愛☆猫 | ナノ


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Side Ayumi



―――……。


入寮2日目は、始業式。
颯斗と翔太、冴島くん、そしてわたしは、連れ立って歩いていた。
わたしの右側には翔太。翔太の隣に冴島くん、わたしの左隣には颯斗。
わたしと翔太は、手をつないでいる。


……わたし、手つなぐの好きだな。
なんか、ほっとする……。


「昨日、課題終わったの?」


隣の翔太に声をかけると、翔太はふにゃって笑った。


「終わったよお。雅、すげえ厳しいもん!」


「ねっ」て冴島くんを見て言う翔太。
冴島くんは軽く笑って、前方に視線を戻した。


「歩と颯斗はあ?昨日、何してたのお?」

「あー…保健室、行ってた」

「保健室?なんでー?」

「ぼ、ぼくが、お皿割っちゃって……」


そう言うと、翔太と冴島くんは、心配そうにわたしを覗き込んできた。


「え・・・?大丈夫?」

「怪我、したの?」


冴島くんの問いかけに、ふるりと首を振る。


「んー。ちょっと切っちゃったんだけど、大丈夫だよ」


そう言うと、2人はほっとしたように息をついた。





ガヤガヤと賑やかな廊下。
……なんか、見られてる?


「飯田くん、かっこいいねー」
「寺岡ちゃんも・・・可愛いー」
「……え?あの子誰?」
「うわ・・・すげえ美人!」


聞こえてくるのは、こんな声。
すごーい!颯斗も翔太も冴島くんも、すごい人気なんだ!





「……すごいねぇ、歩」

「ああ……想像以上に目を引くな……」

「ま、ちょっと特出した容姿だからね。颯斗や翔太といるから、余計目立つし……」





3人がひそひそ会話をしていたことには気がつかず、体育館に向かって足を進めた。





体育館に入ると、一瞬空気が止まった。
それから、此方を見ながらの、ガヤガヤとしたささやき声。
……え?なにこれ?


「……こういうの見ると、やっぱり変装したほうがいいって思っちゃうんだよな」


はあっと、隣で颯斗がため息をついた。


「……すごいね。三宅くん、大丈夫?」


と、冴島くんが心配そうにわたしを覗き込んだ。
……やっぱり、いい人!


「うん!大丈夫!人いっぱいだね!」

「……うん。分かってないなら、そのほうがいいかな」


クスって、冴島くんが笑う。
……わあ。綺麗!


昨日から思ってたけど、冴島くんってすごく綺麗な顔だと思う。
メガネしてるから、一見分かりにくいけどね。


「んじゃあ、2−Dのほうに・・・」


颯斗が声を出した瞬間、わたしは後ろから誰かに抱きしめられた。
……気配、感じなかった。


ってことは、やっぱり・・・


「あーゆー」

「跳・・・」


首元に回された腕を、きゅっと掴む。
後ろを向くと、真っ赤な髪の跳が、へらりと笑った。


「うんうん。あゆはやっぱりかぁあわいーねー」

「…………あんま可愛いとか言わない」


可愛いって言われるのは、もう慣れちゃった。
だって、物心ついたころから、毎日のように言われてるんだよ?
どんなに否定しても、跳から見たらわたしはそう見えるみたいだし……。跳は家族みたいなものだし、なんかお兄ちゃんみたいなところあるからね。

でも、バレちゃうでしょ?
そう思って、跳のことを睨みつけて言うと、跳はへらへら笑っていた。


「そして少年!・・・君ぃ、あゆの手握ってる?」

「え?え?・・・あ、うん」


わたしの言葉を軽くスルーした跳は、わたしと翔太の手を指差して言った。


「跳ともよく繋いでるじゃん」

「オレは特別なのよぉ。……そんなことより、颯斗くん」


ちょいちょいって、跳が颯斗くんに顔を向けた。


「な、なんだよ・・・?」

「予想以上にあゆが見られまくってんだけどぉ?」

「……そう、だな」

「んもう。ちゃんとしてよ。……あ、そうそう。ユウさんに聞いたかもしれないけど……」


と、跳が颯斗の耳に口を近づけて、なにやらごしょごしょと話し始める。
……なんだろう?


ぼーっとしていると、翔太がわたしの服の袖を、くいと引っ張った。


「……誰?」

「あー・・・ぼくの幼馴染の、犬飼 跳。えっと・・・なんか偶然、ここに来たらしくて……」

「あ。2人目の編入試験満点のやつ・・・?」


と、冴島くんが声をあげた。
……へー。跳、あのテスト満点だったんだ。





「……どういうことだ?」


と、会話が終わったのか、颯斗から顔を離した跳。
颯斗は、訝しげに跳を見ていた。


「だから、そのままだよう。……ま、これは実際に見れば分かると思うよ」

「……それ、本当だったら見ちゃまずいんじゃ……」

「だから、ならないように注意してよ」


パチンとウインクした跳。
……と、周囲が雄たけびを上げた。


……すごい。ここの男の人、みんな声変わりしてないのかな?
声、すごい高い!


「んじゃああゆ?オレ、クラス行かなきゃ」

「あ、うん!跳、クラスどこなの?」

「2−Bらしいよお」

「そっかあ……」


わたしは、2−D。
クラス、違うんだね。


「じゃねえ、あゆ!」

「うん、バイバイ!」


手を振ると、跳はへらっと笑って、人の渦の中に入っていった。
……うーん。あの髪、すごい目立つな。


「……あ、そういえば颯斗。跳、なんて言ってたの?」

「……え?あー・・・なんでもない」


にこりと口角を上げた颯斗。
……気になるけど、いっか。


「2−Dの教室いっくよぉー」


翔太がわたしの手を引いて、言う。
わたしたちは連れ立って、自分たちのクラスの列を探した。






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