはさむから、次に会うのは来週なんだ。
オレと紳くんは、譲に手を振って教室を出た。
**********
「うーわ、また来た」
「だからなんでそういう言い方すんだよ!おかん!!」
「おかんじゃないっつーのっ!!」
奈緒を迎えに3−Dの教室に入った瞬間、おかんが噛み付いてくる。 うー……。毎日毎日、おかんはひどいっ!
「それにねえ、あたし『おかん』なんて呼ばれてないから!」
「はぁ!?おかんの異名はおかんだろ!?」
何を隠そう、おかん……笹川千夏も、五大美女の1人。 確か異名は『おかん』だ。
「……まあ、南高では・・・『おかん』だけど、」
「千夏は、他校では『お姉様』だよ」
と、会話に入ってきた奈緒が、呆れたように口を開いた。
……え? 笹川がお姉様?
「学校内では、このちょっとおせっかいな性格が、」
「なーおー?」
「……姉御肌な性格が浸透してるし、あずみとセットでいることが多いからねー。いつの間にか『おかん』呼ばわりされてたけど、他校の人には当初の呼び名で呼ばれてるみたいよ」
へ、へぇ……。 そうか。あずみちゃんと一緒にいて、世話焼きまくってたから『おかん』になっちゃったのね。 奈緒の説明に妙に納得して、腰掛けて紳くんに頭を撫でられているあずみちゃんを見る。 ……たぶん、よく分かってないんだろう。きょとんとオレを見上げてきた。
……つーか、紳くん。会話に参加しようよ。 なに1人であずみちゃん可愛がってんだよ……。
「……ということで、『お姉様』って呼びな」
「やーだよっ。おっかーん」
「……奈緒・・・アンタの幼馴染、殴ってもいい?」
「んー?もともとバカなのに、さらに頭悪くなると困るから……頭はやめてあげて?」
「なおなおひどいっ!!」
何その言い草!?
目を剥いて奈緒を見ると、奈緒がクスって笑った。
「……壱、帰るの?」
「え、あ・・・うん」
「ん。じゃあ、帰ろっか」
奈緒が、バッグを手にとって、立ち上がった。 クラス中から落胆の声が聞こえてくる。 ……オレ、このクラスのやつに、なんでか嫌われてんだよなぁ……。
「じゃ、バイバイ!」
奈緒が、おかんやあずみちゃんに向かって手を振る。 それから、紳くんに向かって向き直った。
「あ、あと……。明日、あずみと遊ぶ約束してるから、金曜日だからって足腰立たなくなるまでシないでね?」
「ななななな奈緒ちゃん!!!???」
顔を真っ赤にしたあずみちゃんがガタンと立ち上がって、奈緒の口を塞ぐ。 すると、紳くんがふん、と笑って、口角を上げた。
「考えておこう」
「……あずみ、がんばってね?」
「ちょ、な・・・えー!?」
……やっぱり紳くんはドSだ!!!
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