愛☆猫 | ナノ


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Side Haneru



やーやー、よい子のみんなー?
実は最初の『新しい星の誕生』から名前だけ出ていた、犬飼 跳だよー。
赤い髪と、グレイの目!……ま、もちろん人工だけどねぇ。
あゆが栗色の髪と青い目でしょお?逆にしてみようと思ってさあ。


「お兄ちゃん、なんでここに……?」

「あ、あゆみぃーっ!会いたかったっ!!」


呆然とするあゆにぎゅっと抱きつくバカ兄貴、ユウさん。
マジムカツクよねぇ。兄貴だからって、スキンシップも許されるしさ。


「え・・・は、跳?なんで……」


ユウさんに抱きつかれながらも、オレに目をやるあゆ。
ユウさんに抱きつかれて苦しいのか、目がちょっと潤んじゃってる。
うわぁあ。かーわいいー!!
でもでも、お兄さんのせいでその目になってるのはいただけないかなー?


「んー?シズカさんに頼まれたんだよー」


本当は、会議で何が起こったかを聞いた瞬間全力で親を説得して、シズカさんに『オレがあゆを守る』って言いくるめたんだけどねぇ。
シズカさん、あゆのことめちゃくちゃ心配してたから、ちょっと揺さぶったら「お願いします」って言ってくれた。あゆの傍にいられるし、シズカさんからの株は上がるし、一石二鳥ってやつ!
まあ、ユウさんまで潜り込んでたって言うのは、知らなかったんだけどねえ。


んで、偶然ユウさんめっけて、後つけて話し合いしてたってわけ。
……やっぱりユウさんも、オレと同じこと考えてたみたいだし。


……ん?何を考えてたのかって?
もっちろん、あゆのことだよぉ。


……えぇっとね、やっぱりあゆがここに来たのは、おかしいと思うんだよねぇ。
シズカさんもチラッと言っていたけど、あゆがここに来るくらいなら、オレが潜入したほうが100倍いいんだから。オレ、今とくに重要な任務についていたわけじゃないし、行こうと思えば行けたんだよぉ?


まず、初任務としては難易度が高すぎるし、期間も長すぎる。それに、あの慎重な【獅子】が、そんな変なミスを犯すのだろうか?


なんだか、人為的なものを感じるんだよねぇ。


まあ、オレがここに来ていることは、【獅子】は知らないと思う。
元々オレ、デスクワーク派だからさ。
訓練はしてるから、体術もある程度できるけど、基本は情報収集とか、操作がメイン。
だから、新しく振られた仕事はここでこなしても、なんの問題もないってこと。


「っつーことでぇ、あゆ?これからも……」

「歩!怪我してるじゃないか!大丈夫か!?よし、兄ちゃんが見てやるから、足出して!」


……人がさあ、せっかく珍しく本気で、モノローグ使って語ってみたってゆーのにぃ。
なにしてんのさ、バカユウさん。


……って!


「あゆ!?あゆーっ!怪我してんじゃん!なんで!?血、血が出てるよお?……足?ガラスで切ったの!?いやーっ!……舐めていい?」

「良いわけねえだろど変態っ!!」


慌ててあゆの足元に駆け寄ったのに、どんっとユウさんに突き飛ばされてしまった。
……ひどいよお。


「…………」


ふと視線を感じて、ドアのほうを振り向く。
すると、爽やか系イケメンボーイが呆気にとられたように保健室の様子を見ていた。
ありゃ?そういや、最初からいたっけ?


「君、だれぇ?」


爽やかボーイに声をかけると、歩が慌てたように反応した。


「あっ!ごめん、颯斗!あまりのことに、呆気にとられちゃって……。あのね、この白衣着てるのが、お兄ちゃんの三毛優哉。で、この赤いのが、長なじみの犬飼 跳だよ。えぇっと、お兄ちゃん、跳、同室の、飯田颯斗くんです」


歩が紹介すると、爽やかボーイは、呆けながらも、ぺこりと頭を下げた。


ねえねえ歩?赤いのはないよね?


……うわぁ。つか、やだやだ。
こんな爽やか系イケメンボーイで「ボクと一緒に、サッカーしに行こう!」みたいな人と歩に、一緒にいてほしくないよぉ。
オレのがかっこいいけどね。かっこいいけどさぁ。
でも、爽やか少年って、なんでかモテるじゃない?


「あのね、実は颯斗には、メールアドレスから女だってばれちゃって……」


……まあ、あの反応から、ばれちゃってるのは分かってたけど。
しかも、さっき呆然としつつもあゆに抱きつくユウさんのこと睨んでたから、あゆにちょっと入れ込んじゃってるのも分かった。


気にいらなーい。


「あ、よろし・・・」

「うんうん、よろしくねえ?」


颯斗くんのあいさつの言葉を遮って、にこりと笑いかけてみる。
……ま、ちょっとした嫌がらせだね。


「……よろしく」

「2回も言わなくていいよ?」


オレの『よろしく』にあわせて、再度笑いかけてきた颯斗くんにそう返す。
……うんうん。完全なる嫌がらせだよ。


「跳、怒るよ……?」


と、横からあゆが口を開いた。
……あゆに怒られるのは嫌だな。


「……ごめんねえ?よろしくね?」

「……いや。2回も言わなくていいけど」


気を取り直して笑いかけたら、今度は颯斗くんがしれっと言ってのけた。


「……いい度胸してんね?」

「あんたもな」


だめだ。
オレ、こいつと仲良くなれない。
爽やか少年は、ちょっと意地悪でした。


「……おし。できた」

「・・・ん。お兄ちゃん、ありがとう!」


そうこうしているうちに、治療が終わったらしい。
あゆとユウさんが、ほのぼのしながらニコニコ笑っていた。


「……で、歩」

「ふあいっ!」


と、ユウさんが急に背筋を伸ばす。
恐らく仕事モードに入ったユウさんに、あゆもしゃきんと座った。


「今日のできごとの報告」

「……はい」


“報告”という言葉を聞いた瞬間、あゆがしゅんとしてしまった。
……え?何かあったわけ?


「……あの、あのね?生徒会の人と……あの……」

「「接触したの(か)!?」」


生徒会というフレーズに、オレとユウさんはいち早く反応する。


あのね、オレとユウさん、あゆの韮崎学園潜入が決まった瞬間、ありとあらゆる資料を集めて、いろんなことを調べまくったんだ。


あのね、こういうパターンで男子校に紛れ込んだ女の子はね、
みんな“総愛され”になるんだようっ!


そういうのを、王道っていうんだよ!!


迎えに来た副会長のうさんくさい笑みを指摘して、その心に入り込み、
双子を見分けて懐かれて、
傍若無人な会長に反抗して食堂でちゅーされるっ!!


大体、これを1日にしてこなすのが王道なんだよ!!


たぶんオレとユウさんは同じことを考えて、鼻息荒くあゆを問いただした。






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