Side Shota
はいはーい。 ええっと、翔太だよっ! そこそこ! なんでこの小説に出てくる主人公のお隣の部屋の男って、こういうキャラなのーとか言わなーい。 書きやすいんだってさ。 でも、主役にするには弱いんだってさ。 だからお隣さんなんだってさ。 ……ひどくない?
んでんで、歩がね、来たんですよ。 颯斗のお部屋に。
ちょっと前に颯斗から編入生が来るって話は聞いてたのね。 颯斗って、見た目の割りにビビりだかんね。 「オレの部屋来て?」って、一見誤解されそうな誘われ方をしたわけですよ。
ウチの編入試験ってかなり難しいらしくて(おれは知らねえもん。雅が言ってた)、それを満点通過するなんて、たぶん真面目くんなんだろなあって思ってたの。 幼馴染の雅は別として、真面目くんってあんまり仲良くなれないことが多いから、会うのが少し憂鬱だったんだけどね。 会ってみて、良かったと思うよ。
だって、歩めちゃくちゃ可愛いんだもん。
この学校、ゲイとかバイが多いんだ。 分かる?男でも女でも大丈夫って人のこと。
だから、女顔のヤツって必然的に狙われやすいんだ。 おれの周りだと、雅が結構そんな感じ。 だから、コンタクトじゃなくてメガネにしてるんだけどね。
歩は女顔ってわけでは無い。背は低いけど。 中世的っつうか……やけに整っていて、そういう次元じゃない感じ? でも、雰囲気が、絶対ネコ。 ……ネコって、要するに受ける側。 簡単に言うと、突っ込まれt(ry。
……こほん。
顔はキレイ系。 でも、笑った顔とか、しぐさとかが一々可愛い。 ぶりっこではないんだよお? 素でやってる感じ。
そんなわけで、大丈夫かなあって、不安なわけですよ。
あ、ちなみにおれは……ノーマル、かな? わかんない。 さっきまでは絶対ノーマルだと思ってた。 女の子がいるなら、女の子のほうがもちろんいいもん。 でもさあ、正直歩だったら……とか、邪なこと考えちゃう。
「翔太?」
右手が引っ張られて、ふと顔を横に向けると、きょとんとした歩の顔。 やっべ。 ちょっと、飛んじゃってたみたい。
おれと颯斗、雅は、部屋の外に出ていた。 歩が来た記念の日だし、一緒に食堂でごはん食べようって思って。
でね、おれ歩と手つないでんの。 冗談半分で握ったら、握り返してくれたから、そのまま。 颯斗がイライラとおれを睨んでいた(颯斗、ノーマルなのにね? まあ、気持ちは分かるけどさ)けど、悔しかったら颯斗もつなげばいいんだもんねーっ。
「なあに?歩?」
へらっと笑いかけると、歩が大きな目をちょっと細めた。
「食堂って、みんな来るの?」
「うん。自炊するヤツもいるけどね。大体、みんな食堂で食うんじゃないかなあ?」
「へえ。……先生も?」
「先生は、教職員席があるから、一緒のところでは食べないけど、同じ食堂に入るよお。生徒会もそんな感じかなあ?」
そう言うと、歩はさらに目を細めた。
「……そうなんだ」
なんだろ。 生徒会って顔がいいって評判だからなあ。 歩も、生徒会の人と会いたいのかな?
だったら、なんかやだなあ……。 おれはさ、学園の多数の生徒みたいに、生徒会信者じゃないから。 歩がキャーキャー言ってるようなヤツらと同じだったら、ちょっと切ないじゃんか。
そんなことを思って歩を見ていると、歩は「ん?」っと首をかしげた。
「翔太、どしたの?」
「え?……なんでもないよお」
へらって笑って見せたけど、歩は探るようにおれを見ていた。
「んーとさあ、」
歩が生徒会信者だったらイヤだなあと思いながら、口を開く。
「歩は、生徒会とおれ、どっちが好きぃ?」
「へっ?」
何を質問されているのか分からないのであろう。 歩が、ぽかんと口を開いた。
「え、お前何言ってんの?」
「……相変わらず、支離滅裂だな」
そばにいた颯斗と雅も呆気に取られてる。 んー。そんなに変だったかなあ?
「ぼ、ぼく、生徒会には会ったことないし……」
「だって、会ったことなくても好きって人、いっぱいいるよお?」
ちょっと膨れてそう言うと、歩は困ったように苦笑いをした。
「……会ったこともない人より、翔太のほうが好きに決まってるよ」
まだ翔太と会って20分くらいしか経ってないけど……って続ける歩。
でもでも、コレで確定したことがあるもんねっ。 歩は、顔とか財力とかで人を判断するようなバカなやつとは違うってことっ!
「うへっ☆」
「え?何!?」
思わず笑うと、歩が驚いたようにおれを見た。
「いい友達になれそおだなあって!」
「ほんと?」
そういった瞬間、歩が目を輝かせた。
「ありがとう! よろしくねっ」
……友だちで、いられるかなあ…。
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